第80話「せんじょう」
あー、ねんまつ
皆さまよいお年を!
『ああああああステーション』は構造の中央部、宇宙港にて。
駐機場に泊まっているサトゥーの宇宙船、その操縦席でサトゥーとサメちゃんは平和にジュースを飲んでいた。
≪何か賑やかですね。じゅぞぞ~≫
「ね。何だろね。じゅぞぞ~」
二人が眺めているキャノピーの外、駐機場では何やらガショメズとガショメズが争っている。
サトゥーは当初、アナウンスと共に臨検隊がこちらに向かってきていたので、『もしや自分の船が嫌がらせで臨検されるのでは?』という疑念を抱いていた。
しかし直後、近くに停泊していたガショメズ船が臨検隊に向けていきなりビームを発射。
そして今は船から降下したガショメズ兵と、宇宙港のガショメズ兵とが目の前でドンパチ賑やかに戦っている。
どうやら臨検隊の目的は、『いきなりビームを発射したあの船』だったらしい。
内心、安堵するサトゥー。
(どうせガショメズの事だ。
あの船が禁制の品でも運んでて、それを取り締まろうとした結果……ってとこだろ)
キャノピーからは、激しく撃ち合う両陣営が見える。
流れ弾が時折飛来するも、稼働させたバリア装置が早速活躍して全て弾いていた。
『チ、チチチチーー!!』
『きゃあああー!』
『うああ逃げろぉーー!』
駐機場にいた各種族が、戦闘に巻き込まれまいと一斉に逃げ出していく。
――のだが、その中に。
『『『~♪』』』
何故かスキップをしている集団が居た。
そのウッキウキな集団は逃げる群衆の流れに逆らいながら、何故か駐機場の方へと向かっていく。
それを見たサトゥー――
(む、まさか……あの愉快なシルエットは!?)
『 スペース奴ら 』
作詞:サトゥー 作曲:サトゥー
街をつつむ Fighting fog
愉快な Silhouette 動き出せば
それは紛れもなく ヤツら
ヤツら Leaving me blue
ヤツら Fearing you true
ヤツら Only huge debts after you
背中にまといつく 支払いは
賠償という名の ものがたり
許されるはずもない Violence & Violence
SpaceYatura Ⓢ SATOO Record Co.Ltd
現れたのは奴ら。
それを見たサトゥーとサメちゃん、思わず叫ぶ。
「げぇヤウーシュ!」
≪で、出たーー!!≫
駐機場にスキップで現れたのは、ニコニコ顔のヤウーシュ達だった。
銀河の星が輝く陰で、闘争のリズムがこだまする。
星から星に泣く人と、特に関係ないけど宇宙の始末!
戦闘種族ヤウーシュがー! お呼びとあらば即、参上!(呼ばれてない)
戦いの熱に引き寄せられて……来ちゃった♡
闘争。
ヤウーシュ。
一つ屋根の下。
何も起きない筈が無く――
≪あれ……?
あのヤウーシュの人たち、何もしませんね……?≫
――と思いきや、何も起きない。
意外、それは傍観!
駐機場に現れたヤウーシュ達は、ソワソワしながらも何故か戦闘に加わろうとしない。
サトゥーがその理由を説明し始める。
「あぁ、サメちゃん……あれね、待ってるの」
≪待つ……? 何をですか?≫
「もうすぐ来ると思うよ……。ほら来た」
≪……?≫
サトゥーの説明に、助手席でサメちゃんが首を傾げる。
やがて駐機場に答えが現れた。
それは外部から新たに駐機場へやって来たガショメズの一団で、彼らは長テーブルや複数の荷物を抱えている。そして戦闘エリアの外縁に長テーブルを並べると、抱えていた荷物――鳥かごの様なものを複数――をその上に陳列し始めた。
準備が終わると一斉に声を張り上げ始める。
『さぁ新装開店や!』
『新鮮なグ ㇷ゚ジヮ入ってるよ!』
『今ならレジャーシート付きや! 花柄もあるで!!』
戦場の真横で何を始めたのか。
サメちゃんがサトゥーへと尋ねる。
≪あれ……何してるんですか?≫
「弁当屋だね」
≪弁当屋≫
「戦場で臨時オープンするヤウーシュ向けの弁当屋で……ほら、ヤウーシュが動いた」
説明するサトゥーの言葉通りに、戦いを傍観していたヤウーシュ達が一斉に弁当屋へと走る。そして次々と弁当、そしてレジャーシートを買い付け始めた。
『その弁当Aくれ!』
『俺は弁当B! あとレジャーシートも!』
『毎度! 柄は何にするんや!?』
『あー……そのお星さまのやつにしてくれ!!』
飛ぶように商品が売れていく。
だが今、何故ここで?
