【エッセイ】台湾旅行の思い出 〜 台北編 ① 〜
8月でした。
台湾は温帯〜亜熱帯に属する島国。
連れが「8月、行くぞ」と言い出した時、暑さにも寒さにも非常に弱い私は「やめよう」と言いました。
しかし連れにはどうしても観たいライブが台北であるとのこと。私には暑さを恐れながらもどうしても食べてみたいマンゴーかき氷やあれやこれがあったことで、結局一泊二日の2回目の台湾旅行へ行くこととなりました。
台北郊外の桃園空港に着くと、時間がちょうど1時間戻っていました。昼12時に関西空港を出て、3時間飛行機に乗せられ、着いたら14時。時間を得した気分。
しかし外はどんなだろうな。地獄の猛暑かな。前に台中へ行った時は12月だったのに半袖Tシャツで歩いたし。昨日見た天気予報では台北の予想気温は38.5℃。涼感Tシャツに麦藁帽子にひんやりタオルまで、準備は万端だけど不安いっぱいでエアコンの効いた機内から出ました。
あれ?
大したことないやん。
むしろ日本より涼しいくらい?
ほっとしました。台湾も日本ぐらいじめじめしてると聞いてたのに、意外に爽やか。気分が楽しくなって、新幹線に乗って町へ着くと、早速ご飯を食べに行きました。
まず何を食べたかよく覚えてる。「お腹減ったから何でもいいね」と話し合いながら目についた牛肉麵のお店に飛び込みました。小さくて汚いけどテレビモニターに拳法の老師様みたいなお爺さんが映り、『これが牛肉麵であるッ!』みたいな仰々しい何かのプロモーションビデオみたいなのを延々と流している本格的っぽい店でした。
赤と白が選べたので、せっかくだから2人で1種類ずつ。出て来たのを見て、食べて、いやはや感動でした。日本であれはまず食べられない。
白はまるでお湯のような味のないスープ、赤も色が濃いことの意味がわからないほど味がなくてまるで赤いお湯のようでした。要は赤も白もほぼ変わんない。麵は手打ちというよりいかにも自家製。自分でも小麦粉をこねて切ったら出来そうな感じ。
しかし、牛肉。
なんだ、このデカさ。なんだ、この柔らかさ。
ほろりと崩れて口の中で牛のエキスがじゅわ〜!
牛肉のほうにはしっかりと八角と醤の味つけがされていて、なるほど主役は牛肉で、麵とスープはお粥みたいな考え方なのだな、と勝手に理解してウンウンうなずきました。
お金を払う時に店の頑固そうなおじさんが『どうだ! ウチの牛肉麵は!』みたいな顔で私のほうを見たので、ビクビクしてしまったけどなんとか「しぇ、しぇしぇ〜(謝謝)」と言いました。ごめん、おじさん、面白かったけどもう来ない。
ご飯食べたらマンゴーかき氷! 店選びを間違うと大変な目に遭う(詳しくは知らない)と聞いていたので、予め調べてあった評判のいいお店へ。
しかしここで連れが道に迷う。
「あっれ〜? こっちなはずだけど……」
そう言いながらスマホに予めスクショしてあった地図を見ながら歩き回る、歩き回る。
前回の台中では海外用のWi-Fiをレンタルしていたので迷うことがなかったのですが、「予め地図を保存しときゃWi-Fiいらなくね?」という連れの迷案により、今回はスマホの通信をオフにしていました。
結局自分達が今どこにいるのかわからなくなり、コンビニのフリーWi-Fiを利用して確認したらまったく見当違いの場所にいることがわかり、「戻ろう」という連れの一言で、マンゴーかき氷はなかったことになりました……。
いまだに恨んでる。
日本人に人気の九份には私達はまったく興味がなく、ただひたすらに前回と同じく街を見て歩き回りました。
色んなお店があって、忘れたけど変な日本語の看板もいっぱいあって楽しかったけど、とにかく道に迷いまくり、歩いてる兄ちゃんに連れが道を聞いたらなんだか余計にわからなくなったとのことで、遂にタクシーを拾いました。
