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19 【タケル視点】クズ過ぎて周りに誰もいなくなった

SIDEタケル


「クダラの進捗はどうだ」


 タケルは学園長室にて学園長に問いかけていた。


「彼の実力なら心配はしなくてもいいだろう。君の腕を治す聖草程度は持って帰れるはずだ」

「そりゃ、そうだ。持って帰れないなら何のために大金を使ったのか分からない」


 二人ともクダラが失敗したことはまだ知らない。

 ドカッとソファに座り直すタケル。


「ロードがいない今我が学園のトップは君だタケル」

「あいつがいても俺がトップだよ!」


 タケルは立ち上がって吠えた。


「現実を見たまえ。ロードのところにはSランクパーティからいくつも勧誘があったらしいが、君には誰も勧誘に来ていないのだろう?」

「うぐっ、そ、それは」


 本当は決闘でロードをボコボコにしてその試合を見た冒険者から勧誘されて華々しい人生を歩く予定だった。

 しかし、現実は真逆だった。


「だが、それももう終わりだ!クダラは強いと聞いた。ロードの1人や2人ぶっ殺せるはずだ」


 そうなれば自分に勧誘が来ると思っているタケル。

 だからこそロードの排除をクダラに頼んだのだが


「俺が1位じゃないから何なんだ。俺より上のやつ全員ぶっ殺せば俺が1位になれるだろ」


 その言葉に学園長も呆れていた。

 しかしそれを否定するつもりもなかった。


 ここでやる気をなくされては学園を抜けられるかもしれない。


「俺はずっとそうしてきた。あいつの姉もだよ」


 語り出すタケル。


「知ってるだろ?あいつの姉貴が天才剣士って呼ばれてるの」

「あぁ」


 盲目の天才剣士。

 知る人ぞ知る人物だった。


「あいつを盲目にしたのは俺だ。俺より強いやつなんていらないんだよ」


 幼い頃からそんな思考だったタケルは悪魔的な考えを思いついた。


「俺はあいつのせいで故郷ではずっと2位だった。あいつには勝てなかった。だから殺そうと思った。あいつがいなけりゃ俺が1位になれるからな」


 首を横に振る学園長。

 流石に呆れている様子だ。


「簡単だったよ。ロードを煽ればあいつはスグ顔を赤くしてダンジョンに向かっていった。それを追いかけて行った姉貴。計画は完璧だった。あそこでアイツらが死ねばそれでよかった。でもロードはかすり傷で、姉は失明だけで済んじまった」

「……」


 余りのクズっぷりに学園長ですら言葉を失っていた。

 この世に幼い子供の時にここまでゲスな事が出来るやつがいるのか、と正気を疑っていた。


「だが俺は1位になることができた。天才剣士、あいつでも見えていなければロクに剣を振ることも出来なくなってたからな。剣の刀身を持って怪我したこともあったな。あの時は笑っちまったぜ」


 これ以上この外道の話を一方的に聞いていたら頭がおかしくなりそうだと思った学園長は聞き返す。


「その事をロードは知っているのか?」

「さぁな?勘づいてるかもな。だが、俺の何が悪い?俺は何もしていない。勝手にダンジョンに行って勝手に失明しただけだろ。事故だよ、俺は悪くねぇ」

「ところで腕の調子はどうだ?」


 外道の話を聞いていられなくなってきた学園長が腕の調子を訊ねた。


「あぁ、ウジが涌いてきたな」


 そう言っているタケルの腕の傷口には確かにウジが涌いている。


「しかし聖草はこういう症状も治すと聞く。だからもうじきの辛抱だ」

「そうか。頑張りたまえよ君は我が学園の誇りだからな」

「おう。任せとけ」


 そう言って立ち上がろうとしたタケルを引き止める学園長。


「ところで何故ロードをパーティに入れていたんだ」

「いつでも虐めれるようにだよ」


 予想外の理由に呆然とタケルを見つめる学園長。


「俺の好きな時に殴って蹴れるように。あと面倒臭い雑用は全部押し付けるために。あいつを虐めてる瞬間が1番楽しかったなぁ。何も言わないけど痛そうな顔をするんだもん」


 その後もタケルは語り続けた。

 いかにして自分はロードを虐めてきたか。


「でもさぁあんまりにも弱くて流石に要らなくなったんだわな。なら最後の仕事を任せようと思ったんだよ。俺に盛大に負けて俺の踏み台になるっていうさ、なのにそれが何だ今の現実は」

