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17 逃げ場はありません!

 俺たちは転移結晶で戻ってきて直ぐにギルドまで来ていた。

 中から聞こえる声に答えながら入ったナティア。


「勝手に殺さないでよ」


 俺はと言うと無言で入った。

 そこに


「ロ、ロード様!信じておりました!」


 ニーナが飛び込んできた。


「なっ!何だ!どうなってる!何故お前らがここに!!!お前らの向かったのはエリア3だろ?!」


 酷く動揺するクダラの近くに歩くナティア。


「何?生きてたら都合悪かった?」


 慌てて訂正するクダラ。


「いやいや!嬉しいんだよお前らが生きててくれて!」

「へぇ」


 ナティアが怪訝な目で見ている。

 クダラの方はとまだ切り抜けられるつもりでいるらしい。


 まぁ、俺が先手を打っていなければ逃げきれただろうが。

 俺はニーナに話しかけた段階でこいつがほぼ黒だと思っていた。


 あんな混乱させるようなことを口にしていたし何らかのアクションを起こすだろうということも。


「ほ、ほんとに戻ってきてくれてよかったよ!ロードも!」


 俺にそう言って来る男にナティアが性格の悪そうな笑みを浮かべた。


「それより聞こえてたけど土下座するんじゃないの?見せてよー土下座」


 顔が歪むほど唇を噛み締めるクダラ。

 それから


「こ、この度はあなた方の力を見くびったことお詫び申し上げます。私の目が節穴でした」

「ぷっ、見た?ロード。この土下座面白すぎ。ほらほらー、もっと顔を床に擦り付けなよ。グリグリーって。馬鹿は私でした脳みそZランクは私でした。ごめんなさい皆様って」


 笑っているナティア。


「ほらー顔が汚れちゃったねぇ。モップで綺麗にしてあげるー。ごしごしー。あ、ごめーん余計汚れちゃうかなぁ?」


 ナティアは何処かから持ってきたモップで顔を叩く笑顔だった。

 反対に顔を思いっきり歪ませているクダラ。


 いい気味だ。

 それを見て俺はこのギルド内に聞こえるくらいの声で口を開く。

 

