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6 パーティ勧誘の嵐でした

 夜になって俺はリエルと共に酒場に来ていた。

 要件はやはり俺の勧誘の件。


「どうだろうか?私たちのパーティに入ってくれないか?」


 うーん。そうは言われてもな。

 この人には相談に乗ってもらった恩もあるし断りにくい。


「悪いけど今のところはもう少し色々と考えたいと思ってる」


 だからこうやって先延ばしにするような言葉しか上手く出てこなかった。


「そうか。いい返事を待ちたいところだな」

「そうしてもらえると助かる」


 そう返して俺は立ち上がろうとしたけどガッと腕を掴んで立たせてくれないリエル。


「まだ帰るのは早いぞ?奢りだよ」


 そう言って俺の前に酒を差し出してくる。


「悪いが気分じゃない」

「いいじゃないかたまには」

「なら、少しだけ」


 押しに弱いのか?俺は。

 そう思いながら少し口に含む。


 そんなこんなで少し酔ってきた頃だった。


「パーティに入らないか?」

「もう少し時間をくれ」

「ちっ……」


 舌打ちしたぞこの人。


「気にしないでくれ。酔わせてテンション上がったところで頷かせて言質取ったもん!とかするつもりないから」


 うわぁ……。

 そんなこと考えてたのか。


「勧誘してくれるのは嬉しいけどさ」


 でも改めて伝えておくことにした。


「俺は確かな目標があって冒険したい。多分それは皆とは違うだろう」


 多くの人は自分の私利私欲のために冒険者を目指す。

 でも、俺は違う。ただ姉さんにもう一度光を見せたいだけだ。


「だから、今のところはやめておく。きっと足並みが合わないと思うから」


 と、それらしいことを言ってはいるけど、俺は1人で動きたいだけだ。

 だからこれ以上勧誘されても困るんだが。もうほっといてくれ。


「分かった。そういうことなら私達がロードに合わせよう」


 そう言ってきたので驚く。

 それは予想していなかった。


「え?」

「状況によっては私達を使ってくれてもいい。その条件でパーティに入って欲しい」

「……」


 困るなぁ。

 俺一人でいる方が好きだからソロで動きたいんだけど。

 そうして困っていると


「はぁぁぁぁぁ……」


 盛大に溜息を吐きながら酒場に入ってきた人物がいた。

 その人物は昨日酒場を出た俺がぶつかった人物だった。


「何処探しても見つからなーい」


 ボヤきながら入ってくるとカウンターに向かってそのまま注文し始めた。

 その言葉を聞いて俺は立ち上がった。

 きっとあの本を探してるんだろう。

 

「どうした?ロード?」

「少し用事がな」


 リエルにそう答えて俺は少女に近付いた。


「はぁぁぁぁぁぁ……」


 溜息を吐いている少女。


「もう、まじ最悪なんですけどー。せっかく声かけようと思ったのにあの堅物が先に口説いちゃってるし。オマケに【トレジャー】は無くすし」


 トレジャー。

 ダンジョンに眠るレアなアイテムや宝物のことか。

 どうやら無くしたらしい。


「こればっかりはスピード勝負じゃないですかナティアさん」

「そうだけどさー」


 ナティアと呼ばれた少女に俺は声をかける。


「あのさ」

「何ー?ナンパなら間に合ってるから」


 こっちも見ずにそう答えられる。

 眼中にすらないって感じか?

 言うじゃないか。


「誰がお前みたいな女をナンパするんだ?」

「何ですって?!」


 やっと反応したらしい。

 俺の方を見てそう叫んでくるナティア。


「やっとマトモに話してくれるか?」

「あっ」


 釣られた事に気付いたのか少しだけ恥ずかしそうにしていたがそれも一瞬


「ロ、ロードじゃない?!どうしてここに?!」

「私が勧誘していたからだが」


 俺が答える前に俺の横にいたリエルがそう答えた。

 やけに高圧的な感じで、それに対して


「きぃぃぃぃ!!!先を越したからって自信ありげじゃない!」

「貴様らのような盗賊に私が遅れを取るわけもないだろう」


 話が分からないな。

 そう思っていたらナティアが俺に向かって口を開いた。


「見た?!ロード!この女ってばこんな奴なのよ?!今からそんな女のパーティ抜けて私たちのパーティにこない?!」


 って!いきなりパーティ勧誘?!

 そもそも俺がリエルのパーティに入っていると思っているのか?

 とりあえず今までのことはナティアに説明した。


「なーんだ。振られてやんの。プッ」


 小馬鹿にしたようにリエルを見て笑うナティア。


「ロードはしばらくした後に私のパーティに入る予定だ」

「その前に私のパーティに入れるモーン」


 そう言ってナティアは俺の背中に手を回して飛びついてきた。


「ロードの戦い見てたよ!凄いかっこよかった!良かったらパーティに入らない?入ってくれたらこの可愛い私が結婚してあげる!」

「その貧相な体でするのが情けない色仕掛けか、哀れなものだ」


 それを見てリエルは冷静な顔でそんなことを言っていた。


「うるさいわね!こんなことしてでもロードは欲しいのよ!かっこいいし!」


 そう答えて離れるナティア。

 たしかに。なんだろう。

 普通ならば何か思うような展開なのかもしれないけど俺の頭には何も無かった。

 ところで流れを変えよう。


「今日はこれを渡しに来ただけだ」


 俺はそう言って昨日ナティアが落とした本を渡した。


「あ、トレジャー。拾ってくれてたんだ」

「これトレジャーだったのか」


 意外だ。

 何の本なのか気にはなっていたけどトレジャーだったらしい。


「これ、ロードにあげるよ」


 そう言って突き返してくるナティア。


「俺に?」

「うん、何の価値もないって言われたし。その代わりぃパーティにさ」

「その件だが今は他にやりたいことがあるからまた今度な」


 と、そんな返事しか出来ない俺だった。

 しかしそんな返事しか返さない俺を取り合ってナティアとリエルが言い合っている。

 はぁ……先が思いやられるな。

 そう思っていたら


「あ、あの!ロードさん!是非ウチのパーティも考えてください!」

「私のパーティもお願いします!」

「見てましたよ試合!私のパーティも是非考えてください!あの魔法は素晴らしかったです!」


 ワラワラと冒険者達が集まってきていた。

 何人くらいいるんだろう?10人くらいか?

 みんな自分のパーティの何処がすごい!とかパーティのアピールをしてくる。

 はぁ……。


 悪いけどさ。

 どのパーティにも入るつもりはないんだ。ほんとに。


 1人にさせてくれ。好きにさせてくれ。ほっといて欲しい。

 しかしそんな俺の願いも叶わずに遅くまで勧誘されていた。


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