1-9 新しい出会いを求めて
遅くなった。とても遅くなった。正直申し訳なさ過ぎて申し訳ない。
前半は説明ばかりなので楽しくない可能性大です。頑張って呼んでください!
次の日の昼から俺はじいさんから魔法を習った。
精霊の名前を知ると力を込めて呼ぶだけで召喚できるらしい。じいさんに言われた通りデルの名を呼ぶと目の前に光の球が出現し、スキルを手に入れた。
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スキル:召喚を獲得しました
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とんでもなく気になるスキルだったが、じいさんとの修行の最中だったので何もなかったように練習に励んだ。
じいさん曰く、精霊魔法は基本精霊の姿が見えないまま使うので普通は術者の魔法のイメージを精霊に送り、それを精霊が理解し、術者をサポートする。
つまり術者→精霊→術者の順に経路を負わなくてはいけない。
しかし精霊と意志疎通ができ、さらに信頼関係を築けていると、術者のイメージを受け取った精霊が自身で魔法を使ってくれたり、そのまま術者が精霊のサポートを受けて自分の思うまま自分で魔法が使える。
この場合術者のみで魔法が完了、または術者→精霊のみで終わる。
正直に言うとそこまで変わらない気がした。なんだ、一つすることが減っただけではないか、と。じいさんには言わないけど。
魔法の練習は正直簡単すぎて何も言うことが無い。
デルを呼んだ後、じいさんに言われた通り10ボルトの魔法を使用する。10ボルトは小さな電気のイメージで掌の上に電気がバチバチ言っている感じだ。
そのイメージを持った、その瞬間すでに俺の掌には魔法が展開されていた。そしてまたまたスキルを手に入れる。
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スキル:精霊魔法(雷)を獲得しました
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驚いてデルを見ると自慢げにゆらゆら揺れていた。そのままじいさんを見ると、これまた面白く驚いて口を開けて惚けていた。
後で聞いた話だが普通魔法は使えるようになるまで5年はかかるとか。これは俺が凄いのではなく、全てデルの力なんだろうなあ、と思いながらじいさんの絶賛を聞いていた。
申し訳ないが全く喜べなかった。
こんな感じでじいさんの要望は膨らんでいき、言われた魔法をその場ですぐ成功させてしまうので、あっというまに上級まで覚えた。
魔法の最高峰は神級、その下は天級らしいのだが、生憎じいさんが教えられない、と言うので諦めた。多分俺よりじいさんが悔しがってた。
さて、手に入れた精霊魔法だがこれは他のスキルと違ってMPを消費する。大体初級で50、中級で200、上級で1000、そして天級は10000らしい。
魔法の種類にもよるが大まかには合っているはずだが全く規則性が見つからない。
じいさんもおかしいとは思っていたようだが、上級が使えたあたりで何かを悟ったように俺の魔力の心配をしなくなたった。
そして今日、じいさの教えられる限りの魔法を習った俺は何をするのか、と思いながらじいさんといつもの森へ来ていた。
☆
「全く…まさか上級も扱うとはなあ…」
「ははは、全く自分でも驚きです」
「うむ、しかしこれで雷魔法で教えられることは無くなったの」
「そう、ですね。これからは何を?」
待ってました、とばかりに笑顔を広げてじいさんは言った。
「うむ!今日は自分で精霊を探して来てほしい!」
☆
「じいさんはもう俺に対して遠慮をうしなったのでは」
「そう、だね。レオンは何でもできそうだから」
「何でも、ねえ」
じいさんに森へ送りだされて数分。俺たちは一人も精霊を見つけることなく森をさまよっていた。
確かにスキル名は精霊目視だった。しかしデルの見つける精霊を俺は見ることが出来なかったのだ。デルが言うには、スキルレベルが足りないのかもね、と。
精霊側に見せる意志があれば見えるだろう、とのことだったのでこうして森を当ても無く歩いているのだ。
「なあ、デルはなんで俺をそんなに…信頼っていうの?まあ、信じてるの?」
「信頼?」
「あー、じいさんが言ってた。信頼関係がないと術者だけで魔法は簡潔しないって」
「ふうん。まあ、信じては、いる、のかな。うん。なんでだろうね」
「お前なぁ…」
「…ん、待って」
「ん?」
急に止まって真剣な声色で話し出すデルに困惑しながら、言われた通りその場に立つ。
するとどこかで聞いたような唸り声が聞こえてきた。
「これは…まさか」
「魔物、だね。まさかレオンに突っかかって来るやつがいるなんて」
「どういう意味だよ」
「どうする?」
戦うか、逃げるか、という事だろう。正直戦うのは極力避けたい。今の俺なら、と思わないわけではないがやはり恐怖がある。
しかしこのままでいいのか、とも思う。この世界に来た以上これから戦闘は避けられないだろう。
「…どうすればいいのかな」
「…戦えば?負けないでしょ」
「ああ、まあ、そうだろうなあ…おっし、戦うか」
一応手にナイフを構えて魔法の準備をする。デルは心なしかわくわくしてるように見えた。光の球なんだけど。
「くるよ」
そうデルが言った瞬間あのレッドウルフが俺に襲い掛かってきた。全くのノーモーション以上に姿も見えていない状態で襲われて、避けられる訳がなかった。
レッドウルフの爪はキレイに俺の咄嗟に出した腕を切り裂いた。
「いっ…」
微妙な痛みに声を上げて腕を庇うとデルが焦ったように叫んだ。
「レオンっ!…落雷!」
「ガルルラアアアァァ…!」
雷がレッドウルフの真上に落ち、レッドウルフは炭となって倒れる。無機質な音が数秒の戦いの終わりを告げ、俺はデルに礼を言った。
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スキル:痛覚耐性Lv.2を獲得しました
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レベルが上がりました
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「あ、りがと。デル」
「…いや、大丈夫?」
腕は大きな傷があり、そこから血が垂れていた。皮膚の下の肉が見える。
「んん…グロいけどそんなに痛くは無い。大丈夫だって」
痛覚耐性のおかげか、見た目よりも痛くない腕をどうしようかと見つめる。血が止まる気配はない。
「よかった…いや、よく、ないね」
「ん?」
様子のおかしいデルに、腕から目をはなして見ると、俺の周りに色とりどりの光球が浮かんでいた。
「…は?」
もはやデルがどれか一瞬迷うほどであり、森の中で大量に見ると微妙に他と色が違うんだなあ、と場違いなことを考えた。
「僕の魔法につられて…?ああ、いや、レオンの力か…」
「俺の…?」
「説明は後、精霊が沢山見えるよね?どうする?」
俺のせい、というのは気になるが、確かに今はそれどころではない。
じいさんの要望は新しい属性の精霊との契約。今がチャンスなのは間違いないだろう。
「そうだな、じゃあ便利そうな火か水がいい。もしくは強いやつ」
「強いやつ?」
「まあ、そりゃ下級より中級がいいし中級より上級がいいだろ?」
「…まあね。じゃあ僕は彼らを推そう」
そう言ってデルが連れてきたのは数多くの精霊の中、一際大きく輝く黒い光の球と、白い光の球だった。
この森の話早く終わりたい…先を考えるのが楽しいんだよ…!
最後まで読んで頂きありがとうございました。