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21 あれ、変なこと言いましたか?

 俺達は適当な出店で適当な食べ物を買って椅子に座っていた。


「はふーはふー」


 熱を冷ましながら食べ物を口に入れる少女。


「これだけの金だ。飯が食いたかった訳じゃないんだろう」


 俺の手元にはまだ袋が残っている。


「うん」


 コクリと頷く少女。


「それより、どうして分かったの?私がスったって。今まで誰にも気付かれなかったんだけど」

「挙動を見ていれば大体分かる」


 シーン。

 誰も口を開かない。


「あれ?何か変なこと言ったか?」


 そう聞くと


「いや!分かんねぇよ!俺は全然分かんなかったぜ!」


 叫んだのはメイガスだった。


「へぇ、お兄ちゃん凄い!」


 少女は軽く笑った。そんな少女に言う。


「そこのおっさんはどうかは知らないが俺は信頼していい」

「おいおい!相棒何だよ!俺は信頼出来ねぇってか?!」

「この子からすればそうだろ」

 

 簡単に言って不満げな顔のメイガスは置いておく。


「俺はロード」

「ルーズ」


 そう名乗ってくれた。


「そのバンダナ外してみてくれ」

「うん」


 バンダナを外したルーズ。

 その下には凄い光景があった。


「ひでぇ、角を切り取られてやがる」

「ぐすっ」


 メイガスはそれを見て呟きルーズは涙を零し始めた。

 角は根元のから先がなかった。


「鬼人族の角ってのは古くから色んな素材に使えるって言われててな。こうやって狩るクズ野郎がいやかんだよ」


 メイガスが怒りを顕にしている。

 まぁその辺りはどうだっていいが。


 今のこの状況で角を切り取られたなんて鬼人族に知られたらどうなるか分からない。


 しかしこれはチャンスでもあるか。

 俺は角の切断面に触れた。


「あだっ!」


 感覚は生きているらしい。


「痛い」

「悪い。でも多分治せるな」


 こうやって切断されたばかりという話なら治せる。


「な、治せる?!」


 メイガスがバカでかい声で叫ぶ。


「な、治せるわけねぇだろ?!1度折れたらもう生えないって言われてんだぞ?!」


 なんて事を言っているが言わせておくことにした。


「ヒール」


 俺は少女に合計30回ほどヒールを使った。するとメキメキメキメキ。

 物凄い速さで角が回復した。


「は、はぁぁぁぁぁぁぁ?!!!!!」


 それを見たメイガスが叫んだ。


「お、おい!何だよ!これ!どうやったんだよ!」

「え?普通のヒールだが」

「何処が普通なんだよ?!俺が治せねぇって言ったばっかだろ?!相変わらずすげぇな!相棒!」


 何やら言っているおっさんを放置して俺は少女に聞く。


「機能なんかは問題なさそうか?」


 この角がどういう機能なのかは知らないけど聞いておく。


「うん。問題ないみたい。というか前の角よりいいかも」

「そうか」


 俺は全く角の効果を知らないけどどうやらいいらしい。


「ありがとうロード。横の髭のおっさんと違って凄いし優しい!」

「あぁ?!何が髭のおっさんだ!」


 この子がいれば明日の鬼人族との接触は上手くいくだろう。

 切り取られた角を俺が治した。それを証言してくれるだけで向こうの印象は変わるはずだし。


 俺はその後ルーズがお金を返したいというので付き合っていた。

 そうして最後の1件。鑑定士だった。


「ごめんなさい!」


 謝るルーズ。


「返してくれたんだからそれ以上は何も言わないよ。それにしたって私は鑑定眼Sなんだがなぁ、それでも気付かなかった。君のスリの技術はすごいよ。この私から奪うなんて」


 逆にルーズを褒めている鑑定士。

 それから俺を見た。


