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蛇草-Recollection -  作者: 津城志織
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フレンド登録

罪悪感っていうのだろうか、何かが私の胸の奥を締め付ける。


首が切り落され生首が床に転がり、頭のない首から血が流れ出ている光景がまだ目にこびりついている。


私は人は殺してないけど、私の協力相手のエリカが人を殺した。


私は間接的に人を殺した共犯者だ。


もう、取り返しがつかない。


そんな時、私の能力で時間を巻き戻せないだろうかと思ってしまう。


だけど、そんなことはできない。


物や怪我の状態を巻き戻せたとしても、時間を巻き戻すことはできない。


何度も試したけど、タイムループやタイムリープみたいに


この世界の時間を戻すことはできない。


もう戻らないと思うと罪悪感が私の首を絞めつけ、床の冷たさがよく感じられた。




「じゃあ、みもりん。部屋を元に戻してね」




私から離れて、玄関の近くにいるエリカはそう言った。


恐らく巻き戻している対象が自分に衝突するのを避けるためだろう。




「わかった」




私はまず割れたガラスにかざして左手を能力を使った。


散乱したガラスはまだ動かなかった。




そして私は部屋の家具一つ一つに能力を使っていった。


まだ動かないがもうすぐしたら動くので私はエリカがいる安全な場所に移動した。


そこには割れたガラスの破片が一つもなかった。




「ねえ、取り分は半分って言ったよね。15ポイントの半分7.5ポイントエリカが取りなよ。どうやってポイント渡すの?」




私は腕を組んでリビングを見ているエリカに尋ねた。




「あぁ、ポイントの譲渡ね。自分から組もうって言っといて肝心なことは忘れてたよ。ポイントの譲渡はね、ポイントを取得したときに予め登録したフレンドだけにできるんだよね。でも、登録から半日以上経ったフレンドしか譲渡はできから、今のはいいよ」