今回の旅行のテーマは『節約』です。交通費も宿泊費もなるべく使わず、飛行機代も含めて1人3万円以内で海外旅行を楽しむという目標があったので、このタクシー代は痛かった。とはいえ日本のタクシーよりは遥かに料金お安く、その代わり運転手さんクラクション鳴らしまくり車間距離詰めまくりで「んっ、んー……」とか私はよく咳払いをしましたが、無事にライブ会場へそれで着きました。
連れの目当てのライブは午後3時ぐらいのスタートでした。連れのお気に入りはインディーズの女性シンガーソングライター。日本ではあんまり聴いたことのない、商業的なところがあまりないのに間違いなくプロな、基本のしっかりしていながら親しみやすい透き通るような歌声と、まるでオーケストラみたいにドラマチックなアコースティックギターの弾き語りを堪能し、いい気分になりました。
いやぁ。これならいくらでも付き合うよ。マンゴーかき氷の恨みが少しだけ和らいだ。
日本人に人気の有名なご飯屋さんといえば『鼎泰豐』。でも私も連れもとことんそういうものに興味がない。
鼎泰豐なら日本にもチェーン店があるし、せっかく台湾に来たんだから地元の『小吃店(屋台と店舗の中間みたいな小さなお店)』で食べたい。
何より私にはマンゴーかき氷以上に食べてみたいものがありました。
うんこの臭いがするという噂の台湾人のソウルフード。
そう、臭豆腐!
食の冒険者である私は、ライブでそよ風に吹かれたみたいに気持ち良くなっていた気分を、是非うんこの臭いに浸して喜びたいと心から願っていました。前回の台中では店が軒並みまだ開店前で(台湾て、午後3時オープンのお店がなぜだかとても多いです)食べられなかったので、今回は必ず! と心に決めていました。
しかし『本格的な臭豆腐は日本人には無理』とネットに書いてあるのを見て、腰が引けてしまっていました。『日本人向け』『マイルドな臭豆腐を出すお店』というのをネットで見つけていたので、そのお店へ。
しかしこれがちょっとした大間違い。美味しかったんですよ? 美味しかったんだけど……
全っ然! 臭くない!
ほんのりと『あれ? 近くにトイレあるのかな?』と思わせてくれるだけで、普通に美味しい揚げ豆腐でした。
この後、2度目の台北旅行で本格的な臭豆腐とご対面することになりますが、それとはまったくの別物。
でも美味しくて、一緒に買った大腸麵線(レンゲで食べる『飲む麺類』)がまた嬉しくなるほど美味しくて、にっこにこにはなれました。
ただ、改めて自分は食の変態だということをその時、知りました。
次はいきなり最強レベルの臭豆腐食べるんだ!
心に誓いました。
夜には有名な士林夜市へ。
人、多すぎ。
身動き取れないほど。
食べ物やかわいいアクセサリー、バッグなどを売る屋台がたくさん出ています。
でも……高い!
エリンギ焼いたやつとかが100元とかする(約350円)!
ちなみに着いてすぐに食べた牛肉麵が確か70元、臭豆腐も大腸麵線も40元。
結局食べ物は何も買わず(節約テーマでしたから)、座って落ち着けるお店で甘味を。無念の残るマンゴーかき氷の代わりに、豆花を頂きました。
うーん……でも。
街中のお店で食べたほうがたぶん、もっと美味しいし、安かったと思うよ。
台北には台中みたいな安いホテルがありません。節約テーマだったこともあり、日本にいる間にネットで調べておいたネットカフェに泊まることにしました。日本人観光客の方の多くがここで一泊していると聞いていたので。
ところがこれが行ってみると人でいっぱい。時間帯のせいなのか、空いている席がまったくないとのこと。
仕方なく桃園空港まで行って、空港のベンチで寝ましたよ。
夏なのに、夜は結構寒かった。
連れと身体をくっつけて温め合いながら、
コイツのせいでマンゴーかき氷食べられなかった、
コイツのせいで歩き回らされて足の裏が痛い、痛い……
コイツとは2度と旅行なんかするもんか、
絶対にしないぞ
そう思いながら、
それからほんの4ヶ月後にまた、この連れと台北に旅行することになります。
(続く)




