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高二病は青春を取り戻したい!!  作者: 凍鳥 月花
恒例儀式(じこしょうかい) 起
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第一話 プロローグ

よろしくお願いします。

 ――キンコーン、カーコーン、キンコーン、カーコーン――


 安直な鐘の音が、教室のスピーカーから響き渡る。


 私立高校らしい教室には、新三年生になる一四人の生徒が男女別の制服に身を包み着席していた。彼らはクラス担任を待ちながら、隣人と話したり勉強したりと思い思いのことをしていた。


 男子の制服はかっこよく、女子の制服は可愛い。どちらともハイセンスで着ている人の魅力を引き立てている。それでも制服という枠からは逸脱していない。


 男子は黒い生地に赤いラインを所々あしらい、男らしさを引き立てている。女子の制服は白を基準に上は青色を、スカートはピンクと黄色をあしらっている。全体的に清楚感が出ている。


 他クラスは既にホームルームが開始され、廊下は静かだ。この教室に近づいてくる足音も聞こえる。


「あー、酒飲みすぎてダルいなー」


 ガラガラと扉を開けながら独り言を零したのは、このクラスの担任だ。言葉とは裏腹にハイブランドを着こなし、髪を整えている容姿は大人の魅力を無意識に醸し出している。


 教壇までダルそうに歩いているが、不思議と足取りはしっかりしている。見る人が見れば演技だと分かる。


「諸君、去年同様この特待生クラスを任された永志(えいし)霽月(はづき)だ。卒業までクラス担任を全うしたいと思う。よろしく頼む。さて、代わり映えしないメンツだが、まずは自己紹介を頼む」


 声もしっかりとして、芯の強さが伺える。一人の男子生徒が椅子から立ち上がり自己紹介を始める。


荒世(あらせ)現人(げんと)です。将来は総理大臣になり、強く自立した国、日本を目指します。これからも、よろしくお願いします」


 荒瀬現人。父、祖父共に総理大臣を務め、母と祖母は別々の財閥の出である。小さい頃から家業を継ぐため、合気道や帝王学を習い始め、現在は習得に至っている。


 努力している人間には優しく、周りからも頼りにされている。好青年を体現した顔つきだ。


 高校入学時から全国模試総合一位を取り続けているため、この特待生クラスに所属している。現人が座り次に立ったのは、黒髪黒縁眼鏡で細長い指をしている男子だ。


夏川(なつかわ)龍治(りゅうじ)。このまま文字で食っていくこと。よろしく」


 一年生の一月に文学賞を受賞し、全国模試の文系教科のみでは三位、総合九位である。このままと言ったように、受賞した作品は売れに売れている。


 物静かで優しいが、執筆作業を邪魔されると誰に対しても激高する。次に立ったのは細さと白さで儚い印象を与える男子だ。だが、どこか意地が悪そうだ。


「改めまして、野多(のだ)幸也(こうや)です。物理学者をしています。皆さん、よろしくです」


 アメリカで機械工学科を基礎知識に、宇宙物理学の博士号取得している。全国模試総合二位の学力を有している。普段から目につく自然現象や他人の行動心理を考えている。


 日差しと運動が嫌いなため、体育は日傘持参で見学だ。小悪魔的な笑顔で周りを見渡した幸也は視線で催促する。催促された者は、今までと違い紅一点。女子は一つ大きなため息をつき、立ち上がる。


耶翠(やすい)莉乃(りの)よ。皆と違って実家通いよ。実家が近くの牧場経営しているのは知っているわね。将来は牧場獣医師よ」


 明るめの茶髪でセミロングの彼女は、素っ気ない態度で自己紹介をした。この学校は私立一芸高校。一芸入試しか認めない高校だ。


 北海道の広大な土地を活用し、プロ並みの施設が各種揃っている。サポートも充実しているが、学費が高い。ただ、どのジャンルでも活躍しているプロの母校とあって、受験倍率は高い。


 一芸内容は勉強やスポーツからメディアで活躍している声優やアイドル、果てには運が異常に良いなど、入試試験は多種多様だ。その中の一握りが、この特待生たちだ。


 特待生(S)クラスは一学年に一つあるが、入る基準がとても高い。所属するためには、学力テストと教師の監視下で一芸を披露する試験がある。それに高い人間性を有していることも試験の一つだ。


 Sクラスは定員二〇人まで。教室にいる人数は担任教師を合わせて一五人。空きが出てしまうほど、高い基準が求められている。


 仮に二一人目が来た場合は、入れ替えとなり最大二〇人が維持される。教師は一枠しかないため即入れ替えになる。故に、霽月は全うしたいと言ったのだ。


「次は、面倒くさそうにしている柴浦よ!!」


 莉乃は指名して座る。柴浦(しばうら)英知(えいち)は渋々立ち上がり適当に終わらす。残り九人の自己紹介も終わり、霽月が纏める。


「自己紹介ありがとう。本来なら今日は始業式だが、特待生たちはプリントをもらったら終わりだ。解散していいぞ」


 霽月はそう言いながらプリントを配る。生徒たちも慣れているのか普通に受け入れる。


「それではまた明日。クラス委員長、号令」

「起立、礼。ありがとうございました」


 現人が号令を下し、残りの生徒も追随する。


「俺、このあと練習だからー」

「俺も練習だ!! みんな明日な!!」


 英知は手を振りながら廊下に向かう。その後を追うのは熱血球児の松茂(まつしげ)一翔(かずと)。 英知はサッカー、一翔は野球だ。他の生徒たちも、仕事や練習があるため教室を後にする。教室に残っているのは現人、龍治、幸也、莉乃の四人だけ。


「この後の予定は?」

「今日は予定のない金曜日よ。それなら決まっているでしょ」


 現人の問いに返したのは莉乃だ。


「ふふっ早速しようよ」

「現人。進行」


 幸也は含み笑いをしながら。龍治は現人を急かす。簡潔に箇条に話すのが、龍治の特徴でもある。


「仕方ない。それでは始めようか、私たちの戦いを……」


 現人は目で合図を送り、三人は受け取る。それは声を合わせるための前準備だ。


「「「「聖戦(ハイリガー・クリーク)」」」」


 そして世界は変化する。

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