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15 見つかりましたが

 俺はナティアを追ってエリア3まで走ってきていた。


「相変わらず速いな。逃げ足だけは」


 必要だったとはいえクダラを観察し過ぎた。あの場で俺はあいつをじっくりと観察すべきじゃなかった。

 誰にも信じて貰えなくて不安だったナティアの気持ちを考えていなかった。


「見つけたぞ」


 暫く走り回ったら木の下で座り込んでるナティアを見つけた。


「ロード?」

「探した」

「どうしてきたの?」

「悪かった。ナティアを信じてるから。今更言っても信じてもらえないかもだが」


 それにしてもこんなところで観察する癖が悪い方向に出るとは思わなかった。


「悪いと思ってるならお詫びに帰ったらデートして欲しいかも」

「高いぞと言いたいところだが今回は無料だ」


 本当はデートなんてしたくないけどさ。

 だって俺根暗だし。

 こんな美少女連れて街を歩くとか無理だし。でもするしかなさそうだな。


「だからそうしょげるなよ」

「うん」


 立ち直りは早いらしい。


「忘れないでデートのこと」

「あぁ」


 そう言いながら俺も立ち上がった。

 さっきの場所を目指したいんだが


「ここからなら奥をめざした方が速いな。奥まで移動してそこから転移して帰る方が早い」


 俺が戻らなかったらメイガス達も戻るだろうし。


「うん」


 ダンジョンの最奥には転移結晶と呼ばれる結晶がある。

 それを利用すれば転移することが出来るのだが今回は歩いて戻るよりそれを使った方が速いと判断した。


「いだっ!」


 しかし立ち上がろうとしたナティアは呻く。


「どうした?」

「足、怪我しちゃったみたい」

「ヒール」


 回復してやると俺を不満げに見てくるナティア。


「仕方ないなぁナティアは。可愛いからおんぶしてやる、くらい言えないの?合法的におんぶできるんだけど」


 根暗に言えるわけないだろそんなこと。

 首を軽く横に振る。


「ぷー」


 頬をふくらませているナティアを連れて奥へ向かう。


 中央に植物が生えている開けた場所に出た。


「あ、これ聖草かも」

「これが、か」


 ナティアがそう言っていたので俺は聖草を取得した。

 アイテムポーチに追加された。


「やったね。これでお姉さんも治るかも」

「ナティアのおかげだ」


 更に奥を目指そうとしたけど


「おーっと。その先には進めねぇな?お前らはここで死ぬからな」


 くぐもった声が聞こえた。

 後ろを振り向くと


「盗賊か」


 双剣使いの見た目盗賊が立っていた。

 中身は99.9%あいつだろうな。

 ローブを身にまとって仮面を付けているけど中身はだいたい分かる。


「な、何者?!」


 ナティアは分からないらしいが。


「その聖草奪わせてもらうぜ!」


 そう言って突っ込んでくる盗賊。

 少し、遊んでやるか。最近は鍛錬でレベルを上げていた。

 俺がどれだけやれるようになったのか試すのには丁度いい相手だろう。


 何回か剣を交わす。その間に俺はリジェネを重ねがけする。

 妨害されながらだったけど何とか完全に魔法を使えた。


 だが何回か俺の体にモロにダメージを通していた。


合計60ダメージを受けた!


体力が減る。

1300→1240


「貰ったぜ!」


 迫り来る盗賊と入れ違うように、ガン!!!!!!

 音が響く程ナイフの刃を盗賊の背中に打ち付けていた。


合計140ダメージを受けた!


1240→1100


 俺はというとナイフの刃が欠けた。しかし、これでいい、これは念のためのマーキングだから。

 剣に持ち替えた。


「おいおい、欠けてんじゃねぇか!ナイフの使い方も知らねぇのか?ベイビー冒険者ぁ!」


 その後襲ってくるかと思った盗賊は後ずさった。


「な、何だ、この回復量!あ、有り得ねぇ!延命にしかならねぇんじゃねぇのか……?」


 どうやら俺の回復量を見て盗賊は驚いていらしい。


1100→1300


───────

名前:ロード

体力:1300/1300

状態:

リジェネ

リジェネ

───────


 リジェネを20回重ねがけしてある。これで毎秒200回復する。

 毎秒100ダメージちょっとしか与えられない盗賊では俺を倒すことは出来ない。

 だが、俺は殴り続ければいつかはこいつに勝てる。

 その時だった。


「ガァァァァァァァ!!!!!!」


 奥から雄叫びが聞こえた。

 それを聞いた盗賊は


「お出ましか。お前らの排除はそのモンスターに託そう」


 走り去っていった。


 見送った後に後ろを向くと


「ホーリーウルフだよ!」


 叫ぶナティア。

 そこには真っ白なウルフが立っていた。

 俺たちを威嚇している。


「仕方ない」


 俺はまたリジェネを更に10個ほど重ねがけした。


「速攻をかけるか」


───────

ホーリーウルフ

体力:2080→1850

───────


 ウルフの攻撃。

俺は240ダメージを受けた!


 しかし


「無駄だ。俺は毎秒300は回復するぞ」


 逆にウルフにリジェネはない。

 よって


「悪いな。時間はかかるが俺の勝ちだ」


 ザン!

 タイミングを見ながら最後の一撃を叩き込む。


「ゴァァァァァァァァ!!!!!!」


 ウルフが沈んだかと思ったその瞬間だった。


「ガァァァァァ!!!!!!」

「来るか?!」


 最後の足掻きかと思ったその一撃は物理攻撃ではなく


「くそ!」


 魔法。フラッシュだった。

 光を放ち敵の視界を奪う魔法。


 俺はギリギリ目を閉じるのが間に合った。

 しかし


「あれ?ロード?何も見えないよ?」


 ナティアは間に合わなかったようでその場で誰かを探していた。

 俺は急いで駆け寄るとナティアを抱き起こした。


「ここにいる」


 そう言って手を握ってやると


「安心する。でも何も見えないよ」


 唇を噛み締める。

 この魔法は想定していなかった。


 とりあえずナティアのステータスを見てみる。


───────

状態

視覚不良(デバフ)

───────


 となっていた。


 俺はこれの治し方を知っている。

 そして治さなければ一時的なデバフではなく、悪化して永久に視力を失うことも。


 姉さんがそうだったように。


 治し方は聖草だ。俺のヒールではデバフは治せないからアイテムを使うしかない。

 でもここに聖草は1つしかない。


 またもう1つ取れる保証なんてどこにもない。


 姉さんを助けられるかもしれないアイテム。

 何年も光を見ていない姉さんに光を見せてあげられるかもしれないアイテム。


 俺とナティアの付き合いは浅い。

 切り捨てられる仲とも言えるだろう。


 でも、どうしたらいいんだろう?

 ナティアに姉さんと同じ思いをさせるのか?


 考えていたら


「ごめん、足引っ張っちゃって。もう倒れたと思って油断しちゃった」


 ナティアがそう口にしながら泣いていた。


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