いばら姫の瞳に焦がれた【王子視点】【童話風】【恋愛】
幸せそうに眠ってる
淡く開いた唇に
僕のそれを重ね合わせて
貴女の瞳が見たかった
どうしても
イバラに閉ざされた城の塔
爪先を向けると
イバラが道を開ける
罠を危ぶまなかったわけじゃない
気楽に足を踏み入れて
取り込まれて
出られなくなったら
どうしようもない
百年を封じ込めた呪いのイバラだ
それでも何か
僕にとって大切な何かが
見つかりそうな予感がして
先へ進んだ
初めは僕の動きに反応していたイバラたちは
やがて僕を誘導し始めて
塔の最上階へと
導いていく
その寝室は
バラの香りがした
ベッドの横にある
サイドテーブルに
閉じられた本
薄手の栞が挟まれていて
本にかたが付かないように
配慮されているのが
僕の心に響いた
横の窓から陽がさして
姫君の顔が照らし出される
美しい、と感じた
控えめな小ぶりの唇
優しそうな目元
それが開く様を見たかった
どうすればいいか知っていた
誰に教えられなくても
何故か分かっていた
そっと顔を寄せて
柔らかな唇に触れる
すぐに離れて見ると
少しずつ開いていくまぶたの下から
現れてきた瞳は
ペリドットのような明るい緑色
おはよう姫君
にこやかに笑って告げた
彼女はまだ寝ぼけ眼で
にっこりと笑って返してくる
次の瞬間
きっと貴女は驚いて
ベッドの上を全力で後ずさるんだろうけど
今はまだ
やんわりと微笑んで
僕のそば




