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閑話:人形師クリム・ネージュの災難(幸運?)

かなり短めです。





・・・・・・僕はきっと夢を見ているんだ。






今日は朝から良い精神状態で、いつも以上に人形(こども)達の製作も捗っていた。いつもこの状態が続けば言うことはないのだけれど、人間とは不思議なもので良い状態と悪い状態が繰り返し、波の様に寄せては引いたり、同じように見えて微妙に何かが違う、そんな感情や気分の(ムラ)が必ずある生き物なのである。それを理解しているからこそ、気分が乗っている時に、出来るだけ最高の素体(パーツ)人形(こども)達に与えてやりたい。そんな思いから、店の奥の工房に籠って作業をしていた(僕は人形師として名を馳せてはいるものの、店が物凄く繁盛しているかと言われればそうではない。ぬいぐるみのような手芸を用いて作る人形に比べ、僕の作る人形は木を基礎(ベース)とした、本格的なもので、販売価格もそれなりにかかるものなのだ。そう毎日繁盛するほど売れるわけでもないし、僕一人が制作しているため一体を作り上げるのにもそれなりの時間がかかってしまう。なので客引き用に何体か店に展示はしているけれど、基本、予約制を取っている。)のだけれど、あまりにも作業に熱中しすぎていてはっと、我に返ったのは自分の体が空腹を訴えた昼下がりだった。




「・・・・・・粗方素体(パーツ)は出来たし、あとは組み合わせて、服を作れば・・・うん。予定日よりも早く完成できそうだ。」




時間が出来れば、もう少し凝った衣装を作っても良いかもしれない。この人形()を注文してくれた商家の主人は前金をかなり弾んでくれていたし・・・と、そんなことを考えながら予め昼食用にと、近くのパン屋で購入していたベーグルサンドを頬張っていると、店の方から来客を告げるドアベルがカランカランと鳴り響いたのだ。




急いで口の中のものを飲み込み、身なりを軽く整えて店の方へと向かうと、そこに居たのは小さなお客様で・・・




思えば、何故幼子だけでこの店にやってきたのかだとか、もっと疑問に思うべきだったのだ――――――――――――――――















「さて、『さがしもの』もみつかったことだし、あとのことはパンドラにまかせて、ぼくらはかえろうか。」




ウィッグを被り直しながら、この国の第一王子、アレクサンドル様は一緒に連れてきていた少女に微笑みかけた。・・・同年の子供たちにはない、聡明さと、大人顔負けの交渉力。そして何より動かすことが現代では不可能と言われていた『旧時代の遺産(アーティファクト)』をいとも簡単に動かしてみせた(しかもその方法が口付けだなんて、斬新すぎる!)その奇跡とも呼べる力を目の当たりにして、最近王都で噂になっている内容はあくまで噂にしか過ぎないのだと実感していた。




(『民の前に滅多に姿を現さない引きこもり王子』『勉強嫌いな我が儘王子』・・・・・・・王子殿下はきっと、年に見合った教育など今更した所で遅すぎるのだろう。もし彼に勉学に励むよう仕向けるのならば王立学院の高学年レベルの問題を出すべきなんだ。・・・いや、それも簡単に解いてみせそうな気もするけど・・・それに、引きこもりなんかじゃなくて、王子としてではなく民に紛れて行動しているのだから、そりゃあ民だって見抜けるはずがない。)






「え・・・いいの?パンドラをつれてかえらなくて・・・」



「うん。だって、いまのパンドラはこせきもなにもないそんざいだからね。そんなものをきゅうにつれてかえるわけにはいかないし、なによりこのえきしたちにあやしまれてしまうだろう?・・・いちおう、みつかったときのために、パンドラのみぶんやぼくのせんぞくじじょとしてつかえるけいやくしょはよういしてあるけれど、それもパンドラじしんがしろまできて、めんせつをうけなきゃいみがないからね。」



人形として持って帰るには流石に大きすぎるからしょうがないよね、と苦笑した王子殿下はすっと、名前まで決めてしまっている『旧時代の遺産(アーティファクト)』の自律式人形(ドール)に視線を投げ「一週間くらいでいいかい?」と問いかけるとその自律式人形(ドール)は『そうですねぇ・・・ボクとしてはもう少し早くご主人様(アレクさま)の所に戻りたいんですけど・・・この(ボディ)に慣れるのにも時間がかかりそうだし、そのくらいが妥当だと思いますよ。』と、緩慢な動きで自身の動作を確認しながらそう言った。(・・・声とかどうやって出してるんだろうか?それに現代の言葉をどこで習得したのだろうか?と、疑問が尽きない。)




「・・・そういうことだから、クリムさん。しばらくのあいだパンドラのこと、おまかせしますね。」



「へ?あ・・・はい・・・それは・・・お任せ下さい?」



「いっしゅうかんごにむかえのばしゃをこちらにてはいします。それまでにしっかりとパンドラからちしきをえてくださいね。」




期待してますと、愉しそうに笑った王子殿下に、僕はただただ頭を下げるだけで精一杯だった。




そう・・・きっとこの出来事は仕事疲れの影響で見た・・・白昼夢のはずなんだ・・・・・・














他のキャラ視点を挟むか、時間を飛ばして本編を持ってくるかで悩んだのですが・・・もっと文才が欲しい・・・orz

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