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蛇草-Recollection -  作者: 津城志織
3/6

不法侵入者

相手のクリスタルを奪って、ポイントを稼ぐ。

クリスタルが転送されると、クリスタルの持ち主は死ぬ。

つまり、ポイントを多く稼ぐということは人をたくさん殺すということ。

180ポイント稼ぐとなると、何人殺すことになるのだろうか。

それに、ランキング一位のあの子は600ポイントぐらい稼いでる。

あの子は一体何人殺したのだろうか。


「私、何人殺すことになるの?このゲーム人を殺すことで成り立ってるんでしょ。」


「別に人を殺す必要はないよ。そいつみたいに救済を使ってない人は死ぬことになるけど」


杏一は血が出ていた首をウェットティッシュで拭いていた。


「そもそも、救済って何?」


「救済を使えば、クリスタルが転送されてもそいつみたいに死なずに相手にポイントだけが入るよ。それに、救済を使ったら、相手は一定時間使った相手に対して攻撃することはできない。つまり、救済さえ使えば、絶対に死ぬことはない。」


「救済ってどうやって使うの?」


「ポイントで買うんだよ。救済は購入者自身のクリスタルの色によって必要となるポイント数が変わってくる。僕の場合は緑だから10ポイント。君の場合は黒くろだから100ポイントだ。」


私は本を開き買い方はわからなかったけど、救済の文字が書かれたところをスマートフォンみたいにタップしようとした。

すると、文字を触る直前で指が制止した。


「君は買うな」


杏一きょういちは私の指に念力を使った。


「私に死ねというの?買わないと、クリスタルが奪われて転送されたときに死んじゃうじゃん。」


「君がそれでもし救済を買うとなると、美海に会うために稼がないといけないポイント数がいっきに増える。そうなると、多くゲームをしないといけない、その方が死ぬリスクが高くなるんだよ。」


