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残業前の休憩時間
西に傾いた陽の光が
真白い建物を朱金色に染めていく
エアコンをつけていないから
まだ少し寒さが残る休憩所で
一番窓際の席に腰掛け
少しずつ忍び寄ってくる
闇夜の気配に
耳を澄ませていた
急に決まった残業前の
十五分の休憩時間
前もって分かっていれば
夜食にパンの一つも買ったのだけど
残念
めぼしいものは売り切れていた
茶腹も一時と言うから
水筒の中にあるお茶を
ちびちびと飲みながら
窓の外の光景に見入っている
雲の多い夕方の空は
いつしか茜色よりも進んで
宵色に入れ替わっていた
ああ
いけない
休み過ぎだ
慌てて席を立つと
居室に戻っていった




