表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソロモンの悪魔  作者: 祐希ケイト
第1章 魔導院解放作戦
1/7

Ⅰ ソロモンの悪魔

第1章 魔導院解放作戦

 皇歴九五〇年。この日、ルシフ王国領内にある一つの街が()()()()()()()により地図から消滅した。

 逃げ惑う群衆のなか、少年フィニスは愛した故郷が燃えて朽ちていく様子を瞳に映しながら絶望する。


「なんで──なんで、家族を殺したんだよ……!」


 月明かりの夜、燃え尽きた廃村。崩れゆく瓦礫のなか、年齢にしてまだ八歳と幼いフィニスは目の前で親兄弟をすべて殺された。

 かつてフィニスが兄と慕っていた青年の胸には青白く光る剣が突き刺さり、剣が抜き取られる動作とともに、兄だった男の肉体はすこし浮き、そして地に叩きつけられた。

 剣を抜き取った黒のロングコートを着た人物は深くフードを被りなおすと、何も言わず一歩、二歩と、フィニスに向かってゆっくりと距離を詰める。フィニスは腰が抜けるように崩れ落ち、後ずさりしながら無我夢中で叫ぶ。


「やめろ! 来るなっ、悪魔!!」


 フードの人物は何か言いかけたが、すぐに口をつぐんだ。右手に持っていた青白く光る剣をフィニスの胸に向けて構えたのも束の間、フィニスの胸を剣が貫く。フィニスの瞳孔が揺れ、次第にその目から生気がなくなる。


 なんで、どうして俺たちは殺されなきゃいけなかったんだ──と、フィニスは心で思った言葉を最期に、そのまま絶命した。


 フードの人物はフィニスの絶命を見届けると、間髪入れず呪文を詠唱する。


「──レイズ」


 フィニスに向け放たれた魔法は辺り一面を覆うほどの光を放ち、倒れ込んだフィニスの体を包み込む。剣で刺された傷跡は残ったまま止血され、貫かれた内臓も再生を始める。


「お前は死ぬことを()()()()()()()


 蘇生魔法レイズをかけ終えると、フードの人物はきびすを返し、《《悪魔》》により蹂躙じゅうりんの限りを受けた燃えた街を見渡す。

 横たわる遺体。手を取り合う遺体。十字架を手に持つ遺体。

 フードの人物の視界に、ただ一人を除いて生きている者は既に存在していなかった。

 フードの人物はフィニスが絶命する直前の言葉を思い出す。


「……悪魔、か。そのとおりだな」


 フードの人物はフィニスを一瞥いちべつする。


「生きろ、フィニス」


 それだけ言い残すと、フードの人物は颯爽と姿をくらませた。



翌朝、晴れ渡った空。

残ったのは消えた街、そしてフィニスただ一人だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