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10 実は俺だけが使えるテクニックだったみたいです

「リーダーこれ以上の延命は厳しいですね。ここに来るまでの間に回復アイテムも魔力も尽きました」


 必死に回復しようとしていた周りの冒険者たちが退いた。


「十分だ、ここまで連れてきてくれて感謝するご苦労。ニーナ。何か言い残したい事はあるか?」


 俺を無視してメイガスがニーナにそう聞いていた。


「嫌です。し、死にたくないです」


 そう返す少女。

 しかし


「無理だ。死の毒は解除方法が分かっていない」

「そ、そんな」 

「回復を始める」


 2人の会話を横目に見ながらニーナの体に触れた。


「カッコイイ天使様が私の体に触れています。連れていかれるのかな……」


 おいおい、何が見えてるのかは知らないけど、連れていかれてくれるなよ?俺の大事なテストの真っ最中だぞ?

 そう思いながら


「ヒール」


 とりあえずのヒールだ。


 すると


800/2000→900/2000


 となる。

 俺のヒールは体力を100回復させただけだ。


「無理に決まってんだろ!」


 拳を震わせるメイガス。

 何をするかと思えば


「がっ!」


 胸ぐらを掴まれた。


「お前!こんな苦しんでるニーナの苦しみを更に引き伸ばすつもりか?!冒険者なら潔く仲間の死を見届けやがれ!」


 いや。仲間じゃないんだが。

 そういうツッコミは無粋か。


「生憎、しぶとさだけが取り柄なんでな。俺からしぶとさを取ったら何も残らない」


 そう返してる間もニーナの体から目は離さない。


900/2000→600/2000


 300減った。

 なるほどな。死の毒というデバフは一定時間で300ダメージ削るらしい。

 ならば魔法の使用回数を増やそう。


「ヒール」

「てめぇ!まだやるか!」


 メイガスが怒鳴ってくるが構わず続けた。


 600/2000→1600/2000


 ヒールを一瞬で10回同時に発動させた。ヒール1回の回復量は決まっている。そのため回復量を上げるには同時に並行して複数回魔法を使うしかない。


「なっ、こ、これは、まさか、並行魔法!」


 それを見たメイガスが俺から手を離した。

 いや、メイガスだけじゃない。


「1000?!」

「か、回復量1000ってなんだよ?!」


 周囲から声が聞こえてくる。

 どうやら回復量が少なすぎるのかもしれないが今の俺に出来る最高の数値だ。

 今ある手札でここは切り抜けるしかない。


 何せ毎秒300削るのであれば毎秒1000回復させるだけでもいい。

 それで十分余裕が出る。


 そうして俺は回復を続けた。


2000/2000


 の状態になった。

 俺の回復魔法の効果かニーナの状態はかなり良くなってきていた。

 とはいえ瀕死状態なのには変わりはないから先程と比べれば、という意味だけど。


 基本的には瀕死状態と言うのは自然回復を待って治すというのが基本だ。

 一応この状態から戦闘可能状態に戻す事が出来る。回復を続ければいい。


 数分後。


100/1770


 と、通常のステータスに戻っていた。瀕死状態の体力と通常時の体力の数字は違うのが普通だからこれで問題ない。


 こうなれば動けるはず。


「動いてみて」


 俺はニーナに声をかけてみた。


「う、動けます……」


 ニーナが机から降りて自分の体を動かし始める。

 その間も俺はヒールを続ける。


 そうしてついに

1770/1770。


 瀕死の状態から無事に戦闘可能状態に戻すことが出来ていた。


「ふぅ……」


 デバフに関しても少し前に効果時間が切れていた。

 達成感から俺は逆に椅子に座った。


 疲れたー。


 こんなものがテストなんて流石冒険者登録のためのテストだ。いきなり難易度が高かったように思うけど、でも冒険者になるのだからこれくらい出来ないと話にならないんだろうな。


 そう思いながら俺はさっきのカウンターの女性に目を向けた。

 キョトンとしたような顔をしていた。

 俺は立ち上がるとそのままカウンターに向かった。


「テスト、終わったよ。出せるものは出した」


 そう言ってみた。

 さぁ、どんな結果になるのかは分からないけれど。


「は、はい?テスト、ですか?」


 女性がそう口にした。

 俺が首を傾げていると


「す、すげぇぇぇぇぇ!!!!!!」

「何なんだよ!!!今のは!!!!」


 俺の周りに大勢の人が押し寄せてきた。


「あの状態からここまで回復出来るなんてただもんじゃねぇよあんた!」

「き、聞いたこともねぇよあんなすげぇ回復魔法!!!」


 そうやって大勢の冒険者達が俺を囲いだした。

 え?


 俺が困惑していると


「退け。お前ら」


 メイガスがやってきた。

 メイガスの圧力なのか俺を囲んでいた冒険者達は道を開けた。

 向かい合う俺とメイガス。

 そして


「悪かった!」


 メイガスが土下座した。

 何度も何度も頭を床に打ち付ける。


「この通りだ!俺の無礼を許してくれ!」


 ガンガンガンガン!

 何度も何度も頭を打ち付ける。


「お、おい?顔を上げてくれ」


 そんな事をされては俺が困ってしまう。

 という事で顔を上げるように頼んでみたが


「俺の目は節穴だった!お前のランクだけ聞いて実力も見ずにあんな失礼な事を言ってしまった!申し訳ねぇ!」


 何度も謝ってくる。

 そのままやらせているとやがて満足したのか顔を上げるメイガス。

 俺の手を握って握手してきた。


「あんたは最高だ!俺は今奇跡を見た!あんたが気を悪くしないなら是非次の作戦に参加して欲しい。さっきの無礼は許してくれ。俺達も命をかけるんだ。その上で実力の指標になるランクを聞いて判断することは必要なことだった」


 それは分かってるし。こうして謝ってくれてる事だし俺にとって次の作戦に参加したいのは事実だ。だから


「あぁ、よろしく頼むよ」


 俺がそう言ったあとにメイガスがナティアに口を開いた。


「お前、今こいつが何をしたのか理解出来たか?」


 フルフルと首を横に振るナティア。


「だろうな。多分今このギルド内で理解出来たのは俺くらいだろう。並行魔法と言ってな。複数の魔法を同じタイミングで使用するテクニックだ。俺の知る限りこれを習得できたのは歴史上誰もいない。2個ですら難しいのにあそこまでできるなんて!とんでもない化け物だ」


 俺を見てそう告げるメイガス。


「ほんとにすげぇよ。どうやって練習したんだ?血のにじむような努力が必要だったろう?」

「いや別に。いつの間にかできるようになってた」


 学園にいたら怪我人が山ほどきた。

 一人一人対応していたら時間がいくらあっても足りないから複数の魔法を同じタイミングで使えるように練習したら出来るようになってただけだ。


 俺はもう一度視線を女性に戻した。


「ところで、テストはもう終わりなのだろうか?」

「え?」




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