そんな疑問を顔に浮かべているサメちゃんに、サトゥーが解説を続けた。
「ほら、ヤウーシュって喧嘩好きだから、戦闘と見るやすぐに参加したがるでしょ?」
≪それは……はい≫
「でも以前、部外者なのに乱入して『騒ぎを大きくした』って、アルタコから怒られた事があって……。そこで編み出されたのが、戦闘に介入したんじゃなくて『ピクニックしていたら偶然そこが戦場だった』理論」
≪ピクニックしていたら偶然そこが戦場だった理論≫
「自発的に戦闘へ介入したらダメだけど、いつどこでピクニックするかはヤウーシュの自由だから、たまたまピクニックしていたらそこが戦場で偶然巻き込まれました! って言うのが、彼ら『当てられ屋』の理屈」
≪当てられ屋≫
屁理屈やんけ。
呆れるサメちゃんとサトゥーが見ている先で、準備を済ませた『当てられ屋』達がズンズンと駐機場へ侵入を開始する。
飛び交うビームをモノともせずに戦場の中央に居座ると、購入したばかりのお星さまレジャーシートを『ふぁさぁ』っと広げ、その上にどっかりと腰を下ろした。
『お前よォ、こないだのアレどうしたよォ!』
『おぉーあれかァ! あれはこう……アレしたよォ!』
そして談笑しながら、各々が弁当を広げ始める。
――と、そこへ。
駐機場に、更に『別の集団』が追加で現れた。
≪あれ……サトゥーさん。
何か別のヤウーシュの集団? が来ましたけど……≫
「うん? あぁ、あれは――」
戦いの熱に引き寄せられて……さらに来ちゃった♡
しかも新たに現れたヤウーシュの集団は、何故か全員が武装を済ませている。
フル装備。
ヤウーシュ。
一つ屋根の下。
何も起きない筈が無く――
≪うん……?
新しく来たヤウーシュの人達、一体何を……?≫
――と思いきや、特に何も起きない。
新たにフル装備で現れたヤウーシュの一団は、そのまま参戦する事なく、冷静に駐機場の外縁部で何か準備のような事を始めた。看板を立てたり、旗を立てたり――。
そして用意が終わると、一斉に声を張り上げ始める。
『暴力、暴力は要らんかね~!』
『遠からん者は音にも聞け! 近くば寄って目にも見よ! 我らギョカイン氏族、案件募集中ー!!』
『うおおおおお我こそは!! デヴァーン氏族最強の戦士コレダァケーなりィィィ!! 今ならお見積り無料ォォォ!!』
頭上で槍を振り回したり、飛び跳ねて身体能力をアピールしたり……。
そんな光景を眺めながら、サトゥーが解説した。
「あれは『押取屋』だね」
≪オットリャー?≫
「おっとり屋。武器を押っ取って駆けつけた、つまり大急ぎでやって来た"駆けつけ傭兵"って事。『当てられ屋』は被害者として参戦するけど、『押取屋』の方は正規の傭兵として雇われて参戦する感じかな」
≪なるほど……色んな戦略、戦略? があるんですね……。あ、じゃあサトゥーさん、あの人たちは?≫
「ん?」
そう言って、キャノピーの外。
サメちゃんが指さした先には、更に更に別のヤウーシュの集団が居た。
しかし今度のヤウーシュの集団は、駐機場から離れた場所――宇宙港の外壁近く――で何やら大暴れをしている。
『レラレラレラレラ、ザッピ、モッツァレロ! ザッピ、モッツァレロォ!』
『ブンチキチキ、ブンツクツク、ペポパポピピペ、ハッハッハ! どれ、それ、あれ、そう!!』
『ペェェ~~! 何だっけ……忘れたァァワハハハハ!! ぜんぜん忘れたァァァワハハハァーー!!』
テンションが上がっているからだろうか。
暴れるヤウーシュ達は全く支離滅裂な事を叫びながら、宇宙港の備品を壊しまくっていた。その様を見ながら、しかしどこかワクワクした様子でサメちゃんがサトゥーへと尋ねる。
≪何か物凄い暴れてますけど……あの人たちは何て言うんですか!?≫
「あれはアバレ族だね」
≪アバレ族! それで、あのアバレ族にはどういう戦略が!?≫
「あれは暴れてるだけだね」
≪暴れてるだけ≫
「後でアルタコに怒られると思う。あと賠償請求が来るから、支払いする氏族長に絞られるんじゃないかな?」
≪なるほど……なるほど? なるほど……≫
せんじょうには。
いろんなヤウーシュが、いるらしい。
まこと銀河情勢とは、複雑怪奇なり。




