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真剣交際

作者: 葉月挧

「あたしたちの関係って真剣?」


 はて、唐突に眼前の彼女は率直に質問してきた。


 別に彼女は真剣に意見を求めているわけではなさそうだ。何故ならスマホをスクロールしてSNSをチェックしているように見えるからだ。


 その真剣とかいう質問もきっとツイッターのトレンドに上がっていたから軽い気持ちで質問してきたのだろう。


 俺も朝にその真剣交際の件が気になってちょっと調べた。


 なにせ、眼前の彼女。俺の部屋でだらんとくつろいで転がっている俺の彼女はまさしく件の16歳だからである。


対して俺の年齢は25歳。


これ今俺が「お前とは真剣交際ではない」と言ってしまった時点で俺は違反者になるのではないか。


 どうやら「性的欲望を満たすことを目的とした18歳未満とのわいせつ行為を禁じる」ということらしい。


 言ってしまうとそういう行為をしたことはあるけど…。そうは言ってもちゃんとデートにだって行くし、なにかと記念日があるのならプレゼントだってあげている。


 性的欲望を満たすだけが俺と彼女の接点というわけではない。あ、いや物理的に接点があるときは性的欲望を満たすときではあると思うんだけど。


 少しばかし考え込んでしまっていると彼女から気だるげそうに「聞いてたー?」と言われて、すぐさま「うん」と答えてその次の言葉をひねり出す。


「新田○剣佑って最初しんけんゆうだと思ったよね」


「あたしの話聞いてた!?」


「しかもあれまっけんゆーって読むんだと思ったら名字の方も読み方間違えてたというね。にっただと思ったらあらたってどういうことよ」


「知らないよ!」


 ぺしんと頭を叩かれてツッコまれる25歳男性。隣の相方は16歳女性。うーん犯罪臭しかしないや。


 でも咄嗟に考え付いたのがそんな程度の話しかなかった。でも「にったしんけんゆう」だと最初は思っていたのも真剣だ。


「例えばあたしが今から交番ダッシュして泣きつけばあんたは困るわけ?…ってなんで出口塞いでんの?」


「お、おおお、お…っお前が変なこと言うからだろ!」


「めっちゃ動揺してんじゃん。ウケる」


 真面目にそれやられたら俺社会的に抹殺されるだろうし。でも、彼女は今のところそんな気はないらしく、俺の姿を見てケラケラと笑っている。


「まああたしが言いたいのはあれだよ。真剣ってどこからが真剣なんだろうね」


 ケラケラとした表情から、居住まいを正した彼女は一転真剣な顔をする。


「本物の刀剣のことらしい。ものを斬れるものが真剣だというそうだ」


「誰が刀の真剣がどこからって聞いたんだよ!?」


 真剣ってどこから真剣って聞かれたし…。


「といっても、今のもちょっとしたヒントになってるのかもね」


 何故か彼女は頷いて俺の言葉を肯定し始めた。


「真剣で斬ったら身を引き裂かれるほど痛いわけでしょ。恋愛だって真剣だったら、もし別れたなんてことがあれば痛いんじゃないかな」


「よく俺のボケでそんなカッコいいこと言えるな」


「あんたはあたしに対して真剣じゃないっぽいわね」


「そんな滅相な」


「ちょっと交番行ってくる」


 その言葉とともに彼女は立ち上がる。すかさずラグビー選手のように彼女をがっちりと捕まえる。


「やめてよぉ…!そんなコンビニ行ってくるみたいな軽いノリで交番行かないでよぉ…!」


「うわぁ…16歳に泣き縋る25歳社会人気持ち悪りぃ…」


 確かに地獄のような絵面である。


「真剣白羽取りってあるじゃん。あれって実現させるのはほぼ不可能な大技らしいよ」


「あたしはあんたの口からはやく「俺はお前のこと真剣に思ってる」って言ってほしいだけなんだけどなー」


「真剣に思ってる」


「軽っ!毛糸1kg分ぐらい軽っ!」


 それただの1kg。


「そもそもさ、16歳の女と25歳の男に真剣なんて交際あるのかな?とも思う訳よ。というかあたし的にも少しお遊びな部分だってあるわけだし。あんたと結婚するなんて考えてもいないし。どこからが真剣なんだろうね」


 凄いロジカル。この女アホな女子校生とばかり思っていたけど意外とロジカリストだった件。


「俺は真剣だよ」


「軽薄に聞こえる…」


 彼女は真剣な眼差しだ。真剣を振りかざそうと居合いの間合いを計っているような鋭い眼だ。


 言うならば西部劇のようなにらみ合い。どこかでタンブルウィードを転がっている。地球のどこかで。


 そして今だとばかり彼女が決定的な一言を言い放つ。


「真剣って言うのなら態度で示してよ!」


 そういう彼女をすかさず俺は抱き寄せる。力強く抱きしめて、耳元で囁く。


「俺は真剣だよ(自分なりのイケボ)」


 彼女がわなわなと震えている。


「…って。気持ち悪いわぁぁあああああああああ!!!」


 スッと俺から離れた彼女は右手を高々と上げて、思い切り振り下ろそうとしている!いくら女の子とはいえ、あれをもろに喰らったら結構痛そうだ。


 かくなる上は…あれしかない。


 俺は両の掌で彼女の腕を挟みこもうと試みる。


「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


「痛ってぇぇええええええええええええええええ!!!」


 だが咄嗟の判断も上手くは行かずに、脳天にチョップされた。まるで真剣ばりのいい手刀、持ってるじゃねえか…。世界狙えるぜ…。


 真剣に向かってきた彼女、俺は彼女を受け止めようとしたけど、俺が真剣じゃなかったのかもな…。


 やはり真剣白羽取りなんて、出来るわけがないんだな…。


 これからはもっと真剣に彼女と向き合うようにしよう。

ツイッターでちらっと真剣交際って言うのを見たので即興で書いてみました。

ツイッターやってるのでよかったらフォローしていただけると嬉しいです。

https://twitter.com/Bum18ryo

ちなみに追い風なんてことをフォローの風なんて言いますね。

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