第83話「恒星の名前」
話が進んでない!
封印していた武装を解き放ち、一触即発の状態となっている十人委員会の交易ステーション群。
それぞれの対空レーダーは、既に出撃済みの戦闘艇やV-TECH、そして大慌てで宙域から逃げ出そうとしている民間船を捕捉し、その位置をレーダー画面上に輝点として表示していた。
――その中で、不審な動きをしている輝点がひとつ。
恐らくヤウーシュが乗っているだろうその船は、逃げ惑う民間船の流れに逆らいながら、何故か宙域中央へ突撃してくる。
直後、レーダー上でその輝点は二つに分裂した。
『『『ファ!?』』』
それが意味するところはひとつ。
その船が何か、"飛翔体"を発射したから。
ぐんぐんと加速しながら自分達へ迫って来る輝点を見ながら、ゼロバッド以下、十人委員会のメンバー達は考える。
さて、発射された飛翔体の正体は何であろうか?
『通常弾頭……の訳があらへん!』
『それなら数百発、いや数千発を同時発射する筈でおーじゃ!』
『――推論。弾頭正体、看破……!』
『一発じが撃だながっだ……! ごれが示ず事実はびどづ!!』
『つまり一発撃てば十分な……先制使用された大量破壊兵器であんとすな!?』
――この一発は通常弾頭に非ず。
というメンバー達の推測はある意味、半分当たっていて半分外れていた。
確かにその一発は通常の弾頭では無かった。特殊な仕掛けがしてある、特別な一発だった。
もし仮に。
有り得ない仮定ではあるが、そんな判断をした十人委員会メンバー達の傍らに、ヤウーシュ事情に詳しい某一般通過ヤウーシュでも居たならば、こんな解説をしていたかも知れない。
――あれは『押取屋』の船だよ!
――宇宙港で仕事にあぶれたから、パイロットの営業に来たんじゃないかな?
――給料が欲しい彼らは法律を守るから、先制攻撃はして来ないよ! だからあの一発の正体は――
しかし残念ながら、そんな便利な解説型ヤウーシュは居なかった。
だから十人委員会の面々は、この一発が先制攻撃であると断じる他無かった。
大量破壊兵器を先制使用されたら、どうすればいいか皆は分かるかな?
そうだね。即時報復だね。
コップの縁。
表面張力ギリギリで堪えていた水は、遂に溢れ出す――
『オーダー67実行ォォォォォ!!』
『デンボー砲発射おじゃぁぁぁ!!』
『――発射! 空間縮退砲、発射!』
『レールキャノン撃じぃ方始ベェ!』
『例のアレ発進であんとすゥーー!』
――皮肉にも。
十人委員会が一斉に攻撃命令を下すのと、飛翔していた『特別な一発』が起動して、その仕掛けを作動させるのは同時だった。
飛翔体は弾け飛ぶと、中から花火めいて光を撒き散らす。
宇宙空間でそれは、超巨大な――
――ヤウーシュの顔面を描き出した。
勿論モデルは広告主のそれで、映像を見ているだろう未来の顧客に向け『♡ッ!』とウィンク。
これぞデヴァーン氏族最強の戦士コレダァケー謹製、広告目的の信号弾である。
さぁ、宣伝はここからが本番だ。
素早く顔面下部に、ヤウーシュ語とガショメズ語で『今なら長期十年契約がお得』と出力しなくてはならない。
――と、仕組まれた機能が全力で稼働している最中だった。
宙域を埋め尽くさんばかりに、大量の通信が飛び交い始める。
『ネコ・ネコ・ネコ! 繰り返す! 暗号符牒ネコ・ネコ・ネコ、送れ!!』
『セイフティー解除、照準器起動、電影クロスゲージ彩度四十! エネルギー充填百二十%! 総員対衝撃、対閃光防御! 最終セイフティー解除、デンボー砲発射ァ!!』
『エネルギータービン開放、出力八十%! 照準誤差補正、九十五、九十八……緊急弁全閉鎖、リミッター解除! 出力百、百十……百十五、レールキャノン最大出力! 戦友、巻き込まれるなよ……!』
『ランディングギア、空間座標固定。砲身展開、チャンバー内正常に加圧中。ベクターリング、回転開始……チャージ完了。撃てます』
『目標確認……排除開始。排除、排除、排除……排除排除排除!!』
宙域が、なんかドンパチ賑やかになってないか?
