第81話「お祭りかな」
あー、ねんし(挨拶)
明けまして2026年、今年もよろしくお願い申し上げます
『ああああああステーション』の宇宙港。
駐機場で突如として始まった戦闘は、ジュズイ興行優位に進んでいた。
「行けーー! 押しまくれーーー!」
「「「応ッ!!」」」
宇宙船からの支援砲撃と、何より局地的な数的有利がある。
対し宇宙港警備隊は――
「もうダメやーーー!」
「どうして援軍が来ないんや!?」
「し、指令室と連絡取れへんでェェェ!!」
――士気がダダ下がりになっていた。
初撃で大きく数を減らされ、何故か味方は来ず、指揮系統も混乱中。ジュズイ興行に押し込まれ続けている。
しかしそこで――
≪さぁ新装開店や!≫
≪新鮮なグ ㇷ゚ジヮ入ってるよ!≫
≪その弁当Aくれ!≫
≪俺は弁当B! あとレジャーシートも!≫
――弁当屋の出現と共に、戦場へ『当てられ屋』がエントリー!
更に――
≪暴力、暴力は要らんかね~!≫
≪我らギョカイン氏族、案件募集中ーー!!≫
――押しかけ傭兵まで登場!
「よ、よっしゃ!」
「これなら……何とかなるかも知れん!!」
途端に宇宙港警備隊の士気が回復し始める。
非常に苦しい状況ではあるが、上手くあのヤウーシュ達を使えば形勢逆転も夢では無いだろう。
まず『当てられ屋』は遮蔽物として利用出来る。
一発でも誤射した瞬間に、群れの全てが襲って来る蜂みたいな連中なので、その陰に隠れてしまえば相手の射撃を封じ込める事が可能。
事実として――
「クソァ!」
「卑怯やぞ! 出て来い!!」
――上手く射線を誘導してやれば、ジュズイ興行からの射撃が大幅に減少していた。
そうして時間稼ぎに成功すれば、その間に押しかけ傭兵達を雇って戦力差を埋めてしまえば良い。警備隊は早速、最寄りの『押取屋』へと声を掛けた。
「おいそこのヤウーシュ!!」
≪はい毎度お世話になっておりますデヴァーン氏族のコレダァケーでございます! 傭兵業のご指名という事で――≫
「そうや加勢頼むわ!!」
≪ご指名ありがとうございます! ご利用料金の方ですが、今なら長期十年契約がお得となっておりまして――≫
「何でもいいから早してくれや!!」
――と、戦力強化に勤しんでいた時だった。
「……あッ!!」
警備隊のひとりが突然、悲鳴を上げた。
直後、戦場から音が消える。
「……」
「……」
「……」
沈黙が支配する駐機場で、その場にいる全員の視線が、何故かひとりの『当てられ屋』ヤウーシュに集まっていた。正確には、そのヤウーシュの右手。
右手に握られている、お弁当のグ ㇷ゚ジヮの――
「ズ、ズモォ……」
――尻尾が焦げていた。
誤射だった。
撃ったのは、悲鳴を上げた警備隊員。
その隊員の発射したビームが、『当てられ屋』ヤウーシュのお弁当、その尻尾に命中してしまっていた。
別にグ ㇷ゚ジヮは死んでいない。
ただちょっと、尻尾の先が焦げただけ。
ヤウーシュ料理としては、何ら損なわれていない。
だから問題は無い。ヨシ!
