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ガフンちゃんとあたし 〜 言葉の通じない友達のことをもっと知りたい 〜  作者: しいな ここみ


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19/66

フェニーちゃんの秘密

 今までガフンちゃんと呼んで来た彼女を『フェニーちゃん』に変えるのは違和感があるかなと思っていたら、意外にもしっくり来る。


 顔を知ってるからだな、と思う。


 長い前髪で鼻の頭まで隠して猫背の彼女は確かに『ガフンちゃん』だが、その前髪を退ければたちまち現れる非現実的美少女には『フェニーちゃん』が断然似合うのだ。


「フェニーちゃん」

 あたしは不思議に思っていたことを聞いた。

「フェニーちゃんはなんでそんな髪型してるの? めっちゃ可愛いのに、なんで隠してるの?」


 両親はあたし達を2人にしてくれ、仕事に戻っていた。

 テーブルを挟んでロビーの椅子に座り、2人の間に座ったカクさんが通訳をしてくれる。

 さおりさんがオレンジジュースを2つとカクさんにコーヒーを持って来てくれた。


「パパに言うなって言われてるそうデス」

 カクさんがフェニーちゃんの言葉を、うなずきながら訳してくれる。

「でもアリサさんには話したいそうデス」


 ついにガフンちゃ……フェニーちゃんの秘密が知れる。あたしは彼女が喋るのを見ながら、カクさんが訳しはじめるまでのわずかな時間を、待った。


「私は台湾の芸能界でデビューすることが決まっています」

 フェニーちゃんの声にカクさんの日本語が重なる。

「日本の中学校にいたという経歴があれば、それは売りになります」


「どっしぇー!」

 あたしは思わず声を上げた。

「やっぱりそういう話か」


「言葉が通じないのでどうせ友達なんて出来ないと思ったから、せめてみんなの印象に残らないようにと思って、顔が見えないようにしていました。パパもママも、友達なんて作らなくていいって言ってたから」


「えー」

 あたしは思ったことを正直に言った。

「そんなのもったいないよ。青春の無駄じゃん!」


「それに正直、怖いと思っていました」


「怖い?」


「はい。言葉の通じない、文化の違う中に一人、入り込むのは、正直、怖かったです」


「ちょっとカクさん」

 あたしはカクさんを停止させ、お願いした。

「丁寧語やめて」


「ハイ?」


「ガフ……フェニーちゃんがやたらよそよそしい。女の子言葉で喋って」


「わ、わかりましタ……」


「んで? 怖いから顔を隠してたの?」


「うん。自分を隠せば、誰もあたしに気づかないじゃん? 誰も話しかけて来ないし、あたしも楽だから、やっピー!って」


「ギャルっぽいのやめて」

 あたしはカクさんにお願いしてからフェニーちゃんに聞いた。

「でもあたし達と仲良くなったじゃん。オープンしてくれればいいじゃん?」


「騙してたみたいな気がしたのかしら。なんかね、今さら顔を晒すのは、それこそ怖かったのよ。変装してたみたいな後ろめたさがあったし」


「カマっぽい」

 カクさんにダメ出ししてから、フェニーちゃんに言った。

「気にしないよ。みんな、びっくりするだろうけど、フェニーちゃんと友達になりたがる人は確実に増えるよ」


「パパとママからも言われてるの。無理するなって。人見知りするお前には日本人の友達を作るなんてハードルが高すぎる、目立たないようにしとけって。どうせすぐに帰国するから、日本語も覚えなくていいって」


「え」

 聞き捨てならなかった。

「すぐに……台湾、帰っちゃうの?」


「うん」


「いつ!?」


「わからない。プロダクションの人が決めるから」


「えー……。残念。せっかく仲良くなったのに」


「でもまだしばらくはいると思うから」

 フェニーちゃんは笑顔で言った。

「それまでにクラスのみんなと仲良くなって、台湾で芸能界デビューした時、『日本の中学校生活はとても楽しかった』って言いたい」


「うん! そうして欲しいな」


「実は今でも充分楽しいんだけどね」

 フェニーちゃんは前髪をくりくり弄りながら、言った。

「でも、みんな、本当の私を知らないでしょ?」


「前髪、オープンしようよ」

 あたしはノリノリで提案した。

「明日、かわいい髪型に変えて学校、来なよ」


「うん」

 フェニーちゃんは顔を上げた。前髪に隠れたマンガみたいな大きな目がキラキラしてた。

「そうする」

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― 新着の感想 ―
[一言] カクさんのキャラめっちゃ好き。 扱われ方がちょっと雑なのもたらこ的にグッド。 ギャルっぽくなったのも面白かった
[一言] おおおお!! ガフンちゃんの前髪にはすごい秘密が隠れていたんですね!!(*^。^*) こんな楽しいお話 大好き!!(#^.^#)
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