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欠けた刃のこぼれ端
あの人が抜き放つ
剣の刃は
まぶしく陽の光を受けて
この世のものとは思えないほど
美しかった
だから自分は
どんな人よりも
まず先に
あの人の剣になりたかった
あの人を助けられる
危機においても守っていられる
唯一無二の存在に
人がモノに化けるには
その一部を呑み込む必要がある
いつぞやの
欠けた刃のこぼれ端
大事にだいじにしまってた
時が来れば
時が来れば
きっと
あなたの大切を守れる存在に
けれどもそれは
ひとたび化ければ
元に戻れぬ
禁断の呪い
今の自分との決別を意味する
だから最後のさいごの手段
欠けた刃のこぼれ端
今日も大切に抱いて




