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ソロモンの悪魔  作者: 祐希ケイト
第1章 魔導院解放作戦
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Ⅶ 解放

第1章 魔導院解放作戦

「ホン……ット、助かりました!」


 魔導機兵に追われ、先程まで大広間でうずくまっていた男性隊員──マグナス=バーンは両足を肩幅まで開き、膝に手をつき頭を下げ、セッカに感謝の意を述べた。


「マグナス、よく生き延びた。だが……」


 セッカはマグナスに顔を上げさせると、疑問を一つマグナスに問いかける。


「なぜ戦わなかったんだ」


「あ、いや、その……」


 目を泳がせ言葉を濁すマグナスだったが、女性隊員──リーン=ハートがすかさずパスを返す。


「ま、魔法が使えなかったんです!」


「……そ、そうなんッす!」


 セッカは首を横に振る。


「別に責めていたわけではない。そう怖がらなくていい。……やはり、というのが感想だ」


「やはり?」


 フィニス含め三人は、セッカの返事に同じように聞き返した。


「ここ、魔導院が襲撃されることは過去にもあったが、これ程までに壊滅的なダメージを受けることはなかった。常に魔導院を覆う結界魔法、そして各個の魔法技術の賜物だが、どうやらそれが、今回どちらも作用しなかったらしい」


 マグナスが不思議そうに右手を見る。


「そうか、だから俺の炎魔法も使えなかったのか」


「だろうな。だから今回の件は気に病むことはない」


 マグナスはわかりやすくホッと胸を撫で下ろす。

 リーンはまだ疑問を抱えたままのようだ。


「それならセッカ隊長、それにフィニス君はどうして魔法が使えるんですか」


 セッカの言うことが正しいとして、フィニスも魔法が使えたことは気になっていた。

 セッカは視線をフィニスに移すと、フィニスの顔を意味深な眼差しで凝視する。セッカのグレーの瞳に、フィニスのグレーの瞳が映る。


「まあ、それは追々わかるだろう」


 言葉を濁したセッカの態度に「えー」と頬を膨らませるリーンだったが、セッカは無視して視線を大広間の出口に移す。マグナスとリーンが大広間に飛び込んできたときの扉だ。


「他の隊長も各自の持ち場で戦闘を行っていると思うがじきに揃うだろう。だが、待っている時間はない。フィニス、マグナス、リーン。俺についてこい。敵を無力化する」


 「はい!」と返事をした三人はセッカとともに大広間を後にした。


 四人は廊下を抜け、軍本拠地の正面玄関へと達する。飛んでくる魔導機兵の弾丸をセッカの魔法障壁で切り抜け、勢いそのままに正面玄関を抜けた。

 正面玄関の大扉を開けると、視界に広がったのは暗雲立ち込める外の景色だった。前方にはルシフ王国から出るための橋がかかっている。しかし、行く手を阻むように大型の魔導機兵が一体待ち構えていた。通常の魔導機兵はニメートル程度に対して、大型魔導機兵は十メートルは優に超えていた。


「おいおい……こんなのめちゃくちゃだろ!」


 マグナスが吠えるように文句をつけると、大型魔導機兵のモノアイセンサーが反応する。マグナスを感知したようだ。

 機体がフィニスたちを捉える。前脚についている機銃から弾丸の雨がフィニスたちに向けて放たれた。

 セッカはすかさず「各自、散開ッ!」と命令を出す。

 フィニスとリーンは倒れている支柱の陰に身を潜め、マグナスはスライディングで破損した魔導機兵の後ろに潜り込んだ。だが攻撃が止むことはない。大型魔導機兵に装備されている小型ミサイルが両足から発射され、上空からフィニスたちを襲った。

 セッカは魔法障壁で機銃を凌ぐと、両手に魔法陣を作り出す。魔法陣が赤く染まり、二重、三重と魔法陣が展開した。


「現出せよ──水の悪魔フォカロル!!」


 両手を地面につけると魔法陣が地面に広がり、中心から龍のような生物が姿を現した。水の悪魔、フォカロルの体長は大型魔導機兵と同じ大きさだ。フォカロルは叫び声とともに振動波を出すと、フィニスたちを襲う小型ミサイルを空中で一網打尽した。フィニスたちは何が起きているのかわからず呆気にとられていた。

 フォカロルはそのまま大型魔導機兵に体当たりすると、橋の入口まで押し返した。大型魔導機兵も必死の抵抗を続けるが、フォカロルは機体に絡みつき、そのまま橋から下に転落した。

 崖の高さは三十メートル以上ある。数秒と経たないうちに激しい爆発音が聞こえ、橋の下から水しぶきがあがった。

 マグナスは目の前で起きた出来事がまるで映画のワンシーンのようにしか思えず、開いた口が塞がらない。


「や、やったのか。一人で…セッカ隊長が…?」


 地面に広がっていた魔法陣がセッカの両手に収まると、水しぶきが反射して橋の上に虹がかかった。セッカは立ち上がりフィニスたちを見遣る。顔色一つ変えず整然とした姿は、フィニスたちに力の差を見せつけるには十分だった。


「作戦は成功だ。帰還する」

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