幽霊の幽子ちゃん
R15はとりあえず保険みたいな感じです。
それでは、どうぞ。
平凡な高校生の『俺』は、ある日……『彼女』に出会うことになった。
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この日は、地元のお祭りに参加していた。
まあ、小さな神社の祭りなんだが、ここらじゃ一番の賑わいだ。
『おい、あんた』
夜の音頭が終わった頃、誰かに話しかけられた。
「はい?」
振り返ると、そこには白い着物を身に纏ったおかっぱの少女が居た。
……あれ、こんな子初めて見たぞ……
『なーに、キョトンとしとる。だぁれも返事してくれんから、寂しかったのだ』
……はい?誰も返事しなかった?
『ああ、あたしゃ幽子と言うんじゃ。幽霊の幽に、子どもの子』
「もしかして、幽霊?」
彼女……『幽子』はそう頷いた。
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色々あるとまずい、と思った俺は神社の裏にまわった。
「あの、幽子さん。……その、どうして現れたりしたんです?確か、幽霊って霊の念が強いと出てくるって。」
『あたしゃ、とっちゃんもかっちゃんも居らんてな。ここの遠い昔の神主に世話になったんじゃ。歳が10の時に病気を患って死んで、幽霊になって……でな、毎年のお祭りが楽しくてずっと見てたんじゃ』
話しかけていたのは、本当に前からみたいだ。
俺が最初に気がついたらしい。
「その、幽子って名乗っているのはどうして?」
『それは……本当の名を知らないから』
幽子は寂しそうに、そう呟いた。
「俺、幽子さんの友達になってもいいかな。」
幽子は驚いた様子を見せた。
なぜ自分からそう言ったのか、具体的な理由は未だに分からない。
でも使命な感じがしたから……。
『ほんと……本当にええんか』
「うん、いいよ。」
『………あ、ありがとう』
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翌日、日曜日。
『なあなあ、昨日のドラマってもの、面白かったなぁ!』
有料動画サイトで、見逃した刑事ドラマを幽子と見ていた。
『犯人、最初に出てきた人やったんやなぁ。気づかなかったわ』
眼をキラキラさせて言う。……意外と可愛い部分があるのだな。
下から、母の呼ぶ声がした。
何事かと思って、降りてみると小包を抱えていた。
「これ、前に応募した懸賞の景品よ。……倍率高かったから、当たらないと思っていたんだけど。」
バラエティ番組で応募した、新型のゲーム機が当たった。
15人の当たりに対して、5000人の応募が来たと前回の放送で見たな。
『なんか、良いことあったん?』
ゲーム機を抱えて部屋に戻ると、幽子が聞いてきた。
「……うん、前に応募した懸賞の景品が当たったんだ。」
『ほぉ、それは良かったなあ』
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それから、さらに日が経った頃。
「……え、婆ちゃんが退院した?」
父からそう聞いた。
住んでいる田舎町から、遠く離れた市の市民病院に入院していた婆ちゃんが退院したみたいだ。
不治の病、みたいな話を聞いていたが……最近になって治ったと言う。
あの子……『幽子』が現れた日から、良いことが続いていった。
そう、あの時までは。
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『………ほな、あんたの命を貰っていくな。』
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【幽霊の幽子】
彼女が視えるのは、死期が近い人間だと言われている。
『良いことが起きる』のは、走馬灯の疑似と言われている。