押し入れの中は真っ暗
いつものようにイタズラをして遊んでいたら、いつものようにママに怒られてしまった。
「こら良介! また部屋の壁に落書きしてっ! おしおきよ!」
ママはそう言って、僕を和室に連れていった。
そして押し入れの襖を開けると、ママは僕の背中を押した。
そこでしばらく反省しなさい、という意味らしい。
僕は仕方なく押し入れの中に入った。
すると、そこには先客がいたことに気づく。
押し入れの中に入っていたのは、僕のパパだった。
「パパ、なんでこんなところにいるの?」
僕がそう尋ねると、パパはこう答えた。
「う、うん……。ちょっとママの知らない女の人と遊びに行ったのがバレちゃってね……今、反省中なんだ」
パパは気まずそうに頭を掻いていた。
その横顔には、いつもの頼りがいのある面影はどこにもなかった。それを見た僕は、大人になっても押し入れの中にだけは入りたくないと思った。
その日から僕は、もう勝手に、部屋の壁に落書きをしないことを誓った。