つまり、ポイントの譲渡は事前に登録したフレンドに限られ、かつポイントを入手した時だけできるため、敵に襲われた時のような緊急時の交渉手段としては使えないのか。




「じゃ、本貸して」




私が本をエリカに渡すと空白のページに手を押し当てた。


すると、「棚木エリカ」と文字が浮き出た。




「じゃあ、その文字の上に指を置いて」




文字の上に指を置くと文字は金色の文字になった。




「これでポイントが渡せるね。あっ、そうそうポイントを渡すのは二人でポイント稼いだ時だけでいいよ。だから、一人で稼いだ時は自分のポイントにしてね」




「わかった。ありがとう。」




そして、しばらくするとリビングのガラスが動き始めた後、ものすごい速度で宙を舞い始めた。


家具なども同じで動き始めた。




「すげ」




ガラスが巻き戻されているところを見てエリカは感心しているようだった。


そして、ガラスの破片は窓に集まり元に戻った。


他の巻き戻しが終わると、部屋は元通りに戻った。私はエリカに全て終わったと告げるとエリカはリビングに行きさっきまでめちゃくちゃになっていたベットに飛び込んだ。


私はそのベッドのそばに座った。




「黒のクリスタルだけあって、みもりんすごいね」


なぜ、そんな風な表現をするんだろう。


まるで、クリスタルの色が能力になにか関係あるような口ぶりだ。


杏一も私の能力は黒のクリスタルだから強いって言ってたけど、やっぱり黒のクリスタルの能力は強いのか?転送した時に得られるポイントも黒の時だけ100ポイントだし。




「ねえ、クリスタルの色と能力ってなにか関係があるの?」




「え?なんでそれ知ってるの?まあそうだけど...」




やはり、自分の推測は間違ってなかった。数学で問題を解いた時のような爽快感を少し感じた




「じゃあ、黒のクリスタルの能力ってどんなの?私みたいなのが多いの?」




「みもりん以外に会ったことないからわからないなぁ。すごいって噂を聞いたぐらいだよ」




「はあ、そうなんだね。じゃあさ、他の,,,」




他の色はどんな能力を持っているの?と言おうとしたその瞬間。


私の言葉を遮るかのように着信音が部屋中に響いた。




「なんでスマホが?」




転送して消えたはずのスマホがそこにはあった。


エリカは鋭い目つきで私を見つめて口元に人差し指を置くと電話を取るとスピーカーにした。




「...できたかしら?」




妙に透き通っていて落ち着いた声が響いた。


声からすると大人っぽい女性という雰囲気だが、声が少し若いように聞こえた。


私たちがその問いに答えず不自然なほど間が空くと電話越しにペラペラと本をめくる音がした。




「あらぁ...?違うみたいね。まあいいわぁ」




女は電話に出た相手が違うことに気づいたようだ。




「うふふふ。それじゃあ、さようならぁ」




不気味な笑い声を


すると電話は切れた。




「ふっ!」




通話が切れると同時にエリカが声を上げた。


エリカの腕には一つの黒い点があった。それはやがて刺々しい線となり腕の上を一周した。それはまるでブレスレッドのようにエリカの手首を囲んだ。


はたから見ると、それは入れ墨だった。




「うわぁ、いったぁー!」




刺々しいその模様からはだらだらと血液がしたたって床にぼとぼとと落ちている。


血は流れているのだが、傷口はどこにもない。




私は左手をその模様にかざした。




すると血が床から模様に戻り、模様はさっきとは逆回転で一周し模様は消えた。


しかし、巻き戻しを解除するとまた模様がエリカの手首に浮き上がった。


私は少し戸惑いながら、エリカの方を見た。




「ふむ、呪い系は巻き戻しても無意味ね、一つみもりんの能力についてわかったよ。それにしても、この模様ダサいな」




「呪い?そんなのがあるの?」




「うん、たまにあるよ。青と紫に多いかな呪い系の能力はね。あははは、呪い系の能力にかかったのは久しぶりだよ」




エリカはヘラヘラしながら模様をさすっていた。




私にはその神経がわからなかった。誰かから攻撃を受けていてこれからどうなるのかわからないのに、なんでこんなにヘラヘラできるのだろうか。


やっぱり、エリカはちょっとおかしい。頭のネジが外れている。


人を殺すことに対して何の罪悪感も感じてないようだし、このゲームを本当に楽しんでいる感じがする。




「なんで、そんな楽観的なの?」




「ははは、楽観的か。それはね、私が強いからかな?」




エリカは得意げに笑った。




「こういう呪いみたいにネチネチした呪いみたいな能力は大体ざこなんだよ。」




「雑魚?」




「最初チクッてしただけで、あとはただのタトゥーになっただけだし。電話越しにかけれるほど簡単に呪いをかけれる。どうせ、場所がわかる程度の能力なんだよ。」




「でも、場所がばれたら。やばいんじゃ...」




「ははは。それは大丈夫っ。私の能力だったら、一生逃げれることができるから。


 それに、殺し合ったとしても、私に勝てる能力なんかめったにないから」




「本当に大丈夫?」




「大丈夫だって、初心者に心配されるほど私も軟じゃないからね。」




まあ確かに、エリカはさっきみたいにヒト二人を瞬殺するほど強い。


私みたいなまだ初めてばかりであまりゲームについての知識がない人間に心配されるほど弱くない。




「でも、この手首は大丈夫じゃないかな。ほぼタトゥーだし、こういうのは洗っても消えないんだよ。学校で見られたら、手首に落書きしてる変な人って思われちゃう。入学早々変人っていうレッテルを貼られるのはごめんだよー」




「まあ、そうだね。学校では包帯巻くとかして、なるべく模様を見せないように気をつけないと。他の人には理解されないだろうしね」




「包帯嫌やだなぁ、きついし、痒くなってもかけないし」




「まあそういう人もいるよね」




エリカは頬に指を当て首を傾げていた。




「そういえば、みもりん。明日学校休める?」




「どうして?」




「一人で行くのはちょっと嫌なんだよね。それに、平日しか無理なんだよ」




「私じゃなくて別の人に頼んだらいいじゃん」




私は必要以上にエリカに関わりたくなかった。




「それに、どこに行くの?」




「この模様を消しに行くんだよ。だからぁ、みもりんも一緒に行こ?良いことあるからさ」




「呪いを解くことができるの?」




「いや、隠すだけだよ能力でね。みもりんの髪色も変えることができるよ。もう色落ちしなくなるよ。だから、一緒に行こ?」




もう色落ちしないだって?それはちょっと興味がある。




「じゃあ、いいよ。学校なんかどうでもいいしね」




「やったー!それじゃあ、明日の十時に迎えに行くね!」




まさか、前みたいに私の部屋に能力を使ってくるのだろうか。




「...わかった」




それから私はエリカと能力の特訓をした後、お開きすることにした。


私はエリカに学校まで送ってもらうと、自分の帰路に着いた。


辺りはもう暗くなっていた。




私は今日のことを振り返りながら帰路を辿っていると私のアパートが見えた。


私の家は学校から近いから案外すぐ着く。




アパートに近づくごとに人影が見えた。


近くなるほどその姿ははっきりしてくる。


やっとわかったその人影は杏一だった。


アパートの塀の前に杏一は立っていた。




杏一は私に気づくと小さく手を振った。




「やあ、帰るのが遅いね。もう19時52分だよ。君部活も入ってないだろ?」




「え?なんでいんの?帰るのが遅いとか別にいいでしょ」




「ちょっと用があってね。そのフレンド登録ってやつを最近知ったから、登録しておこうと思ったんだ。それに、話しておきたいこともあるしね」




ちょうどよかった。私もいつかフレンド登録しておこうと思っていた。




「フレンド登録ね。じゃあ、私の部屋で話そうかね」




「いや、みもりちゃんの部屋じゃなくていい。君に来てほしい所があるんだ」




「は?それどこなの?」




「怖いな。とりあえずそこの車に乗ってくれよ。」




杏一が示した方向には黒塗りのバンがあった。


杏一が運転できるわけでもないし、運転するのは誰なのだろうか。




「えぇ?」




「大丈夫だよ、車内には女性がいるから」




杏一はなにか勘違いをしているようだけど、女性っていったい誰なんだろう。


車を運転できる年齢の人は私の知り合いにはいないし。




「わかった。じゃあ乗るよ」




私は黒塗りのバンにまで行き、杏一がドアを開けると私は車の中に入った。


車の中は花の香りの芳香剤の匂いが充満していた。


私は椅子に座り、運転席を見た。




「お?君がみもりちゃんか。イメージと違って随分といい体つきやね」




運転席には中学生ぐらいに見えるほど幼いというか若い女の人がいた。


髪は肩より少し下まであり、髪色は暗くてよくわからないけど、薄い色だった。




「あなたは誰なんですか?」




「ああ、うちはね...」




「この人は僕の協力者だよ」




杏一は女の人の言葉を遮るようにそう言った。

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