「私、死ぬことが怖い。」


あの子についてどうなっても良いと思ったのに、覚悟したはずなのに、私は怖いと思ってしまった。


「大丈夫だよ。みもりちゃんの能力は強そうだし、相当な相手でない限り絶対に負けないよ。それに、僕が能力で守ってあげるから。」


能力で守ると言われても、不安だった。

杏一の念力は確かにすごいけど、ほかにどんな超能力があるかわからない。

杏一が私を守り切れないことだってあるだろう。

それに、私の能力がわからない以上、強そうといわれても不安でしかなかった。


「まあ、こんなところでずっと話してるのもなんだしさ、もう帰ろうよ家まで送っていくから。」


そう言うと、杏一は高校生が転送され、唯一転送されなかった本をポケットに入れた。


「ねえ、それどうして持って帰るの?」


私は公園を出ようとする杏一についていきながら尋ねた。


「ああ、これね。一応持っていくだけ。」


なぜ、一応持っていくのかはわからなかった。

もしかして、他の誰かにも協力を求めるのだろうか。


「協力してくれる人を増やす気なの?」


「増やさないよ。誰に頼もうっていうんだよ。美海の友達は僕とみもりちゃんだけじゃないか。美海の友達以外には頼みたくないんだよ僕は。」


公園の前で立ち止まると、杏一はそう言った。

確かに言われてみればそうだった。

あの子は私と杏一以外、友達を作ろうとしなかった。

あの子も友達以外とは会いたくないだろう。


「あれ、君って家この辺だっけ。」


「うん。さっきのカフェの近くのアパート。」


「君についていくよ。」


そして、私たちは私の家へと歩き始めた。

公園から私の家はそれほど遠くないので、すぐに着いた。


「思ったより近いね君の家。」


それもそうだった。私が住んでいるアパートから公園まではとほ十分ぐらいの位置にある。


「じゃあ、僕は帰るよ。何かあったら、僕に電話してね。すぐ行けると思うから。」


そう言うと杏一は手は振り、駅の方面へと歩き出した。


私は杏一の後姿を見ると、アパートの自分の部屋へと向かった。

私の部屋は二階の203号室にある。階段から三番目の位置だ。

アパートは10年前に建てれたみたいで比較的綺麗だった。

だけど、部屋は思ったより狭かった。

最初はとても気にしていたけど、今は別に気にしてない。


鍵を取り出して自分の部屋に入り、ドアを閉めて靴を脱ぐと一気に疲れがのしかかったような気がした。殺されかけるといったスリリングな体験をしたからか、それとも、何日かぶりに外に出たからか、とても体が疲弊していた。時刻はまだ五時で外もまだ明るかったけど、私は昼寝というか、仮眠をとることにした。私はリビングのベットのそばの床にクッションを置くとそれを枕代わりにして仮眠することにした。


私は横になり瞼を閉じた。

私の息だけが聞こえる、部屋は静寂に包まれていた。

私はただそれを感じるだけで、何も考えず寝ることだけに集中した。



私が目を覚ましたのは四時間後だった。



「....い、...きて。おーい起きて。」


女の人の声がする。

声は高く、少女の声だった。


「うわっ!」


目を開けるとそこには知らない女の人が私のソファに座って私を見下ろしていたいた。

髪は淡い紫で後ろ髪をまとめて三つ編みにしていた。

見た目からして、高校生で私と同じかそれよりも下といった印象だった。


「君って早寝早起きするタイプの人間?いま八時だけど。それとも、パジャマじゃないから、寝落ちした?」


「どっから入ってきたの!?」


「『質問を質問で返すなあーっ』」


ちょっと男の声をまねて眼の前の少女は私を指した。


「なんてね、はははは。どうやって入ったかというと、私の能力で入ってきたの。」


自分に掌を向け、にやけながら少女は答えた。


能力、能力で私の家に入ってきた。ということはあのゲームの参加者!?

まさか、私のクリスタル目当てで部屋に不法侵入してきたのか!


