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実は私はね……

作者: 雉白書屋

 とある会社。そのトイレにて……


「……社長? あ、やっぱり社長だ」


「……」


「あの、ちょっとお話があるんですが、ここではちょっと」


「……」


「社長? ここ、他の者も来ますし、ほらあと、今日は面接の日じゃないですか」


「……だよ」


「はい?」


「それだよ」


「それ……と申されますと……」


「やってんだよこっちは」


「……はい?」


「清掃員の振りをさぁ!」


「え……あ、ああ! あれですか! その会社の社長が清掃員の振りして、面接に来た就活生をチェックする的な」


「そうだよ。それで緊張している学生にいい感じのこと言ってさ。

面接にちょっと顔を出したりなんかしてさ、もしくは入社後にさりげなく出会い、ああ! あのときの! ってやりたいんだよ! 態度の悪いやつを懲らしめたりもさぁ!

それなのにお前はなぁ、まったく一発で見抜きやがって。まあ、俺の秘書だから仕方のないことかもしれんが」


「いや、社長……」


「ん?」


「清掃員にしては小奇麗と言いますか……その腕の時計とかあれですよね1000万円するやつですよね? 前に社長が自慢されていた」


「ん、ああ、ふふっ。いいだろうこれぇ」


「いや、なぜ? 清掃員に扮するのになぜ高級腕時計を……それにその清掃服もやけに質がよさそうな……」


「ああん? 俺にあんな小汚い格好しろっていうのかよ」


「その発言はちょっともうアレですけども。清掃員の振りをするというコンセプトが破綻しているといいますか、就活生にも気づかれてしまいますよ?」


「まあ、そうなっても仕方がないかなぁ。へへへ」


「まさか、気づかれて媚を売られたいんですか……? 欲望が渋滞してもう……いや、そんなことより早くここを出ましょうよ!」


「は、はなせ! 俺はここで前途ある若者を迎えるんだ!」


「だからですよ! 変に思われてうちの会社に来てくれなかったらどうするんですか! ただでさえ今、不安に思っている社員が、あ、そうだ、早くその話を! ほら出ますよ! 人が来ないうちに早く!」


「わかった、わかったよまったく! ここでいいかもう。あ! 来た来た来た! はなせ! ふぅー……面接頑張ってねぇ」


「あ、はい」

「どうも……」

「あ、ありがとうございます……」


「ほら、その格好だから、どういう人だろうって謎に思われたんじゃないんですか?」


「お前が邪魔してたからだろうが!」


「きゃ!」

「どうしたの! え、これ……?」

「カメラ……?」


「え……社長、あの、始めにお話があると言いましたよね? あれ、社内の女子更衣室から盗撮カメラが見つかったという話なんですけどまさか社長……社長?」


「あのちょっと! そこの二人! さっきこの女子トイレから出てきましたよね!?」


「え、や、あの……い、今、ちょうどこの不審な人物を捕まえたところでして! ほら、さあ、大人しく一緒に来るんだ!」


「ふ、不審だなんてそんな、私はねぇ! ……私は、しがないただの清掃員ですのでぇ、へへへぇ……」

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