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ガフンちゃんとあたし 〜 言葉の通じない友達のことをもっと知りたい 〜  作者: しいな ここみ


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少しだけガフンちゃん

「ムニャ……?」


 目覚めると、大部屋に朝日が差していた。


 みんな凄い寝相だった。

 高貴な緑子様は布団も浴衣もはだけて大の字だ。ウルちゃんも負けじとさらに見事な大の字を描いている。マイちゃんはまゆのように丸くなっていて、かわいかった。

 昨夜寝る時いなかったキーコちゃんは戻って来ていて、一番姿勢よく綺麗に布団をかぶっていた。


 みんなまだ眠っている。


 いつも教室で見ている顔がみんな目を閉じている。


 普通のことなのに、なんだか不思議だった。



 隣を見ると、フェニーちゃんは雌豹のような寝相で、あたしのほうを向いてニヤニヤしながら寝息を立てていた。

 楽しい夢を見ているんだろうな。


 朝日に照らされて、よだれのラインが綺麗だった。


 長いウェーブした黒髪がキラキラと輝きを浮かべ、前髪が目を隠して少しだけガフンちゃんに戻っていた。


 思わずクスッと笑ってしまいながら、あたしは愛猫の寝顔を見るように、しばらくその寝顔に見とれていた。


 そういえば昨夜、男子部屋からすぐに戻った時、フェニーちゃんがしつこくあたしに何か言っていた。「上様、上様」とか「ししゃも、ししゃも」とか繰り返していたが、もちろん何のことやらわからなかった。笑顔で「ここにお殿様はいないよ」とか「朝ご飯にししゃも、出るといいねー」とか答えてあげておいたが、本多くんに会ったらあれが何を言っていたのか聞いておこう。



 さて、今日は公園で動画の撮影だ。


 日曜日もみんなと楽しく過ごすぞー!






 朝ごはんにししゃもは出なかった。

 普通に塩鮭と海苔、漬け物に味噌汁、ごはん、そして生卵だ。

 フェニーちゃんは生卵が食べられないようで、食事姿がちょっと寂しそうに見えた。


 台湾のご飯が恋しいのかな。


 あたしも外国へ行って味噌汁と卵かけご飯が食べられなくなったら、ちょっとホームシックになってしまうかも。







 あたしの家から公園までは歩いて20分ほどだ。みんなで列になって秋の落ち葉を踏みながら歩いた。


 本多くんは笑いながら口ごもった。昨夜何を言っていたのかとフェニーちゃんに聞いてもらったのだが、どうやら変な期待をされていたようだ。


「『なんですぐに帰って来たのか?』って言ってるよ」


 どうなってほしかったのだろうか。


 うーん。


 男女が同じ布団で寝るなんてあり得んだろう。

 兄妹や、夫婦でもない限り。


 知らんけど。



 それよりあたしはキーコちゃんが気になった。昨夜、あれから谷くんとどこへ行って、何をしていたのか。


 キーコちゃんにダイレクトに聞いてみると、彼女は遠回しに答えてくれた。


昨夜ゆうべさ。有紗ちゃんは凄い才能を持ってるって、私、言ったでしょ?」


 ああ。人を笑顔にするっていう……。


「翔くんもね、やっぱりそういう、凄い才能の持ち主だと思うの。あのお調子者っぷりは、他の人にはないものだよ」


 ああ、確かに。珍しい才能ではある。


「でもそれがひん曲がってるの。あたしも今回、フェニーちゃんに勝手にムカついて、ひん曲がったでしょ? だから、一緒に、持ってる才能を正しく伸ばして行こうみたいなことを、話し合ったの」


「付き合い続けることにしたの?」

 

 あたしが聞くと、キーコちゃんは意味ありげにフフッと笑い、一言だけ呟いた。


「賢い猿を飼うようなものよ」


 それがどういう意味なのか、その時のあたしにはさっぱりわからなかった。それが5年後にあんなことになるとは、まさかまさか、思ってもみなかった。



「でもよかったー。ぴったりサイズで」

 長友裕香ちゃんが満足そうに言う。

「さすがに似合ってるよ、フェニーちゃん」


 長友さんの家は貸衣装屋さんだ。あたしも小さい頃、七五三でお世話になったらしい。


「フッフゥ~!」

 フェニーちゃんが得意げにポーズをとった。格ゲーキャラみたいな、かっこいい、強そうなポーズだ。


 彼女は龍の刺繍の入った青いチャイナドレスに身を包み、手首には黒いリストバンドをつけ、足にはごっつい白いブーツを履いていた!



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