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雪女忌憚

作者: 車馬超

一発ネタ、思いついて1時間ぐらいで書き上げました。


台詞は全部適当なので本当にこんなノリなのか自信はありません。

 それはとてもとても寒い冬の日の出来事でした。


 雪山でスキーに興じていた青年A氏は、遭難して一軒の山小屋へと逃げ込んだのです。


 余りの寒さに震えていたA氏でしたが、ふと家の扉が開いていくことに気が付いたのです。


 果たしてそこから雪の化身のような白く冷たい氷のような女が入ってきたのでした。


 彼女は自らを雪女と称しました、そしてA氏に体の芯まで凍り付きそうな吐息を浴びせます。


 ガチガチに凍り付きそうになるA氏でしたが、そこで雪女はこう持ち掛けました。

 

 「この夜の出来事を話さないと約束するのならば、命だけは助けましょう」


 A氏は眠り落ちそうになる意識を必死で押し止めながら答えます。


 「命を諦めれば配信していいって事ですよね、顔出し許可頂きましたっ!!」


 「はぁっ!?」


 A氏は某動画サイトの売れない配信者だったのです、目を丸くする雪女の前でA氏は最後の気力を振り絞りスマホを取り出しました。


 「はーい、始まりましたA氏の生放送ですが……実は今回が最後になりそうです」


 「というのもですね、実は俺今雪山で遭難してまして~何と雪女ちゃんに出会っちゃいました~っ!! 凍死させられる前に許可を頂いたので早速映させていただきますっ!! はい、雪女さん皆さんに挨拶してくださいっ!!」


 「えっあ、あの……ど、どうも~」


 訳も分からず言われるままスマホを向けたA氏に向かい手を振る雪女。


 タイトルに吊られて見に来た何人かが早速コメントを書き始めました。


 『おおー白い―』

 『結構かわいいじゃん』

 『コスプレ乙』 

 『パンツ何色ですか?』


 「か、かわいいってそ、そんなことないですよぉ……というかコスプレ? パンツ? なんのことですか?」


 電子音声で読み上げられるコメントを聞いてまんざらでもない顔をする雪女、そして純日本製故か横文字に弱いようです。


 『雪女ならA氏グッパイ?』

 『A氏死亡のお知らせ』

 『胸小さくね?』

 『雪女の証拠マダー?』


 「む……っ!? し、失礼ですよっ!!」


 真っ白い肌を赤く火照らせて、激怒した雪女は口から冷たい息を吐き出し持ち主ごとスマホを氷漬けにしてしまいます。

 

 だけど配信は止まりません、今時のスマホは高性能ですし元々野外配信用ですので防水性も完璧です。   


 『うわーマジで凍ったっ!?』

 『本物っ!? 本物っすかっ!?』

 『画面が……え、床とか凍ってる……CG?』

 『こんな配信でそこまで凝らないだろ……本物っぽい?』


 「本物ですよ、ええ本物の雪女ですとも」


 少し機嫌を取り戻した雪女、ちょっと得意げです。


 『あれ、てか配信者どうした?』

 『へいへいA氏~息してる~』

 『あれ、マジでやばくね?』

 『ちょ、雪女さん119番はよ!!』


 「119って何ですか?」   

 

