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それは悪夢だったかも【非日常】【夢オチ】
「うーんと長いこと
待ってたよ
……が来るのを」
それは
静かで真っ暗な空間の中
どこからともなく
聞こえてきた声だった
上からかもしれないし
下からかもしれない
左右どっちとも言えそうでいて
前か後ろかも分からない
あなただれ?
そう聞きたかったのに
開いた唇は
まともに言葉を返さなかった
「会いたかったよ
生まれる前から
ずっと」
うれしそうでありながら
ひやりともさせる
淡々とした語り口
だぁれ?
特徴のない声だから
聞き覚えがないというより
ありすぎて分からない
だぁれ
だぁれ
あなたは──
まだ夜の夜中に目が覚めて
熱があるわけでもないのに
パジャマがびっしょり濡れていた