「皆には心配をかけたかもしれないな」

「おうよ!相棒!心配したに決まってんだろ」


 メイガスがそう言ってくれる。


「そうですよ!心配しましたよ!ロードさん!」

「貴方に救われたんだ!こんどは貴方を救おうって皆で相談してたんですよ!」


 そんな声が聞こえてくる中俺は口を開いた。

 ギルド全体に聞こえるようにだ。


「俺はエリア3でナティアを保護した際に人に襲われた」

「な、何だって?!ロードさんを襲った不届き者がいるのか?!」

「誰だ?!それはギルドに引き渡さないと!」


 一気にそんな流れになってくれる。


「そうだぜ!誰だよ俺らの仲間を襲ったやつは!」


 それに便乗するクダラ。

 それを聞いて笑ってしまった。


「ははは、何を言ってるんだ、お前だろう?クダラ」


 俺は短くそう告げた。

 勿論ギルド全体に聞こえるように、だ。


「な、何を言ってるんだ?!俺がそんな事するわけないだろ!」

「そうだぜロードさん!クダラさんがそんなことする訳ねぇ!」


 クダラの言葉に続いて彼を擁護する声もあった。


「ニーナ。こいつは何て言っていたんだ?」

「は、はい。クダラはロード様達がホーリーウルフと戦って自分を逃がしてくれた、と」


 なるほどな。そういうことか。


「別に間違ったことを言っているわけじゃないのか。これに関してはクダラは嘘をついていない。そこは責めないでやってくれ。確かに俺たちはホーリーウルフと戦った」


 目を見開くクダラ。

 俺が何を言ってるのか理解できないのだろう。しかし庇うつもりは無い。


「俺達が戦っている間に逃げたのはクダラではなく謎の男だ」


 俺はクダラに目をやった。


「お前が謎の男だと認めるのならお前の言い分は間違っていないことになるが」

「何が望みだ?!嘘をつくな?!ロード!」


 叫んでくる。


「みんな信じてくれ!俺は仮面なんて被っていない!こいつは何かを企んでいて俺を嵌めようとしているんだ!」


 クダラのその発言に


「そういうのはやめようぜロードさん」


 俺を非難する声も上がる。

 勿論想定内だ。


「なぁ、クダラ」

「何だよ」

「俺は謎の男と戦った。その時にそいつにとある細工をした。逃げられる可能性を考えてな。逃げられた場合俺が追い付ける確証はなかったから」

「っ!!!!!」


 驚くクダラに俺は続ける。


「ここだよ」


 俺はそう言って体の一部を指さした。


「ここに俺はナイフを思い切り叩きつけた」


 そう言ってナイフを取り出す。

 刃が欠けている。


「全力の一撃を叩き込んだ。刃が欠けるほどのね。そんな鋭い一撃───────防具も凹んでいるんじゃないか?」


 クダラが汗を滝のように流し始めた。


「確認させてくれないか?傷が無かったら俺が嘘をついた、と謝罪する」

「っ!!!!」


 クダラが走り始めた。

 しかしそれを読んでいた俺は


「がっ!」


 クダラを組み伏せ。

 首を覆っている防具を取り外すと、新しいナイフをその首筋に突きつけた。


「動くなよ?あまりナイフは得意ではない。加減を間違えて絶命させてしまうかもしれない」

「ま、待ってくれ!」

「これ以上何を待つんだ?」


 拘束を始める。

 そうしていたらメイガスがやってきた。


「く、くそ……」


 縛り上げたクダラをメイガスに引き渡す。


「相棒。こいつはギルドに処分させる」

「まぁ、好きにしてくれていい。それよりも」


 俺は動きの取れないクダラにひとつ聞くことにした。

 もう諦めたのか静かになっていた。


「雇われたのか」

「な、何故それを」


 今度は目を見開くクダラ。


「鎌をかけただけだ。ひっかるとは思わなかった」


 そう答えてやるとメイガスが口を開いた。


「組織的なのか?」

「恐らく、とはいえそんなに大規模ではないと思うけど」


 俺はナティアに目をやった。


「こんな事は以前にもあったか?」


 首を横に振る。

 となるとタイミングを考えると俺絡みかもしれない。


 原因は御前試合だろう。

 あれで俺が行った番狂わせ。


 それであちこちで歪みが出来ていて俺を消そうとしている勢力がいるのかもしれないな。

 だが黙って消されるつもりもない。むしろ目に余るようなら俺が消す。


「相棒何が来たって俺達は相棒の味方だぜ」


 メイガスはそう言ってくれる。


「そうか。助かる」


 そう答えながら俺はクダラを何処かに連れていくメイガスを見送った。


 さて、とりあえずは一件落着なようだな。

 俺はギルド全体にもう帰ってもいいと指示を出してからギルドの外に出た。


「帰るか」


 そう言ってみたらちょいちょいと俺の袖を引っ張られた感覚があった。

 ナティアだった。


「まだ時間ある?ロード」

「あるけど」


 そう答えたら恥ずかしそうにモジモジとするナティア。

 その後に思い切ったように口を開いた。


「デートの事覚えてる?」

「俺は高いぞ?」


 いつものセリフで流そうとしたけど


「これで買えるかな?」


 彼女は冗談っぽく笑ってとあるものを見せてきた。


「聖草じゃないか」


 拾った分は特に悩むこともなくナティアに使った。だから追加で入手できたものだな。


「うん。転移結晶のあった部屋にあったの。これでデートしてくれない?」


 そこまで真剣に言われたらもう断るのも悪いか。


「つまらないだろうけどいいか?」

「うん」


 ナティアは輝くような笑顔で頷いてくれた。

 そして俺に聖草を渡してくる。


「お姉さんに使ってあげて」


 それから彼女はぴょんと跳ねると俺に赤くした顔を見せてこう言った。


「助けに来てくれたの嬉しかった。私、ロードの事大好き。振り向いて貰えるよう頑張るから」




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