 小首を傾げる雪女、もうA氏は氷漬けですし帰ってもいいはずですがそのことに気付いていないようです。


 『救急車、マジで救急車!!』

 『通報しました』

 『A氏、死ぬなA氏~~』

 『ところで下着配信まだですか?』


 「し、下着とかは、恥を知りなさいっ!! そもそも配信って何ですかっ!! さっきからどこから声を出しているのですか!?」


 現代科学についていけない雪女、どうやらどこかに人が隠れていると思って探し始めました。


 スマホに背を向けてあちこちを探る雪女、ドアを開けた際に外の猛吹雪がカメラに映りました。


 その中を薄着でしかも裸足でうろついている雪女の姿に、コメントの書き込みが増していきます。


 『え、マジで雪女デスカ?』

 『寒くないの!? てかえマジで本物!?』

 『生雪女配信っ!? やばくないっ!!』

 『マジかこんなかわいい雪女が実在するとか、ちょっと遭難してくる!!』

 『何処、そこ何処よ!?』

 『てかちょとまて、A氏マジで死んでんじゃないの!?』

 『やばいやばいやばいよこれ』


 「ふふん、今頃気づいたのですか。 そう私は雪女……この夜の出来事を話さないと約束するのならば、命だけは助けましょう」  


 どや顔で決め台詞を発する雪女、だけど声の主がどこにいるか分からないためぐるぐる回りながら言っているのでいまいち締まりません。


 『ええーマジっすかー!?』

 『話しちゃ駄目ってことは書くのはオケ?』

 『現在進行形で全世界に広まってる件』

 『スマホってGPSで後追いできたよね? 居場所見つけられる?』

 『いえーい、雪女さーん見てるぅー』

 『本物の雪女がいると聞いて……あなたが雪女?』

 『へぇ~普通じゃん、俺の彼女にしてもいいよ』

 『はーい、雪女さんは普段何を食べてるんですか? かき氷?』

 『雪女さんって処女? それとも人妻? やっぱり旦那は雪男なの?』

 

 「頓智じゃないんですから書いても駄目ですぅっ!! え、世界中に広まってるってどういう……じーぴーえす? 居場所って……だからどこにいるのですかっ!? 何処から見ても雪女でしょ!? ふ、普通って失礼ですねお断りしますっ!! かき氷は美味しいですけど……しょ、しょ……っ!?」


 必死に答える雪女、どんどん増える姿なき声もといコメントに涙目です。


 『他にも雪女っているんですか?』

 『惚れました、結婚してください』

 『いやマジでA氏どうした?』

 『A氏おいA氏っ!?』

 『俺家族だけど電話つながらん』

 『雪女ペロペロしたい』

 『雪女さん処女っぽいは』   

 『和服ってことは下着付けてないのでは、雪女ノーパン説きたなこれ』

 『胸もちいせえし、ノーブラだな』

 『え、ノーブラノーパンとか痴女ですか痴女なんですね』

 『これってただの顔だし配信じゃないの? てか何する配信なの?』

 『今きました、詳細希望』

 『雪女って何ができんの?』

 『俺の見た感じ、冷凍ビーム、ふぶき、絶対零度、オーロラビームってとこだな間違いない』

 『クソ技構成じゃん、育成間違えたなこれ』

 『ノーパンノーブラのビッチがいると聞いて』

 『雪女なら寒さに強いところ見せてください、具体的には全裸希望』

 『そーだそーだー、雪女なら服なんか着なくてへーきやろ』

 『A氏がA死に』

 『雪山を舐めるからそうなる』

 『ちょっと雪女さーん、何か面白いことしてよー』

 

 「え、あ、な、あ、ああ……も、もういい加減にしてくださいっ!!」


 ついに怒りが爆発した雪女は辺り構わず凍り付かせていきます。

 

 建物中が完全に冷たい氷に包まれました、だけど配信はまだまだ止まりません。


 『すげー雪女スゲー!!』

 『うーん、見飽きた』

 『他に何かできないの?』

 『火炎放射器で余裕で退治できそう』

 『映画化決定』

 『いやすごいだろこれ』

 『すごいけど面白くはない』

 『雪女さん、そんなことじゃ世界は取れないよ?』

 『俺がプロデュースしてもいいけど?』

 『そういえばこの動画見たら俺らのとこにも来るの?』

 『でぇーじょぶだ、俺さっきからこの動画拡散してるけど全然平気だから』

 『凄い伸びてるわ、A氏も満足やろ』

 『わかったから氷はもういいから、はよ脱げ』

 『せめて下着付けてるかだけ教えてください、後会いに行きますから居場所も教えてください』

 『友達に淫魔とかいません? 座敷童でもいいですよ?』

 『↑通報しました』

 『やめろよ、どうみても友達いなさそうだろ雪女さんいじめんなよ』

 『ちょっとは質問に答えてください、低評価付けますよ』

 『誰かマジで110番した人いないの?』

 『どうやらあなたは小泉八雲ことラフカディオ氏が書いた怪談の雪女を参考にしているようですが本来の雪女は室町時代からの伝承された話であり地方ごとに生態はまるで違うのですがそのあたりどうお考えでしょうか?』