「……」


 学園長はただ首を振るだけだった。

 やってきた事が自分に返ってきただけだろとしか思えなくなっていた。


 冒険者は比較的クズほど大物になりやすい職だがここまでのは学園長も見たことがない。

 

「それにしてもマーズが奪われてるって気付いた時のあいつの顔はサイコーだったな。あいつの泣きそうな顔なんて初めて見たかもしれないし」


 あー、それでよーと続けるタケル。


 しかし学園長が立ち上がった。


「悪いがもうこれ以上は聞いてられない」

「何なんだよ」

「お前ほどのクズは初めて見たよタケル」

「あー?俺がクズ?何処がだよ」


 その質問には答えずに学園長はタケルを廊下にたたき出した。


「何なんだよ。あいつ」


 扉を見て愚痴って廊下を歩いていた


「よう」


 パーティメンバーの生徒に出会ったので声をかけるタケル。

 しかし無視される。


「おい、俺様が声をかけてるんだよ」


 タケルは残った方の腕でそいつの肩に手をかけた。


「何なんだよ」


 それでやっと振り向く。


「ロードの抜けた分を補充しないといけない」

「あっそ。俺も抜ける。頑張って後3人探してくれ」

「は?抜ける?何言ってんだお前。てか3人ってなんだよ。マーズ俺お前で残り一人なのに何でいきなり3人なんだよ」

「マーズももう抜けたよ」


 生徒が言い放った。

 その一言でタケルは脳天に電撃が落ちたような感覚に陥る。


「お、おい?」

「マーズから話は聞いた。もう俺にも関わらないでくれ。これから俺もお前を無視する。気分悪いんだよお前といると。何もしてないのにロードは虐めるし。ロードと付き合ってたマーズに馴れ馴れしかったし」


 そう言うと歩き出したがそれでも引き止めるタケル。


「どういうことだよ?」


 バキッ!

 タケルは渾身の力で殴られて体が吹っ飛んだ。


 吹き飛ばされたタケルが生徒を見上げた。


「お前といると虫唾が走るんだよ腐れ外道が。さっさと死ね。ゴブリンの餌にでもなったらどうだ?」


 そうまで罵倒した後さらに続くのは希望のない言葉だった。


「それからもうみんな知ってるぞお前の本性。言いふらしてる奴がいる。お前は正真正銘のクソ野郎だ、ってさ」


 そう言って彼は今度こそタケルから目を逸らし走っていった。


「く、腐れ外道?俺が?」


 その後も彼は他の生徒たちに話しかけていた。


「おい、この俺様のパーティに入る権利をくれてやる。光栄に思えよ」


 タケルはパーティ勧誘を始めた。


「まだ生きてたんだお前。入るわけないだろ」


「入ってください、じゃないのか?まぁ頼まれたところで入るわけもないけどさ」


「あーあ、何でお前が残っててロードは消えたんだろ。逆ならみんな幸せだったのになー」


「俺に話しかけるなよ。とっとと死ねクソ野郎。外道が移る」


「パーティに入れ、だ?ロードの代わりにもう一本もいでやろうか??ゴミクズ野郎が」


「息くさいから学園に来ないでくれる?早く裸でダンジョン行って死んでね」


 しかし誰もタケルとマトモに話してはくれなかったどころか一方的に罵声を浴びせられただけだった。


「な、何で、どうして、誰も話してくれないんだ?」



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