「私のクリスタルを奪いに来たんですか?」


「ん?これのこと?」


少女は黒いクリスタルを持っていた。


「君すごいね、黒なんて。100ポイントだよ。何もせずに100ポイント。

 羨ましいなぁー。」


「そのクリスタル転送するんですか?」


私は急に転送されないように恐る恐る聞いた。


「さぁあね♪」


雰囲気からして、なにか弄ばれているような気がした。


「まあ、とりあえず自己紹介しようよ。私はっ!あの!ランキング7位の!」


「棚木エリカちゃんでーす♡」


顔の近くでピースをしながら棚木エリカはそう言った。


「....え」


私は驚きよりも恐怖の感情が私を支配した。ランキングが上位ということはポイントをたくさん稼いでいる。つまり、人をいっぱい殺しているということだ。

それが、私を狙いに...。そうか、私のクリスタルを転送すれば、100ポイント手に入るからか。


「アナタのナマエは?」


「蛇草みもりです...。」


「ダクサ。ダクサミモリね、ふふ。いい名前だ、親に感謝しないとっ」


「その黒のクリスタルを転送するんですか?」


「えー?そんなに送ってほしい?」


「送らないでください。」


「敬語やめてよー、堅苦しいなぁ。みもっちっって、何歳?」


...みもっち。私のことか。今まであだ名をつけられたことがなかったので、一瞬誰かわからなくなった。


「17歳です。」


「17さいっ!?私と同じじゃん。じゃあ、もうタメでいいじゃんか。」


「あなたはなんなんですか。何が目的なんですか?」


「わかったよ、教えてあげるね♪私の目的♪」


棚木エリカは人差し指と親指で持っている黒いクリスタルを見ながらしゃべり始めた。


「私の目的を端的に言うと、私と手を組んでほしい。」


私を殺すという目的でないと知って、私は少し安堵したが、同時に疑問が浮かび上がった。


「…え?」


「みもりんってさ、自分の能力知ってる?」


「…知らないです。今日始めたばっかなんで。」


「だよねー。能力について、よくわかってない。だから、私と組んでポイント稼がない?取り分は半分ずつで良いから。」


目的がクリスタルを奪うことじゃないことがわかり、私は少し安堵した。

そして、私は疑問を持った、ランキング7位の人間がたかが初心者となぜ手が組みたいのだろうか。


「…私なんかと…なんで手を組みたいんですか…」


ランキング7位の人間がたかが初心者となぜ手が組みたいのだろうか。


「私ね今能力で困ってて、クールタイムっていうやつで困ってるの。私の能力は一回使ったら、2秒か1秒ぐらい使えなくなるのよ。でさ、その間に怪我するリスクが高いんだよね。でさ、君の能力さえあれば、そんな悩みを解決できるんだよ。」


もしかして、棚木エリカは私の能力を知っているのだろうか。

それとも単純に黒だから、杏一が言ってたように強いと判断したのだろうか。


「…私の能力を知ってるんですか?」


「うん。ポイントで買ったからね、10ポイントだったよ。」


「『巻き戻し』それが君の能力だよ。」


...巻き戻し。それが私の能力。ということは...。


「それで、私がもしけがをしたら、時間を巻き戻して治してほしいの。」


なるほど。やっと、棚木エリカの目的が私と手を組んで私とてをく傷一つつけずにポイントを稼ごうという


わけか、稼いだポイントの取り分は半分ずつ。

悪くない話かもしれない、私が死ぬリスクも低くなるし、ランキング7位の実績を持つ棚木エリカが稼ぐポイントの半分を貰える。


「…わかりましたあなたがクリスタルを奪い、私があなたをサポートするって感じですか…?」


「うんうん!そんな感じ!どう?手を組む気になった?」


200ポイントぐらい稼ぐにはこの棚木エリカと手を組んだ方が一番手っ取り早い。

私は棚木エリカと手を組むことにする。


「わかりました。だけど、一つだけ条件があります。私には二人だけ危害を加えてほしくない人がいて、一人はランキング一位の黒百合美海っていう人で、もう一人は私の友達です。その二人のクリスタルを奪わないって言う条件なら、あなたと手を組んでもいいです。」