 『こまけぇことはいいんだよ』

 『細かくないし大事だしっ!! いいかモデルの雪女はな男の性を吸いあげるんだぞ、めっちゃ大事だろ?』

 『マジでエロエロじゃんっ!?』

 『すまない俺が間違ってた、雪女さんその辺どうなんですか?』

 

 「も……もういやぁあああああああああああっ!!」


 ついに耐えられなくなった雪女は立ち去ったのでした、後に残されたスマホは電池が切れるまで無人の屋内を映し出し続けたのです。


 その後、凍り付いたA氏が見つかったことで動画は世界的に有名になりました。

 

 最後に動画をバズらせることに成功したA氏、氷漬けの彼の顔が笑っているように見えたのは気のせいでしょうか?


 めでたし、めでたし。








 「めでたくありませんっ!!」


 雪女は憤慨しております、何故って……A氏の遺体が見つかったことで生息地がばれた雪女はあれから毎日のように様々な人間から突撃を受けていたのです。


 ある日遭難した人間を見つけて決め台詞を言ったところ、またスマホを突き付けられて配信を求められてしまいました。


 逃げ出してまた別の遭難者のところへ行くと、マジで貧乳だと暴言を吐かれてしまい即座に氷漬けにした後で大粒の涙をこぼしました。


 次の日にも遭難者を見つけてしまいました、凍り付かせる前に決め台詞を口にしようとするとその前に袴をめくられてしまいました。


 すぐに凍り付かせましたが彼は恍惚の表情で凍死していました、雪女は思いっきり泣きました。


 傷ついた雪女でしたがやっぱり遭難者が出ると会いに行きます、すると今度は自殺オフ会とかで何人もの人に囲まれてしまいました。


 決め台詞を言うと逆にこっちの話を聞いてほしいと言われ延々と心労話を語られ、全員凍り付かせるころには雪女のメンタルはボロボロになっておりました。


 また次の日も遭難者が出ました、凍り付かせに行くと分厚い本とノートを手に質問からの質問攻めにあいました。

 

 来る日も来る日も雪女は遭難者を氷漬けにしていきます、いくら氷漬けにしても遭難者がいなくなることはありません。


 そのうちに被害が大きいということでその雪山は進入禁止になりました、雪女はようやく落ち着けると安心しました。


 しかしそれは大誤算でした、またしても遭難者が出たのです。


 雪女のサガとして凍り付かせに行くと、そこには白い迷彩服に身を包んだ軍人が倒れていました。

 

 近づいて決め台詞を言おうとしたときでした、不意に踏み込んだ先に大穴が生まれました。


 落とし穴が仕掛けられていたのです、ですが雪女ですから雪風に乗って何とか落ちるのは回避しました。


 『捕獲作戦A失敗、Bプランに移行する』


 雪女の耳にそんな声が聞こえたと思うと、今度は四方八方からネットが迫ってきました。

 

 よく見ると迷彩服で雪地に擬態した軍人に雪女は取り囲まれていたのです。


 咄嗟に吹雪を起こしネットを跳ね返す雪女でしたが、ふと気が付くと先ほど倒れていた軍人が片手にスタンガンを持って襲い掛かってきていました。

 

 これも氷の吐息で何とか追い返すと、ついに軍人たちは銃を抜いて撃ってきたのです。


 『テーザーガン……効果なし、捕獲は不可能と判断。排除プランに移行する』


 流石によけきれませんでしたが雪の塊である雪女に電撃は効果がありません、すると軍人たちはボンベを背良い火炎放射器を取り出したのでした。


 銃口から炎が噴き出したのを確認した雪女は恥も外聞も捨てて逃げ出すことにしました。


 『逃がすなっ!!』


 軍人たちの完璧なコンビネーションに追い詰められて、雪女は泣きながら己の愚行を後悔するのでした。


 全く身バレとは恐ろしいですね、皆さんも配信などを持ち掛けられても安易に顔出しの許可をするのは危険ですから注意してくださいね。

 

 『……以上が私、雪女から妖怪の皆さんに送る最後の配信です……私みたいにならないよう本当に気をつけて……ああ、炎が今窓の外に…………………』



小説は落ちを考えるのが難しいですね。

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