13 不穏です
当日。ナティアと共に俺は集合場所であるギルドに来ていた。
そこには既にメイガスの姿がある。
「おう、相棒!きたか」
「お前の相棒なんてどこにいるんだ」
俺は周りを見回してみた。
でもこいつの相棒らしき奴はいない。
「おめぇのことだよロード。俺とお前はもう相棒だ!ガハハ。肩でも組もうぜ!」
「やめろ、暑苦しい」
勘弁してくれ。
男にこんな引っ付かれても嬉しくないぞ流石に。
「そう照れんなって相棒」
照れてないし勘違いをするな。
そんなことを言い合っていたら
「ロード様!」
ニーナが飛びついてきた。
「お会いしたかったです!」
「そうか」
俺は別に会いたくはならなかったが。
「そうやって寡黙なのもクールでカッコイイです♡」
別にクールな訳では無い。
何を話せばいいか分からないから口数が少ないだけだ。
要するに根暗なだけ。
それでもニーナの目には俺がクールに映っているそうだ。
「相棒!」
メイガスも飛びついてこようとしたからニーナを連れて避けた。
「おい!何してやがる相棒!」
「気色悪いからやめろ」
「そ、そんな」
よく考えろよ。巨漢で眼帯をした髭だらけのおっさんに飛びつかれる恐怖を。
ホラー以外の何物でもない。
「ニーナは良くて俺はダメなのか」
「当たり前だろ」
そんな俺たちを見てニーナが呟いた。
「リーダーとロード様が、なしではないかもしれません」
「変な妄想をするな」
俺はメイガスに目を戻す。
「それより、行くんだろ」
「そうなんだがもう1パーティ遅れてるようでな」
と、そこまで言った時だった。
「お、集まってんな」
その最後のパーティが来たようだった。
「遅いぞクダラ」
クダラと呼ばれた男が合流してきていた。
「ちっと時間かかっちまってな」
悪びれる様子もなさそうだ。
そんなクダラだったが俺に目をやった。
「見ない顔だな。こいつが飛び入り参加したってやつか。にしてもあのメイガスがこんなガキに助けを求めるとはな」
鼻で笑うクダラ、その後俺にこう言ってくる。
「ガキのお遊戯会じゃねぇんだぞ?分かってんな?」
「分かってる」
「そうか、足だけは引っ張るなよ?いやぁ、Eランク冒険者って味方に矢を当てそうだよなぁ。ははは。怖いわー。てか武器の持ち方分かるかな?」
意地悪そうに笑うクダラを見てメイガスが口を開いた。
「相棒はすげぇぞ。今回の作戦の要だ」
「へぇ。まぁ味方殴るような間抜けなことだけはすんなよ?敵と味方の区別できまちゅかー、ぼくー?人間が味方でモンスターが敵でちゅよー?分かったかなぁ?ははは」
と、めちゃくちゃ馬鹿にしてくるクダラを加えて俺たちは目的の聖なる森へ向かうことになった。
それにしてもこいつむかつくな。
◇
───────聖なる森~エリア1
聖なる森に入り歩いていた俺たちだったが突然クダラが口を開いた。
人を馬鹿にするような顔ではなくて真顔だった。
「なぁ、ナティア」
「何?」
クダラの問いにナティアが答えた。
「お前俺に返すものがあるだろ」
「はぁ?」
突然の言葉に戸惑っているような様子のナティア。
「返すもの?そんなものないわよ」
「返さないつもりか?」
「あらあら。ごめんなさいね。私が可愛すぎてもしも貴方の心を奪っていたのならそれは返せません」
「はっ。そんな訳ないだろ。誰がお前に心を奪われるんだよ。違うものだ」
言い合う2人。
それを見て仲裁に入るのはメイガスだ。
「ナティア何か返すものがあるのなら返せよ」
「何も無いって言ってるわよ」
「だがクダラはこう言ってるぞ?」
「だから知らないわよ」
とまたしても言い合う2人。
そこで口を挟んだのはこの話題を切り出したクダラ。
「まぁ、メイガス。今は先に進もうか。俺もここで切り出したのは悪かった。こんな物覚えの悪い奴だ。今は時間をやろう」
そう言うクダラ。
それを聞いてメイガスがまた歩き出す。
それを見ながらクダラがこう口にする。
「ナティア、思い出したら返してくれ。そうだなこの作戦が終わるまでに返してくれ。そうすれば不問にする。もっともその小さい脳みそで覚えてるか不安ではあるが」
そう言い残してクダラは走るとメイガスの横を歩いていく。
最後尾を歩く俺たち。
「ナティアさん何か借りたんですか?」
ナティアのパーティメンバーの1人がそう声をかけていたが
「知らないわよ。何も借りてないし奪ってもないわよ」
そう言うだけだった。
ナティアの反応を見れば彼女は心当たりがなさそうだが。
俺からどうこう言えることでもないかもしれないな。
それよりも改めてナティアに礼を言っておくか。
「改めてお礼を言っておくこうしてここを歩けてるのはナティアのお陰だ」
そう言ってやると顔を赤らめるナティア。
「ま、まぁ別にいいわよ。それよりも感謝してるなら言葉じゃなくてね」
「何がいいんだ?」
「この作戦が終わったらデートして欲しい」
ド直球にそう言われた。
デートってあれだよな?
俺と、か?
それは流石に断るか。
というより
「お前彼氏がいるんだろ?」
俺には見えないけどさ。
「だー、もー、忘れてよーそれー」
頬をふくらませてそう言ってくる。
なら忘れるか。
「それよりデートしてくれるの?」
「ふっ、俺は高いぞ?」
断りたいしそう返してみるが
「ふふっ、いいわよ。私の相手するんだからそれくらいの気概じゃないとね」
効果はないようだ。
むしろ逆に今の会話で機嫌を良くしたのか笑顔になるナティア。
「行くわよロード」
先に歩いていくナティアに頷きながら俺は別のことを考えていた。
先程のクダラの言葉がまだ気になっていた。
本当に何故このタイミングで切り出したんだろう。
切り出すタイミングなんていくらでもあったし、ここから先にもあるだろうからここで言う必要も無い。
それに、後で個別にナティアを呼び出して声をかければ済むだけの話だ。
何故ここでこのタイミングで口にした?
「現状じゃ何とも言えないが、もう少し様子を見てみるか」
俺はクダラへの警戒を強めることにした。
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