9 冒険者登録をします
俺はナティアの案内でギルドにやってきていた。
人でいっぱいの中俺はクエストボードに向かった。
ここに目的の依頼が掲載されているという。
「これだよ」
ナティアが依頼を指さす。
そこには確かに依頼があって
聖なる森を攻略するからメンバーを募集したいという旨の文が書かれてあった。
「参加したいな」
聖草というものなら姉さんの視力を戻せるかもしれない。
「なら私が手続きしていい?」
「手続き?うん」
その辺のことは分からないからとりあえず1度やってもらおうかなと思って頷いた。
そうしてナティアが依頼を剥がしてカウンターに向かった。
「これ」
ナティアがそう言って依頼をカウンターに置いた。
それを受け取るのはギルド職員。
「聖なる森の募集ですね」
「うん」
「参加メンバーはどうなさいますか?」
「えーとね。私と私のパーティメンバーと私の彼氏」
「か、彼氏?!」
驚くギルド職員。
どうやらナティアの彼氏も参加するらしい。俺はせいぜい足を引っ張らないようにしないとな。
そう思いながら俺の意識は異世界をさまよっていた。
やっと姉さんの目を治せるかもしれない。
その思いでいっぱいだった。
「ナティアさん?!彼氏なんて出来たんですか?!」
「いるじゃない?!ここに!連れてきたわよ!」
「何処にですか?!横のクール系のイケメンですか?!」
「そうよ!この人が彼氏!」
なんて会話が聞こえている。
ん?横?
俺はナティアの右横に目をやった。
左横は俺だからいるとしたら右横だ。
いたぁ!
片目に眼帯をした悪そうな男がいた。
「ようナティア」
その男がナティアに話しかける。
どうやら俺はお邪魔なようだな。
「じゃあな、ナティア」
俺はそう言って離れようとしたけど
「ちょ、ちょっとどこ行くのよ?!ロード?!」
俺の袖を掴んで離さないナティア。
「何なんだよ?彼氏がいるのに俺が隣にいちゃまずいだろ」
「こ、このデカいのは彼氏じゃないから!これはないから!!絶対ないから!!!」
なんだこのデカいのは違うらしい。なら誰が彼氏なんだ、とも思うけど、デカいのが口を開いた。
「俺はメイガス。お前らが申し込もうとしている依頼の依頼主。つまり今回の作戦のリーダーって訳だ。お前は?」
と、自分の事を語ってくれたメイガス。
「ロード」
「ロード、か」
俺を舐めるような目で観察するメイガス。
「ジョブは?」
「回復術士」
俺はそっと答えた。
すると
「はははは!回復術士、だぁ?」
大笑いを始めたメイガスだったがすぐ様ドスを利かせた声を出す。
「帰んな。ここはお前みたいな子供が来るような場所じゃねぇんだよ。お医者さんごっこがしてぇなら公園でやってろ」
俺を追い払うようにシッシッと手を振るメイガスだが
「お願いメイガス。参加を認めて欲しい」
ナティアがメイガスにお願いしていた。
「あぁん?」
メイガスは取り付く島もないといった感じの対応だった。
「いくらナティアの頼みでも無理なもんは無理だな。回復術士?そんなものに命を預けられるかよ」
正直反応としては当たり前のものだし予想していたことだった。
回復術士の扱いなどこんなものだ。
「だが、そうだな。一応聞いてやる。お前冒険者ランクは?」
その問いかけに首を傾げた。
「冒険者ランクはない」
「お前ランクすらないのかよ。じゃあな」
メイガスは鼻で笑って去っていった。
俺たちは受付嬢に目を戻した。冒険者にとってランクというのは実力の指標。
それがないならこうなるのは分かり切っていたがここまでとは。
「ギルドに登録しますか?登録すればギルドの援助を受けたりランクを上げたりすることが出来ます」
頷く。
「分かりました。では簡単にテストをさせていただきますね。希望ジョブは?」
「回復術士」
俺は即答した。
俺にはこれしかないのだから。
「か、回復術士ですか」
「あぁ。俺は回復術士になりたい」
「失礼ですが回復術士というものは今はもうメジャーではなく。昔はあったんですけどね」
そう言われてしまった。
「とりあえずテストに入りましょうか。ロードさんの回復魔法のレベルを見たいので」
そう言った彼女はこう続ける。
「まず回復魔法の測定から入ります。こちらで対象を用意しますので回復魔法を使ってください」
彼女がそう言った時だった。
「た、大変!」
ギルドの扉がバーンと開け放たれた。
そしてとあるものが運び込まれる。
それはここにいた冒険者達の声で正体が判明する。
「や、やべぇぞ!あれ!」
「あれってメイガスさんとこの偵察隊の子だろ?!」
苦しそうな顔をした少女だった。
「お、おい大丈夫か?!」
「り、リーダー……」
か細い声でそう答える少女。
なるほどな。あれが対象、という訳か。
俺は歩き始めた。
周りが叫んでいる。
やることはそれだけだった。
「退け。メイガス」
俺は短く言い放ち少女が寝かされている机に近付いた。
「お、おめぇは……」
俺に目をやるメイガス。
「俺の仕事だよこれは」
そう言い残した俺だが
「む、無理だろアレは……」
「も、もう助からない。あんなのもう助かるわけないだろ」
と、そんな声が聞こえてくる。
こういうネガティブな発言をして挑戦者のリズムを崩すというのはよくある手法だ。
いつも万全の状態で治療できるものじゃない。だからこそ実戦に近いプレッシャーを与える。
しかしそんな物分かっているし俺には効かない。
「もうここまできたんなら治せる訳ねぇだろ!ニーナから離れろ!ガキのお医者さんごっこじゃねぇんだぞ?!」
メイガスもそう言ってくるけど無視する。
別に無視したってどうってことはない。ただの演出だ。
俺は治療するために少女に目をやった。
現状を確認するためだ。俺は回復術士だ、死んでいないなら大体は治せる。
───────
名前:ニーナ
状態:瀕死
死の毒
───────
確認を終える。
少女が呟いた。
「た、助けて……死にたくない……」
それにしてもよく出来たテストだな。
ここまで実戦に近付けるなんて。流石ギルドだ。
そう思っていたらメイガスが俺を突き飛ばす。
「ニーナに最期の言葉を残させろ!もう死ぬのは避けられないんだ!ここから生き延びたやつはいねぇ!何百年と続いてきた光景だが、ただの1人もいない!ここから回復した奴は───0だ!希望を持たせようとすんじゃねぇよガキが!」
ふむ、ギルドのテストは凄い。
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