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村人が勇者を目指してみてもいいですか?  作者: 隈
1章 冒険者への道
3/3

想定外の事態(後編)

 それはかなり激しい戦いだった。

 そもそも駆け出し冒険者ですら手に負えない相手らしいので当たり前だ。


 1つ、2つと、どんどん傷が増えていく。

 体力ももう残り少なかった。


「──ッ!!!ソル!!回復できるか!?」


「アロルド、もう俺も魔力がないよ・・・!」


「──チッ・・・!!!」


 ソルの魔力ももうほぼない。ポーションを飲んでも魔力の回復は追いつかないし、この攻撃では体力回復ポーションも意味をなさない。

 まさにジリ便だ。


 どうしようか、そんな事ばかりが頭を巡る。


(すこしだけ・・・かしてやる・・・)


 森に行った時に聞こえた声がまた響いた。

(貸すって一体何を・・・)

 ふと気がつけば手先に凄い勢いで熱が流れてゆく。

 全身の血が指先に集中していくような・・・そんな感覚だ。


「アロルド、一体何を・・・」


 そんなソルの声が聞こえた瞬間、眩しい閃光が放たれ、そこにはもうフェンリルの姿等跡形もなく消えていた。


「アロルド・・・」


「今の見てたか・・・?なんだあれ・・・」


「見てたよ・・・魔法じゃない・・・。一瞬だけど何か不思議な影が見えた。精霊・・・。いや・・・あの気配はそんなもんじゃない。」


「声が聞こえたんだ・・・すこしだけ貸してやる。そう言ってた」


「なんかヤバいのに憑かれてるんじゃないの・・・?」



 もし俺がヤバいのに憑かれてたとしたら・・・ともかく窮地を救ってくれたんなら、多分悪い者じゃないとは思うけど、聖書に出てくる悪魔とかだったら困る。

 そもそも契約無しに悪魔が呼び出せるのか・・・?そんな前例きっと無いと思うけど。

 何はともあれ、この謎の力は要様子見と言った所だろう。


 気づけばもう空が薄暗く変わって行き夜明けも近そうだ。

 俺は全く寝てないけど。

 俺たちは、今日の出来事を教訓に、大きい街ではケチらずに宿屋を借りることを此処で誓ったのであった。



 俺たちは2日間をルッシュタルトで過ごした。

 流石街道沿いの宿場町なだけはある。行き交う人も物も、そして街はどこも活気があって賑やかだ。


 辺鄙な村から来た俺たちにとってはその全てがとても新鮮に思える。


「食料は買った?」


「いんや...まだ」


「リュートに行く気ある?」


「なんだよ、俺が行く気ないみたいに言うな!」


「いや、だって凄い寛いでんじゃん」


 おい誰かこのハゲ殴ってやれ。そう思うくらいには失礼だぞ。

 違う。ちょっと居心地良かったとか、ご飯が美味かったとか、そういう訳じゃない。

 ちゃんとプランは練ってるつもりなのだ。


「明日出発な、それでいいだろ...?」


 ソルは少し眉を顰めたがそんなのは知らない。

 そもそも勝手についてきたのはあいつだし。

 だからといってこのままでは収入も無い手前、確実に金欠になる。今こうして居られるのはあくまでも、あのフェンリルの素材を運良く回収出来て其れを売って金にしたからだ。

 ギルドに登録しないことには配当金も得られないし、収入ゼロなのは困る。


 ただもうちょっとだけ...ルッシュタルトの街を堪能してもいいと思うんだよな俺。


「ソルー。俺ちょっと出かけてくるわ」


「え、ちょっと!明日の準備は!」


「んー帰ってからするから」


 そう言い残し俺は部屋を出る。後ろでソルが喚いてるが気にしない気にしない。こういうのは気にしたら負けなのだ。


 あのフェンリルの一件があってからすぐ様俺たちはルッシュタルトの宿屋を借りた。1番安い部屋なので屋根裏近くの3階の端っこだ。そんなに広くはないが、重い荷物を抱えて昇り降りするのは正直苦痛だと思う。


 俺は3階から一気に階段を駆け下りて外へと出た。

 今日も素晴らしい位の晴天で気持ちがいい。

 まだ春の半ばなので風は多少冷たいけれど、その冷たささえ丁度いいと思える。


「今日は東側に言ってみようかな」


 聞いた話によれば武器屋に魔道具宿、宝晶石店なんかがあるらしい。武器はちょっと気になるし、魔道具も少し見てみたい。宝晶石は武器の練成で必要になるらしいけど正直あんまり知らない。


 俺は新しい武器を楽しみにしながら東の区域へ軽い足取りで向かった


 ────────────────────────


 今さっきアロルドが出ていった。

 こんな事はここに来てから毎日なわけだけど、怠けすぎだ。

 昨日は夜遅くまで酒屋に居たらしいし、その前は娼婦に誘われて危うくぼったくられる所だったらしい。


 そうなれば今日は何をやらかすのか気が気ではない。


 アロルドに財布を持たせておくと際限なく使うので財布の紐は俺が握っている。



「はぁ....。」


 ため息が部屋に響く。

 当の本人は明日に出発だと言っていたが、準備するのは俺なんだから。

 目の前にアイツがいたら間違いなく本気で拳をお見舞している気がする。

 付いていくと言ったのは俺だけど、こんなんじゃ1人で行かせなくてほんとよかったと思う。

 リュートに着く前にこんなんじゃ乞食間違いなしだ。


 自覚があるのかないのか...何はともあれ今日は何事もなく帰ってきてもらいたい。介抱なんてしたくないから。




凄い期間があいちゃいましたけど生きてます。

年末って忙しいですよね。

途中からソル視点になりますが次もソル視点が続きます。今回ちょっと短めなので次回はもう少し頑張りたいところ

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