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選ばれたのは魔王でした。  作者: 草原
第一章 クヌール森林とおじいさん
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1-8 精霊との契約

ゴールデンウイーク暇だったのにこの遅さ。流石に頑張ろうと思いました。


※今までの鑑定結果の表記の仕方が変わってます。

「ああ、はい。おそらく精霊だと思われるものが見えます」


 そう言った瞬間のじいさんの顔は見ものだった。顔では無表情だったと名言しておくが、心の中では爆笑、程でもないが笑ってしまった。

 だって本当にポカーン、なんて効果音が似合いそうな顔だったのだ。


 数秒の硬直から逃れてやっと理解が追いついたのか手で目を覆って聞き返してきた。何度聞いても言葉は同じですが。


「…本当に精霊の姿が…?」


「ええ、光の球みたいなのが」


「光の…確かに、そんな話を…」


「あー、珍しい、んですかね」


 あまりのじいさんの反応にこのスキルのことは話さなかった方が良かっただろうか、と後悔するがこれからじいさんに魔法の修行をしてもらうのだ。こういうのは教えておいた方が後後困らない。


「珍しい、といえば珍しい。…人族じゃめったにお目にかかれん」


「…へえ、人族だけですか?」


「いや、他にも珍しい種族はおる。と言うか見える者は殆どおらんじゃろう」


「――」


 そんなに珍しいのかよ。案外すんなり獲得したしそこまで大きな話になるなんて思わなかった。

 じいさん以外の人には極力話さないようにしよう。面倒くさそうだ。


「…しかし全くいないわけじゃあないしな…まあ、あまり言いふらさない方がいいと思うぞ」


「はい、そうします。…えっと、精霊の件ですが…」


「あ、ああ。そうじゃな、見えるのなら少し話でもしているといい。わしは道具をもってこよう」


「あ、はい」


 そう言ってじいさんは蔵のある方へ行ってしまった。精霊と二人残された俺はとりあえず挨拶からすることにした。


「あー、えっと、放置しててごめん。俺は…レオン、レオンだ。よろしくな」


「…ん。よろしく」


 光の球が喋るのか若干不安だったが杞憂だったらしく問題なく声が聞こえた。声は少し高いが幼い少年を思わせるものだった。

 余り喋るのは得意ではないのかもしれないな、と返事の短さから推測するが生憎二人っきりで無言はきついものがある。


「…君、名前とかあるの?えっと、あったら教えてほしいな」


「…デルだよ」


「デルか、デルは俺と契約してくれるのか?」


 じいさんが召喚?した精霊なのでじいさんと契約をしたいのでは、というちょっとした疑問だったのだが…何故かデルは怒ったような仕草で俺に近寄ってきた。

 いや、光の球だから勘だけど。


「…手」


「手?」


 手がどうかしたのかと自身の掌を見るがなにも変わったことはない。改めてデルに目を向けると出して、と追加の命令がでた。

 言われた通り掌をデルの方向に向けて突き出すと得意げにススス、と寄ってきてデルが突然光った。


 余りに予想外だったので驚いて固まっているとデルが意気揚々と終わったよ、と声をかけてきた。

 何が、と切り返す暇もなくデルはバイバイ、と消えてしまった。


 あれ?契約は?


 じいさんが折角呼んでくれた精霊の機嫌を損ねて帰られるとかまじか。え、じいさんになんて言えばいいんだ。


 取り返しのつかない事をしたのでは、と焦っているとタイミング悪くじいさんが帰ってきた。


「ん?精霊はどうしたんじゃ?」


 じいさんは精霊と話せはしないものの存在を感じることはできるようで、分かりにくい俺の変化よりも精霊の有無に疑問を問いかけてきた。

 自分で精霊を呼ぶことなんてできないので正直に言うしかないと腹を括って説明する。


 名前を聞いた事。契約をしてくれるのか、と聞いたら突然光って帰ってしまった事。


 まとめてみると殆ど会話せずに終わったものだとむしろ関心してしまう。これ俺悪くなくね。


「んん?…光った?」


「え?ええ、なんか手を出せって言われて言う通りにしたら手に触れて光りました」


「っ、そ、そりゃあまさか…」


「?」


 それっきりブツブツと呟いて考え込むじいさんに気軽に声をかけるなんてできずに座ってじいさんの復活を待った。



 ☆



 それほど時間もたたずにじいさんは少し待っておれ!と走り去ってしまった。なんだろう、もう一度精霊呼んでくれるのかな、と期待しながら暇なのでウィンを呼ぶ。

 最近暇な時はウィンを呼ぶのが習慣になってるなあ。


 ―――――

 レオン・グンジヨート 人族 ***

 Lv.4

 HP:133/150 MP:2350/2350(+500)

 攻撃力:118 防御力:94

 魔法攻撃力:170(+50) 魔法防御力:130(+30) 素早さ:80


 契約者:デル

 ―――――


「あ」


 見てはいけないものを見た気がして思わず呻くが表示は何も変わりはしなかった。

 俺の言動に怒って消えてしまったと思っていた精霊デルは、なぜか俺とすでに契約していた。


「…何時だ?いや、普通に考えてあの光か…。あ、だからじいさんも?」


 じいさんが慌てて走って言ったのは俺がすでにデルと契約している可能性があったから?