「やった!その条件なら受け入れるよ。そもそも、あの一位の人は奪えないし、君の友達に害を加えたくもないしね。そうと決まれば...早速、特訓だっ!」


棚木エリカはガッツポーズをした。


「じゃあ、今から敬語禁止ね。それに、私のことエリカって呼んで。」


「わかった…。」


「うぅ~。タメ口可愛いいいいい。」


エリカが気持ち悪いほど悶えた


「よし!じゃあ、早速能力を試そう!」


エリカは掌から包丁を出した。いや、気づいたら手に包丁を持っていた。

急に包丁が出てきた。


「じゃあ、私が今からこの包丁で腕に傷をつけるから、目を離さずによく見ててね。

 それでついた傷を治してね。」


そう言うと私に見えやすいように包先で手の甲をゆっくりと切った。

ある程度まで切ると、切る動作を止めた。そして、おかしなことに包丁は消えた。

切れ味がいいのか、傷は深く。線からは血がだらだらと出ていた。


「ええええ?そんなに深く傷をつけないでもいいでしょ!それに、カーペット汚れてるし!」


「あ、ごめんごめん。でも、君の能力は巻き戻し。それを意識して能力を使ってみて。そしたら、全部元に戻るから。」


私は杏一の念力を使うような動作を意識しながら、血が流れているエリカの手の甲に

手をかざした。

かざした

「うんうん。そんな感じ!能力を使ってるって意識が大事だよ。」


私はしばらく手をかざした。すると、なにか背筋がピンとするような感覚を感じた後、空気中に包丁が現れた。包丁は手の甲に刺さってる。


「え!?」


エリカは驚きのあまりちょっとかわいい声を出した。

包丁は切るときと同じようにゆっくりと勝手に動いた。

しかし、線を逆走するような感じで動いていた。

そして、包丁が走るたびに流れ出した血は傷の中に入り込んでいった。


線を走り終えると包丁はくるっと九十度ぐらい回り刃先が天井に向くと消えた。

深い線の傷は消えていた。


「傷が消えている、これが巻き戻しか。」


巻き戻した手の甲を撫でながら、嬉しそうにエリカは微笑んだ。


「でも、なんで包丁までついてきたんだろう。」


「たぶんだけど、巻き戻しになったのは包丁の動きと傷の広がりだけだよ。みもりんはそれしか見てなかったから。たぶん、私自体を巻き戻すこともできると思うよ。」


「巻き戻す対象を限定できるってことね。でも、エリカちゃん自体を巻き戻すとどうなるんだろう?」


「やってみる?じゃあ私がこの座ってるソファから、玄関まで歩いて行くからいいよって言ったら巻き戻して。」


そう言うとエリカはソファから立ち玄関まで行った。


「いいよ!」


私はさっきと同じ動作、同じ意識で能力を使った。

すると、エリカは「ヨぃぃい」と訳の分からない言葉を発した後、妙な足取りで後ろ歩きをしてソファに座った。

すると、急にソファから立ち玄関まで行った。


「いいよ!」


まさか、意識までも巻き戻されているのか?

記憶まで巻き戻してまた同じ動作を繰り返した。

そういうことなのか?


「あれ、どうしたの?巻き戻していいよ」


やっぱり、巻き戻されたということは気づいていない。


「いや、もう巻き戻した」


「ほんと!?じゃあ、私自身を巻き戻すってことは意識までも巻き戻されるてこと?」


「たぶん。そうだと思う。」


「うーん。これじゃあ、ちょっと不便だね。君は恐らく巻き戻す対象を限定できると思うから、次は意識を巻き戻さないようにやってみて。」


「...意識だけを巻き戻さない...か。わかった。」


それから、何度か私の能力を使って、巻き戻したが意識は巻き戻せなかった。


「今回もまた駄目だった。」


「ええー。これが、現時点の君の課題だね。もう今日の特訓はお終い!私は体感1分ぐらいだったけど、みもりんは一時間ぐらい巻き戻して疲れたと思うからね、もう終わろう。」


確かに気づくと息を切らしていた。

思ったより、能力を使うっていうことは体力を消耗する。


「よし!じゃあ最後に連絡先交換しよ♪」


エリカはスマホを出して何か操作をしている。


「はいっ」


エリカはチャットアプリのQRコードを私に見せた。

私は自分のスマホを出し、チャットアプリを起動させてそのQRコードを読み込んだ。すると、どこかの花畑でエリカと友達らしき女の子が一緒に写った写真がアイコンになっており、背景は運動会?の集合写真だった。

キラキラの女子高生で私は驚いてつい声が出そうになった。


「初期アイコンじゃん...。名前はみもりんにしとこっと。」


「じゃあ、私は帰るよ。ここだけ土足で入ってしまったからごめんね」


エリカが指さしたところには外靴があった。

エリカはその靴を踏みその上に立った。


「じゃね♪お邪魔しました♪」


エリカは手を振ると、エリカは消えた。

これはマジックとかでよく見る瞬間移動?

これも能力...。そういえば、エリカの能力聞いてなかったな。


「ピロン♪」


スマホを見るとエリカからメッセージが送られていた。

ボイス付きの二頭身になっているお笑い芸人のスタンプだった。

タップすると、

「これからよろしくお願いします」

とやや高い声を出してふざけている男の声が出た。


「私もこれからよろしくお願いします」と送信した。


ランキング7位の棚木エリカと手が組める...。

私は運がいいのかもしれない、これで恐れていた死ぬというリスクは低くなるし、

巻き戻しという私の能力も私の傷を治してくれるからさらに死ぬリスクを少なくしてくれる。

これだったら、200ポイントか稼ぐのも苦じゃないと思った。


(あの子と会える日もそう遠くないのかもしれない。)














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