≪オレの弁当に何してんだコラァァァ!!!≫
――とは成らなかった。
『当てられ屋』ヤウーシュは立ち上がると、右手のグ ㇷ゚ジヮを床に叩き付けながら激昂する。
グ ㇷ゚ジヮは死んだ。
それを隣で見ていた別の『当てられ屋』ヤウーシュも立ち上がると、自分のお弁当を床に叩き付けながら叫んだ。
≪友達の弁当に何してんだコラァァァ!!≫
それを隣で見ていた、更に別の『当てられ屋』ヤウーシュも立ち上がると叫ぶ。
≪友達の友達の弁当に何してんだコラァァァ!!≫
そして――
≪友達の友達の友達の弁当に何してんだコラァァァ!!≫
≪友達の友達の友達の友達の弁当に何してんだコラァァァ!!≫
≪友達の友達の友達の友達の友達の弁当に何してんだコラァァァ!!≫
――最終的に、全ての『当てられ屋』ヤウーシュが立ち上がっていた。
その様を見ていた宇宙港警備隊は叫びました。
「「「キャアアア全部連鎖したァァァーー!!」」」
◇
「あ、崩れた」
≪あらら……≫
駐機場に停泊しているサトゥーの宇宙船。
問題なくバリアが稼働している安全な操縦席から、サトゥーはサメちゃんは高みの見物を続けていた。
『ヒャッハー正当防衛ェ!!』
『急迫不正の侵害に対する止むを得ない自己防ウェェェーーイ!!』
『うあああああ来るなァァァァ!!』
『た、退却ーー! 総員退却ゥゥーー!』
『ああああ契約がァァァ!!』
そして眼前、キャノピーの先ではどうやら情勢が動いたらしい。
宇宙港警備隊が『当てられ屋』陣営にたった一発、されど一発の誤射をしてしまい、それを口実に『当てられ屋』が喜々として戦闘への介入を開始。タダでさえ数的不利を抱えていたのに、それが決定打となって警備隊側の防衛線が総崩れとなっていく。
『前進ー!!』
『管制室を目指せェーー!!』
対峙していたガショメズの一団も、逃げる警備隊を追うように前進を開始する。
そしてその横には――
『待てコラ逃げんじゃねェー!!』
『大丈夫優しくするから!! ちょっと銀河刑法第三百六十五条に基づいて暴力するだけだから!!』
――等と叫びながら追いかける『当てられ屋』達の姿が。
更にその横には――
『俺の十年契約ー!!』
『あ、案件ー! 案件は引き続き募集中ー!』
――等と叫びながら追いかけていく『押取屋』達。
基本的に『押取屋』を雇ってくれるのは"負けてる側"なので、"勝利サイド"は取り合ってくれない。
逃げる警備隊。
それを追うガショメズと、ヤウーシュと、ヤウーシュ。
やがてその集団は、宇宙港の敷地外縁部にある『管理センター』へと到達する。
壁面にぱっくりと口を開けている管理センター、その玄関口へと警備隊が逃げ込み、遅れてガショメズとヤウーシュとヤウーシュが突入。
そして何やら内部で、どったんバッタン大騒ぎが始まった。
断続的に爆発音が聞こえ、壁に亀裂が入ったり、管理センターの窓をブチ破って『ほげー』という悲鳴と共に人影が飛び出してくる。それはガショメズであったり、時にはヤウーシュであったりした。
そんな様を遠くに見ながら、サトゥーは呟く。
「あーあもう滅茶苦茶だよ」
――と、その時。
天井の赤色灯が突然回り始め、外部へと繋がる宇宙港のメインゲートが開き始めた。
それを見るや、駐機場に停泊している宇宙船が一斉に動き出す。
そして『こんな場所に居られるか! 宇宙船は宇宙に行かせてもらう!』と言わんばかりに、滑走路へと殺到し始める。
助手席のサメちゃん――とうにジュースを飲み干し、コップ内の氷をバリバリと噛み砕き中の――が、その様を見ながらサトゥーへと尋ねて来た。
≪サトゥーさん……どうします?≫
「うーん……ウチらも出港しちゃおうか」
≪そうですね!≫
「ほな出発しもす! あ、しもしも~? ハローしーきゅー管制室~?」
出発を決めたサトゥーは、念の為にと管制室へ通信を入れる。
しかし返って来た通信は――
≪ぎゃあああ助けてェェー!!≫
≪君がくれーたービームはおっくせんまん!(ドガァ) おっくせんまん!(ドゴォ)≫
≪コントール奪取! ゲート開放に成功しました!≫
≪子供の頃~♪ やった事あるぜッ!! 懐かしい破壊だァァーー!!≫
≪うおおお我こそはデヴァーン氏族最強のォォォ!! 今なら十年契約がお得ゥゥゥ!!≫
――何か、忙しいみたい。
「じゃあ出発しまーす」
≪はーい≫
これはもうセルフ出港で良いんじゃないかな?
サトゥーは宇宙船を微速前進させる。
慌しく動いている他の船と衝突しない様に注意しながら滑走路へ向かい、上手く隙間を縫いながら船を加速させると、メインゲートをくぐり抜けて宇宙空間へと飛び出した。
「……うん?」
そして気が付く。
――何やら宙域が騒がしい事になっていた。
たった今飛び出した『ああああああステーション』は各所から砲台を生やしているし、別の格納庫からは矢継ぎ早に飛翔体――どうやらV-TECHらしい――が吐き出され続けている。
離れた場所に浮かんでいる『他で買い物すると損するでええんか?ステーション』や『安い安い安い安いステーション』等も同様で、ミサイル垂直発射装置の天板は開いているし、屹立したレールガンの砲身は帯電しているし、発艦した戦闘艇は編隊を組んでいるし、どう見ても戦争の準備が進んでいた。
戦闘こそ起きていないが、何とも騒がしい事である。
そんな宙域の様子を見ながら、サトゥーは呟きました。
「お祭りかな?」