 ああ見えてじいさんは結構博識だ。いや、俺から見たら、という可能性もあるか。


 それでも、なんとなくじいさんは凄い人なのだと思う。


 じいさんがなにをするかは一先ず置いておくと、俺は精霊との契約に成功したことになる。

 これでじいさんの準備を無駄にすることなく次の修行に入れる、と少しテンションが上がってきた。


「ん、そうだな。あとはじいさんにどう説明するか…契約したからこそできる事をすればいい」


 例えば…。


「あ、俺じいさんに精霊と契約してからの事何も聞いてないわ」


 これも結局じいさん頼みなのだと感じてしまい自分で自分に苦笑する。なんとも一人でやっていけないものだ。


「じいさん待つしかないかー」


 ごろん、と寝転がると地面から何かが近づく音が聞こえた。

 寝転がったままそちらを見るとじいさんが見えたので勢いよく起き上がる。じいさんはなにか小さな黒い瓶と紙とペンを持っていた。


「あ、おじいさん。その瓶なんですか?」


「あ、ああ。もしかしたら既に君が精霊と契約しているかもしれんと思ってな…。確かめるために持ってきたんじゃ」


「あー、そんなものがあるんですね」


 じいさんが凄すぎて驚けない。


 良く見ると黒い瓶はインクだとわかる。精霊と契約しているかがわかる、と言うことは魔法を使った道具かなにかだろうか。


 ―――――

 名:能力値書き出しインク

 品質:AA

 説明:魔道具

 インクに血を垂らして紙にペン先を置くだけで能力値(ステータス)を勝手に書きだすインク。かなり高級。インクが無くならない限り何度も使用できる。血を一度混ぜると二度と他人は使えない。

 ―――――


「ステータスを書きだすインクなんじゃが…大丈夫か?」


「えっと、何がです?」


「いや、他人にステータスは見せんほうがいいじゃろう?なんならわしは見んが」


 一瞬鑑定の結果に驚いた自分を見て言ったのかと思ったが違ったらしい。

 しかしステータスを見られるのは少しマズイ。自分のステータスが一般的か微妙な上、スキルと称号は完全アウトだ。


「あー、そう、ですね。そうして貰えると助かります」


「うむ、その瓶の中に血を垂らしてそのインクで紙に何か書こうとしてくれれば勝手に動くはずじゃ。余った分は君にやろう」


「あ、ありがとうございます」」


 魔力紙とかの時と同じ気持ち――もったいない、こんな高級なものを貰って申し訳ない気持ちになるが基本俺は貰えるものは貰っておくスタイルなのだ。

 罪悪感が無いとは言わないがありがたく貰っておこう。


 というかすでに分かっているのに使う必要があるのか甚だ疑問だ。これから俺が自分のステータスをこのインクを使って調べることなんてないだろう。

 だってウィンを呼べばすぐにわかる。


 うん、使わずにとっておこう。ごめんじいさん。


 血を垂らさなければただのインクらしいのでそのまま万が一を考えて少しステータスを弄ろう。


 適当にどこまで書かれるのか分からなかったので能力値とレベルのみ上げて書き上げた。スキルは短剣だけLv.1で書いた。


「おじいさん、終わりました」


「うん?早いな。どうじゃった?」


「契約者って所にさっきの精霊の名前があります」


「やはりそうか…!君と契約した精霊は上級以上の精霊じゃ!」


 紙を乾かして折りたたみながらじいさんに近づくとじいさんは嬉しそうに話し始めた。


「上級以上…」


「ああ!精霊自ら契約をできるのは上級以上なんじゃよ!わしは中級を呼んだつもりじゃったんじゃが…まあ、いいじゃろう」


「上級って珍しい、んですよね?」


「勿論じゃ!正確には分からんが200人おらんかったはずじゃぞ」


「200…」


 少ないのはわかるのだが…があまりピンとこないな。


「ふむ、まあ今日は予定通り精霊と契約できたしな。帰って晩御飯にでもしようか」


「えっと、そうですね。いつもすみません」


「いいんじゃいいんじゃ。偶には人と過ごさんとな」


 じいさんのテンションについていけない俺に気を使ったのか、もう帰ることになったので精霊魔法の練習は明日の昼からだろう。

 少し楽しみだが今日は色々あって疲れた。じいさんの言う通り晩飯を食べて明日に備える事にしよう。


最後まで呼んで頂きありがとうございました。

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