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 俺は翌日いつも通りに登校していた。

 決闘当日だけあって話は広まっていた。

 

「おいおい、クズがタケルさんと決闘するらしいぜ」

「回復術士が、だろ?笑えるわ。他人を使い潰す事しか能がねぇクズなのにな」

「今回はタイマンらしいぜ?使い潰す他人がいねぇのにどうやって戦うんだろうな」


 そんな会話が聞こえてくる。

 回復術士は当然だがパーティ全体の回復を担っていた。

 それ専門のジョブだから。


 しかし当然自身の戦闘能力はそこまで高くないせいで他人の力に依存するから寄生虫とまで呼ばれることもある。

 そんな背景もあるし、何より各々が回復魔法やアイテムを使用した方が効率がいいということもあり回復術士という専門のジョブは廃れた。というのが1番的な認識だ。


「いいさ、勝手に言ってろ」


 俺はそう呟いた。

 確かに俺が回復術士になった場合やろうとしていることは傷付いた他人を回復させて勝てるまで戦ってもらうことだろう。

 その行いがクズだと言われようと何だっていい。


「俺は姉さんのために進むだけだ」


 もう一度決意をして俺は指示されている場所に向かうことにした。

 今日の決闘は小さい闘技場で行われることになっている。


 そうして俺が向かっていると対面から見覚えのある人間が歩いてきていた。

 タケルだった。


「尻尾巻いて逃げるかと思ったぜ」


 鼻で笑いながら口にするタケル。


「逃げるかよ」

「あっそ。なら大勢の前で恥かくんだな」


 俺は何も答えずにタケルに目をやっていた。

 すると奴が口を開いた。


「お前の冒険者生命ここで終わらせてやるよ。俺の輝かしい人生の礎になるといい」

「俺は諦めない。姉さんを助けるまで」

「ふん。あんな女のためにそこまでやるとはな。目障りだ。2人まとめて死ねよ」


 それとも、と付け加えるタケル。


「失明だけじゃなくあの時2人まとめて死んでおけば良かったのにな」

「……」

「おっと。怒ったか?」


 はははと笑ってタケルは俺を少し見てから先に闘技場へと入っていった。

 それを見送ってから俺も同じように入っていく。



 決闘の開始前だ。

 フィールドに俺とタケルが向かい合って立っていた。


「タケルー!!やっちまえー!!!」

「タケル様ーー!!!!!」


 観客席からタケルを応援する声ばかり聞こえる。

 俺とは違ってタケルはこの学園のカーストトップだ。

 俺の事を特に何とも思っていない奴らもどちらを応援するか、となるとタケルに決まっている。

 だからこれだけ扱いに差が出る。


「負けた時の言い訳は決まったか?」


 タケルがニヤニヤしながら聞いてくるが俺が答えないでいると


「回復魔法しか使えないからしょうがないってか?ははは」


 自分で答えを出していた。

 だが俺も負けるつもりは無い。


 そうやっていると


「まだ、勝つつもりなのか?お前」


 不機嫌そうな顔をしているタケル。


「毎度毎度そうなんだよ。お前は。弱いくせに自分が負けないと思ってる。雑魚のくせにさ」


 初めから負けると思って戦うわけないだろ。

 それに俺は最後までギリギリまで勝ち筋を探しているだけだ。


「目障りなんだよ。ゴキブリみたいに俺の前で息しやがって。殺してやるよ」


 スルりと剣を抜いたタケル。

 それを見て審判が声を上げた。


「今から御前試合を開始する!対戦相手はこの学園が誇る最強の剣士タケル!対するは回復魔法に特化した最弱の男ロード!さぁ、戦う前から結果は見えていますが?!2人のステータスを見ていきましょう!」


 簡単に説明した後に浮かび上がるウィンドウ。

 そこに俺たちのステータスが表示されていた。


───────

名前:ロード

レベル:20

体力:470

攻撃力:45

防御力:45

魔力:68

───────

───────

名前:タケル

レベル:25

体力:520

攻撃力:53

防御力:51

魔力:50

───────


「さぁ!試合開始!」


 そうして試合が始まった。


「おらぁ!」


 剣士であるタケルが斬りかかってくる。

 

「っ!」


 俺にヒット!

 80ダメージ!

 

「くそ!」


 体力:470→390


「おらおら!」


 続いてのタケルの2連撃を俺はガードして耐えることしか出来ない。


「そらよ!」


 俺がガードしているところを蹴り飛ばすタケル。


 体力は370になっていた。

 

「ヒール!」


 すぐさま俺はヒールを使い回復しようとしたけどタケルの攻撃で中断するしかなかった。

 そのためすこし回復量が下がった。


 体力:370→430


 ダメだ。やはり焼け石に水か。

 回復が間に合わない。


 俺はこの状況で回復術士が弱いとされている理由を改めて理解した。


「おらぁ!」


 そこから俺はタケルに一方的にやられた。

 そして


 俺の体力は残り10になっていた。

 対するタケルの体力は150。


 そこに審判の実況が聞こえる。


「おおっと?!やはり回復術士では剣士には勝てないのか?!やはり回復術士は回復術士!雑魚ジョブなのかもしれない!」


 聞こえてくる観客の声。


「やっちまえータケルー!!!」

「止めをさせ!タケル!!!!」


 そんな声が聞こえてくる中チャキリと俺に剣を向けるタケル。


「不思議だな。お前この状況でも顔に絶望の色がない」


 俺は何も答えない。

 こんなもの予定のうちだ。


 こいつと殴りあって勝てないのなんて分かってる。

 だから、さっき攻撃を受けながら魔法リジェネを使った。


「まだ勝ちを狙っているのか?」

「当然」


 ニヤリと口を歪める。

 現に今俺の視界の端では体力が回復しているのが目に見えていた。

 わずか2秒間でこの回復量だ。


 10→210。


 しかしこの体力は周りの奴らには見えない。

 俺の体力が回復しているのは俺しか知らない。


 ふむ。それにしてもここまで遊んでやっていたことにタケルは気付いていないらしい。


「俺がいつ負けると答えた」

「はっ。負け惜しみもそろそろやめろよ?この状況どうやって勝つんだよ」

「俺にはここから勝てる未来が見えている」

「はぁ?ボケたか?どうやって勝つんだよ。お前の体力はかなり削ってあるそろそろ瀕死状態だろ」


 俺が回復術士でなければもう負けは確定している状況だろう。相打ちしたとしても最悪向こうが振るのが遅れたとしても残っている体力の差で俺が負けるのは目に見えている。


「こうやるに決まってんだろ」


 俺は剣を振った。

 タケルに50ダメージ!


 体力:150→100

 しかし


「そらよ!」


 タケルも振ってきた。

 それは文字通りトドメの一撃。


 本来であればの話だけど。


「つまらん勝負だったな」


 そう言って去っていこうとするタケルの背後から


「まだ終わってないぞ」

「な、何?!」


 斬り掛かる。

 予想外の反撃だったのか対応が追いつかないタケルに2連撃!

 グサ!グサッ!


「ば、馬鹿な……何故まだ立てる!」


 パタリと後ろ向きで倒れたタケル。

 俺の視界の端ではここ数秒での俺の体力の変動が見えていた。


 体力:210→470


 結果的に俺は体力を減らしていない状態で戦闘に勝利。


「な、何が起きた?今?!」

「な、何よ?!今のは?!あいつヒールなんて使ってなかったじゃない?!そもそも回復量400以上って何?!Sランク冒険者でもあんな短時間であんなに回復しないわよ!!」


 観客席からそんな声が聞こえてきた。


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