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がらくた売りの異世界女神

作者: キウイ茸

がらくた売りの異世界女神。

突然家にやってきた。

得意げな顔で見せるのは、読めない魔導書、光る聖剣。

そんなもの、なんの役にもたちやしない。

家から追い出し、「2度と来るな」と鍵を閉めた。


だけど女神は諦めない。

窓から、屋根から、蛇口から。家の中に上がりこんでは、見当違いのセールストーク。

挙句の果てには、「買ってくれるまで帰らない」。


どうにかこうにか買わせようと、女神は色んな策をうつ。

料理洗濯、掃除に買い物。

夜には平たい体を使い、真っ赤な顔して色仕掛け。

だんだん哀れになってきた。

「1番安いの、一個くれ」

とっても自慢げな顔をして、手渡してきたのは黄ばんだ絨毯。

買わなきゃよかった、それは流石に言えなかった。


一回売れて、調子に乗った女神さま。

前より激しいセールストーク、甲斐甲斐しくなる日頃のお世話。

夜だけは、相変わらずの出来だったけど。


ある日女神に聞いてみた。

「なんでそんなもの売るんだ」と。

女神は笑顔でこう言った。

「素敵だと、思うものを売りたいんです」

そうして逆に聞いてきた。

「あなたはなにが欲しいですか?」

それが無性に眩しくて、沸騰しそうなほど腹が立って。思わず声が漏れて出た。

「おまえが売りたいものなんか、こっちは欲しくもなんともない」

「欲しいものもやりたいことも、とっくのむかしに置いてきた」

女神はひどくさみしげな顔をして、頭を下げていなくなった。



新しく来た、やり手の女神。

鞄の中から取り出したのは、美しくなる魔法薬、頭が良くなる不思議な帽子。

見れば見るほど、素敵で綺麗な道具たち。

女神は笑顔でこう言った。

「こっちの人には、こういうものがよく売れるんです」


「もう来るな」。やり手の女神を追い出した。

そいつは2度と来なかった。



暗くて冷たい四畳半。

お腹が空いて、ご飯を作る。

指を切り、絆創膏をはっつけた。



体操座りで雨を見る。横にあったのは黄ばんだ絨毯。

せっかくなので広げてみよう。

よく見ると、黄ばみが模様になっている。

大きく書かれた魔法陣、上には「1回500円」。

財布から出し、放り投げ。黄ばみが白く輝いて。




「なにかほしいもの、ありますか?」


「……家事代行が欲しかった」

彼女は笑顔でうなずいた。

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