異世界へ
自分は絶対に
異世界になんて行ったりしない
何度も何度も
居場所をリセットしてきた自分が
たどり着いた結論
それは
自分が変わらなきゃ
場所だけ変えても
結局は何も変わらないんだってこと
だから
自分の中に
嫌いなところは多々あるけれど
ひとつひとつ打ち消して
ひとつひとつ解決して
好きな自分に少しずつ変わっていく
だから
うちの家のお勝手の戸が
急に異世界に繋がったとしても
くぐったりはしないんだ
そう決めて
見ないことにしていたのに──
「なぜ……」
今
自分の目の前には
短い角と牙を生やした鬼っ子が
きゃっきゃっと追いかけっこしてる
その横では
淡い緑色の肌をした妙齢の女性が
牛乳の入ったグラスを傾けている
異界戸を見れば
今まさに
こちら側へやってこようとしている
小さいドラゴンの姿
自分は頑張って声を張り上げる
「古い家なんだから暴れないで!
冷蔵庫から物を出す時は
代わりを補充して!
ちょっとやそっと小さくなっても
無理なサイズなんだから
戸を壊さないでよ!」
自己主張なんてとんとできない
引っ込み思案な自分だった
ある日を境にやってくるようになった
珍客たちに対して
あれこれと意見できるようになったのは
自分からしてみれば
大きな変化であり
また前進でもある
今度の連休は
一度行ってみようか──
見知らぬ世界へ




