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12 【タケル視点】破滅の始まり

 学園内は怪我人で溢れていた。


「いてぇよぉ!」

「治療してくれ!」


 保健室の前に怪我をした生徒達が詰め寄っていた。

 いつもならこれだけ並んでいたら開いてるはずの入り口は閉まっていた。

 その横には待ち時間不明という札を抱えた職員が立っている。


「おい!ロードはどこだよ!」


 ガンガンガンガン!!!!

 保健室の扉をガンガン叩いている生徒たちの姿がいくつも見える。


「ロード!出てこい!早く治してくれ!」

「ロード?!いるんだろ?!出てこいよ!」


 しかしロードは出てこない。

 当たり前だ。もう既にここにはいないのだから。


 この様子を見ていたのは学園長だった。

 そしてそれに気付いた何人かの生徒が学園長に声をかける。


「学園長。どうしてこんなに人で溢れてるのに保健室を開けてくれないんだよ。つい昨日まで開いてたじゃないか!それに回転が遅すぎるだろ?!」

「答えられない」


 この様子を見てロードが退学したとは学園長はもう言えなくなっていた。

 そして今1人保健室から出てきたが


「見ろよおまえら!包帯だぜ?!こんなに怪我してるのに魔法じゃなくて包帯だぞ?!」


 自分の治療された後を見せながらそう口にしていた。


「おい!ロード!いつもみたいに魔法を使えよ!おせぇんだよ!いつまで待たせんだ!」


 それを見てから我慢できなくなったのか待機列を作っていた生徒達がまたドアを叩き始めた。


「ロードだがいないぞ」


 出てきた生徒が口を開いた。


「あ?ロードがいない?」

「あぁ。何故か知らないがロードがいない。いるのは他の治療士ばかりだ」

「はぁ?ロードがいないだけでこんなに回転率悪いのかよ?」

「らしいな」

「あぁぁぁ!!!くそ!頭来た!何時間待たせるんだよ!」


 ドン!

 ついに1人の生徒が我慢出来なくなったのか扉を蹴破る。


 そこに広がっていたのは何十人もの治療士達がちまちまと包帯を巻き付けている風景だった。


「おいおいあんたら何してんだ?」

「何?とは治療ですが」

「そうじゃねぇだろ?!魔法を使えよ!」


 そうだそうだと大勢の生徒達が言うが治療士達は首を捻るだけだった。


「え?魔力は有限ですので必要な時しか使いませんけど」

「はぁ?ロードはずっと魔法使ってただろ?擦り傷でもヒールを使っていた!」


 その言葉で治療士達が固まった。


「今、何と?」

「ロードはずーっと魔法だよ。今あんたらがちまちまやってる人数を1人で魔法で回復させてたよ」


 その言葉を聞いた治療士の1人がこう口にした。


「あ、ありえませんよ?そんなの出来るわけないじゃないですか」

「はぁ?出来るわけがない?」

「そんなことしていたらあっという間に魔力が尽きてしまいますし、そもそも───────ヒールって普通1人を対象にした魔法ですよ?」

「え?」


 生徒達の動きが固まった。

 普段自分達は誰にどうやって治療されていたのかが分からなくなってきていたのだ。


「え?でもあいつは何人で行ってもヒールで即回復」

「だからそれが出来ないんですって。それヒールじゃないんじゃないんですか?」


 治療士達は彼らを相手にすることなく治療を続け始めた。

 生徒たちはただ呆然と立ち尽くすだけだ。


「聞いた事ある?ヒールを普通の治療に使う治療士なんて」

「ないよそんなの」

「だよね。そんなのいたら化け物だよ」


 そうやって会話しているところにタケルがやってくる。


「おい!左手を回復してくれ!」


 ロードに落とされた左手はまだ回復していない。

 当然の話だ。


「で、出来ませんよ?そんなこと」

「え?」


 タケルも固まるだけだった。


「欠損した身体の回復なんて出来ませんよ?普通は」

「何言ってやがるロードはやっていただろ?!」

「だ、だから出来ませんて!」


 掴みかかろうとしたけど上手くいかなかったタケルは床にベチャリと転けた。


「じゃあ俺の手はどうなるんだよ?!」

「知りませんよ!そんなの!いいですか出来ることと出来ないことがあります!そこを理解してください!」

「はぁ?!ロードが出来たんだからお前らも出来るだろ?!」

「だから無理ですって!」


 その日治療士達の叫び声が学園を支配したという。



 そしてその日の放課後


「おい、マーズ!」


 タケルはマーズに声をかけていた。


「何よ」

「お前この前ロードと何してたんだ」

「っ」


 見られていたことに気付いたマーズ。


「2人で宿に入ってったよな?」

「た、タケルには関係ない」

「大ありだろ?」


 マーズはその声には答えずタケルから目を逸らした。


「あなた、勧誘はきたの?」

「来てないに決まってんだろ。俺腕の治療中なんだからよ。それよりそろそろ看病してくれ。飯も食いにくいんだよ」

「ロードのところには来てるみたい。Sランクパーティからばかり。どれも断ってるみたいだけど」


 その一言でタケルの目が見開いた。

 これ以上ないほどに。


「ははっ、だから俺はまだ腕の」

「そんなの関係ない。あなたの事が気になるなら1人くらいくるはずじゃない」

「うぐっ……」

「最悪。あなたと付き合ってからロクなことが無い。ロードは暗いけど顔はいいし根は優しい。あのまま付き合ってれば私は幸せになれたのに!あなたのせいで!」


「おいおい、何を怒ってんだよ」

「いいからあなたとはもう終わり!私が体調崩したら傍にいてくれたし!だから好きだったのに!もう私に関わらないで!これ以上あなたと関わってたら私の人生終わる!」


 マーズはそう言って逃げ出す。

 それを見て呆然と佇むタケル。


「う、そ、だろ?」


 そう言ってみたら


「振られてやんの芋虫」


 他の生徒が近寄ってきた。

 そして


「おら!」

「かはっ……」


 タケルは生徒に蹴られていた。


「なぁ、芋虫。俺とも決闘してくれや。あんな回復術士に負けたんだ。俺だって腕1本しかないお前になら勝てるしお前に勝ったらSランクパーティに入れてもらえるだろ」


 ふひひと笑う生徒。


「がっ!」


 その後もタケルはボコボコに殴られて蹴られた。

 その後彼を見た人の言葉によるとタケルの体は血のついてない箇所を探すのが難しいくらいだったという。



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