「ところでそんな素晴らしいスリを見破ったそこの更に素晴らしい鑑定眼を持った君。私の店で働かないか?君ならこの世界1の鑑定士になれるぞ!」

「お断りだ」




 ルーズにはフードが付いていて角が見えにくい服を渡した。

 そうしてギルドに戻ってきた俺達。


 今日は付き合えと言われてメイガス隣に腰掛けている。ナティア達も一緒だ。

 ちなみに俺の左隣はメイガスで右隣はルーズ。

 ナティアは凄く不満そうだが訳は話してある。


 ルーズは大事な材料だから下手に野放しにして面倒な事にしたくない。

 そうしてメイガス達と何気ない話をしていた時だった。


「あ、あのメイガスの兄貴っすよね」


 1人の冒険者が近付いてきた。


「何だ?」

「あの俺を兄貴のクランに加えて欲しくて」


 クラン。パーティがより大きくなったものか。

 話には聞いていたけど本当にクランをまとめているらしい。


「ほう!俺のクランにか?!」

「えぇ。俺はランクCの冒険者っす。是非面接をして欲しく」


 頭を下げる男。


「俺に命を預ける覚悟はあるんだろうな?」

「は、は、は、は、はい!」


 必死に答えた男だったが


「なしだな」

「え?」


 男は呆然としていた。


「何だ?答えは出した。もう用はないぞ」

「す、すいやせん」


 頭を下げて去っていく男。

 仲間だろうか?と悔しい、という話をしていた。


「メイガス、面接くらいしてやっても良かったんじゃないのか?」


 リエルが口を開いた。


「面接してどうすんだよ?俺は断るぞあいつは」


 そう言いながらジョッキに注がれた酒を口に入れるメイガス。


「何も見ていないのにか?もしかして凄いやつかも」

「お前がしているのは冒険者ごっこか?騎士様」

「なっ」


 珍しくメイガスが真面目な顔をした。

 あの時と同じだ、ニーナが運ばれてきた時と同じ時の顔だ。


「俺は冒険者ごっこをしているつもりはない。ごっこ遊びがしたきゃ公園行って砂場でドラゴンでも作って倒しとけ」

「愚弄するのか?」


 立ち上がろうとしたリエルを俺は止めた。


「ロード?」

「他人のやり方に口を出すな」

「しかし、こいつは普段から駆け出し冒険者を軽くいびったりしてるんだぞ!それで挫折してしまう冒険者もいるんだぞ」

「それでも、だ。座れ」


 そう言って座らせた。


「ちなみに相棒は何故断ったか分かるか?相棒はよく他人を観察してるし分かるんじゃねぇか」


 全く分かりません。

 俺はあなたのような髭のゴリラではないので分かるはずもありません。


 しかしここで俺が何も答えないとなるとまたリエルが騒ぎ出しそうだ。

 それらしいことを口にしておこうか。


「さっきの男終始下手に出ていたな」


 メイガスは満更でもなさそうな顔だ。

 俺の考えは当たっているのかもしれない。


「自分で自分は格下ですと言ってるようなものだ。でも冒険者に上も下もない。だからあそこまで下手に出る必要はない」

「分かってるじゃねぇか相棒。流石だな」


 どうやら合っていたらしい。


「そういうことだ。俺相手に下に出てどうすんだ?モンスター相手にもへこへこ頭下げんのか?違ぇだろ?冒険者ならもっと胸貼らんかいってことだ。がはは」


 モンスターに頭を下げている冒険者を想像した。

 笑えるな。


「そういうことか」


 納得したようなリエル。


「お前高ランクの冒険者で他の冒険者に頭下げてるやつ見た事ねぇだろ?見ろよ相棒を!誰相手にも下に出ねぇ!すげぇやつだ!俺はこんな堂々とした奴を他に見たことがねぇ!なかなかできることじゃねぇよ?!」


 別にそこまで考えてそんな態度を取っていた訳では無いけど。


 そんなこんなで時間が過ぎていくのだった。

 さて鬼人達との関係はどうなるだろうか。


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