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閑話:暗躍する存在と抗う者

フラグ回・・・のような、そうでないような・・・




――――――――世界が、創造神(かみ)の怒りに触れ一度滅びた時、ボクは誓ったんだ。




もしも・・・・・・もしも、ボクが壊れることなく生き延びたのならば、その時は・・・・・・・




お母様(パルティミア)魔導具(こどもたち)を全て集めて・・・・・・




創造神(かみ)に、一矢報いるのだ、と―――――――――――――




































厳かな大聖堂内に、不思議な旋律のパイプオルガンの音が響き渡る。



演奏主たる年若い青年の心は非常に穏やかで、ステンドグラスから差し込む光と相俟って、幻想的な光景を生み出し、訪れた人々の心を奪い、魅了する。



演奏の合間にそれを確認した青年は、それまで浮かべていた穏やかな表情を崩し、何処か見下すような笑みを浮かべた。




「・・・・・・創造神(かみ)(おもね)る為の大聖堂(ばしょ)で、知らず、その信仰心を奪われている事に、彼らは気づきもしなんだろうね。」




ぽつりと呟いた青年の言葉は、大聖堂に集う信者たちには届かない。その代わりに、それまで穏やかだった曲調が、昏く、不協和音を奏で始めるが、今の彼らに、それを不信に思う術はない。青年の奏でるパイプオルガンの音色を聞いたが最後。その心は旋律に宿った青年の意思に縛られてしまうからだ。




「・・・アルシエール公国の内戦は日々激化の一途を辿っている・・・。そろそろ【神】の名の元にエスポワール聖教国(わがくに)が介入して仲裁を図る時期が来ているんじゃないかな?」




勿論、喧嘩両成敗。けれど、もし、全ての行いを大聖堂(ここ)で懺悔するならば救いを与えてあげる・・・。創造神(かみ)ではなく・・・このボク(・・)が、ね。




くつくつと愉しそうに嗤う青年の目は硝子玉のように透き通った蒼だが、その奥底は昏く、生気を宿さない。




「・・・聖騎士団の派遣を急げ。我らが行いに逆らう者は創造神の名のもとに異端審問にかけるか・・・もしくは悪魔の下僕として鉄槌を下すように。そして迷える子羊たちには救済を。」



「・・・・・・仰せのままに、大司教様・・・」




そんな彼の背後で敬虔なる下僕(しもべ)達が、まるで青年こそが創造神であるかのように恭しく跪き、頭を垂れるが、彼らの瞳にもまた、生気は失われ、暗く澱んでいる。そんな状況でも青年は嗤う。




「・・・・・・あの時は人間(ヒト)が世界を動かしていたけれど、今回は違う・・・・・・それでも創造神は世界を滅ぼしにかかるかな?それとも・・・ボクだけを破壊(・・)しにくるのかな?・・・どちらにしても負けるつもりはないけれど。」




見せつけてあげるよ。お母様(パルティミア)が生み出した、神をも超える魔導具の力を。










































最近、大聖堂を中心に慌ただしく殺伐とした雰囲気を醸し出している事にエスポワール聖教国の頂点に君臨する教皇・フレデリック7世は気づいていた。




「・・・・・・リオネル・・・いや、確か先日彼は退位して今はオルフェウスと名乗る青年が大司教の座に就いたのだったか・・・・・・」




見かけない顔だったなと、洗礼の儀の際に見えた青年の姿を思い浮かべ、教皇は眉間に皺を寄せた。



見目麗しいその姿は創りものめいていて薄ら寒いものがあったが、彼は知っている。それすらも神に愛されたからだと、肯定的になるということを。そして得体の知れないその生い立ちは、神が遣わした使徒である、などと妄信的なほど受け入れやすいということも・・・。



「全ての不可思議が創造神に由来するものだと、何故そこまで盲信できるのだろうか・・・」




彼とて、聖教・・・創造神の教えを説く者ではあるが、宗教と現実問題は時として同一ではないことを知っている。宗教とは心の支えであって、何をしても許されるというわけではない。しかし、ここ最近の、大聖堂に礼拝する信者たちは何処か傲慢で恐れ知らずな考え方ばかりしているように感じる。・・・そう、オルフェウスが大司教になってからなのだ。




「・・・・・・・・・このままでは私の身も危うくなるかもしれんな。・・・・・・トリスタン!」



「はっ、お呼びでしょうか、教皇様。」



「・・・そなたとそなたの妻に命ずる。・・・我が息子セルジュを連れて、この国から早急に出国するし、アルジャンテ王国へ逃げ延びよ。」



「!!?」



「・・・・・・遅かれ早かれ、この国は大司教の手の内に落ちるであろう。そうなる前にせめて息子だけでも、助けてやりたいのだ。」




私に全てを守れるだけの力があればよかったのだがな・・・と、フレデリック7世は自嘲したが、その瞳に宿る決意は揺るがない。




「・・・・・・っ・・・・・・しかと、その命、承りました。我らが全てを以て必ずやセルジュ様をお護り申し上げます。」



「・・・うむ。頼んだぞ、トリスタン。」



「はっ。」





恭しく跪いた騎士は、教皇の決意に何とか言葉を紡ごうとするも、溢れるのは無意味な空気音のみで、絞り出すように紡いだ言葉は任務に関する了承の意のみだった。しかしそれを満足そうに受け取ったフレデリック7世は、袖に忍ばせていた小箱をそのまま騎士トリスタンに手渡した。




「・・・これは?」



「それはセルジュが時期教皇であることを示す・・・謂わば身分証のようなものだ。」




教皇に促され、小箱を開けると、そこには美しい色取り取りの宝石が散りばめられた十字架(ロザリオ)が収められていた。




「・・・本来ならば、これは私が持つべきものなのだが・・・・・・何故か見えない力に拒絶されているようでな・・・恐らくセルジュにならば持つこともできよう。」




そんな気がするのだと笑った教皇に、騎士は再び了承の意を見せた。






星は集う。



運命の舞台へと―――――――――





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