そして空間を埋め尽くさんばかりに、極太ビームや大量のレーザー、ミサイル、V-TECH等、各種戦闘兵器などハチャメチャが押し寄せて来る……泣いてる場合じゃない!
広告宣伝を百倍にして、戦場の主役になろう! 夢中になれる雇用が、いつか賠償をすげぇ額にするんだ!
『今なら長期十年契約がおジュ……』
レーザーに焼かれて信号弾は消滅した。
Q : 一体、この宙域で何が始まるんです?
A : 大惨事(になる十人委員会同士の)対戦だ!
――通信が飛び交う。
≪エリアVERSで大規模な戦闘!≫
≪援軍か? どこの隊だ!≫
≪大変だ、ルン・ジャイ! 敵は全部三本線だ!》
≪あぁ! ルン・ジャイがやられた!≫
≪メガス11、脱出!≫
≪落ち着けジーン! ガイア、マッシュ、奴にサイクロンジェットストリームサイクロンアタックを仕掛けるぞ!≫
≪こちらV-TECH七番機。なんか右足の調子が良くない……俺のじゃない、V-TECHの脚だ!!≫
≪ルガム隊、撤退は許可出来ない。全機撃墜して制宙権を確保せよ≫
≪だろうな。報酬は上乗せだ……商会の犬め、撃てよ臆病者!!≫
――弾幕が飛び交う。
≪こちらピクシー07! 戦闘勃発、繰り返す戦闘勃発! 現状の装備では対応出来ない、撤退の許可を!!≫
≪こちらコントロール。ピクシー07へ、遺憾ながら許可は許可出来ない。友軍到着までカウント600、健闘を祈る≫
≪メガス11、脱出!≫
≪ッ! こちらピクシー07了解……通信終了。……おのれ謀ったな~~存在エックスゥゥゥゥ!!≫
≪こちらV-TECH七番機……何か黄色いランプが回ってる……何だこれェ≫
≪そんなに僕たちの力が見たいのか……攻撃してきたお前らが悪いんだぞ! やってやる……押下っとな≫
≪よぉ第一世代。ステーションを全て堕とす……付き合わないか?≫
≪ステーションを襲撃するとは……相変わらずだな。何度でも時間を教えてやろう≫
≪突入しろ役立たず共! Z5、今回の遠足はどうだ!?≫
≪口うるせぇリーダーが気に入らねぇ……首輪付きの世話もウンザリだ!≫
≪無駄口を叩くな! 外されたいか!?≫
≪今からでもそうして欲しいね……!≫
≪メガス11、脱出!≫
≪こちらV-TECH七番機……赤いランプが回ってる! ヤバイぞォ!!≫
≪第三艦橋大破! 第4ブロックもダメです! メインシャフトに被害が及んでいます、抑えられません!≫
――宙域を巻き込んで起きてしまった、大規模な戦闘。
それは百光年先にある恒星の名前を取り、後に銀河の歴史で『ヴォエラサ内戦(The Voerasa Cascade War)』として記録される戦いの始まりであった。
【ヴォエラサ内戦】
出典:フリー百科事典『ギャラクトペディア(Galactopedia)』
ヴォエラサ内戦 (ヴォエラサないせん)は、ガショメズのハイパーレーン上にある『ヴォエラサ宙域(Voerasa Sector)』で起きた、十人委員会内部での席次争いに端を発する軍事衝突。同宙域には主だった十人委員会メンバーが交易ステーションを保有しており、内部に大量の戦闘兵器を隠し持っていた為、それらが使用された事で大規模な戦闘状態へと発展した。開戦理由については参戦した十人委員会全員が『先制攻撃に対する報復』との証言をしており、戦後の混乱による資料の散逸も相まって実態調査が著しく困難となっている。
多くの目撃証言があった事から、長らく『"イマナラミツ氏族の戦士モリムリョウ"を名乗る宇宙船が大量破壊兵器を先制使用した事で戦いが始まった』という言説が支配的だったが、ヤウーシュ側に『イマナラミツなる氏族と、モリムリョウなる戦士はヤウーシュ内に存在しない』と公式に否定されている。
興味深い点として、内戦勃発時に『銀河の守護者』マスター“カラーテ”サトゥー氏が同宙域に滞在していた事が判明しており、何らかの関与を疑う言説が後を絶たないが、それらを証明する一次資料は存在せず、都市伝説の域を出ない事はここに注記しておく。
(後略)
(ドンパチには参加し)ないです
次でたぶん章終わり
本業忙しくて爆発しそう!
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