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選ばれたのは魔王でした。  作者: 草原
第一章 クヌール森林とおじいさん
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1-5 魔法について

そう言えば最近自腹でペンタブ買いました。使い方わからなくて死にそう…。

 実験してみた結果他人に俺のウインドウは見えないらしい。隣でウインドウを出し入れしても全く気にしない。

 これは覗かれる心配とか悪用の危険もなくなるな。


 ウインドウって言いにくいしもうウィンでいいか。うん、呼びやすい。正式名称もわかんないし、本当はウインドウじゃないかもしれないなら全く問題ないだろう。


 っとまあ、そんな無駄なことを考えながらじいさんについていくと家の裏から少し離れた場所に出た。

 少し森が切り開かれていて綺麗な場所だ。


「さて、まずは魔力紙じゃ」


 そういってじいさんはどこから出したのか俺に白い紙切れを手渡した。


「まりょくし?」


「やはり知らんか。この紙は魔力に敏感でな、魔力をある程度持っていればいればその段階によって色が薄く変わるんじゃ」


 素質のない順に白、黄、緑、青、黒らしい。なんともまあ、便利な紙があるんですねえ。


「あれ、じゃあ白だったら…」


「まあ…魔法は無理じゃろうな。…じゃがまあ、大丈夫じゃろう」


 お主なら大丈夫じゃ、と念押しされて、紙に魔力、というか力を込めてみる。するとじわじわと色が変わってきた。どうやら白の線は無くなったらしい。


「お、緑じゃな。なかなかじゃないか」


「んー、緑ってことは…真ん中か。まあまあだなあ…」


 無いよりは断然マシだがどうせなら黒に行きたかった。まあ、そううまくは行かないか。


「十分じゃよ、まあレベルが上がれば素質も上がる可能性があるらしいからの。さ、次は魔法について説明しよう」


「はい!お願いします!」


「うむ。そもそも魔法はわしらが起こす…こともできるがこれはわしが教えられんからな。まあ今回は別の方法じゃ。魔力を余分に持つ生物、つまりわしらが精霊に魔力を渡し、その魔力で精霊が魔法を使うのじゃ」


 精霊…ってさっきヘルプで見たやつか。詳しく知りたいがもう新しい情報はなかったんだよな…。


「そして精霊にはそれぞれ司る属性がある。今わかっているのは火・水・風・土・光・闇、それと氷・雷・時間・空間なんかじゃな。まあ大抵の人間は4、6大属性使いじゃから、他のはあんまり使い手も精霊もいないんじゃ。まあ、精霊に頼らない魔法は無属性や身体強化なんかもある。基本は1人1属性の適正じゃな」


 良く聞く属性の名前だな。氷や雷も区別されてるのは…すこし珍しいか。


「しかし基本、というだけで稀に、2つや3つ適性を持っとるやつもおる。この利点は合成魔法ができるところじゃ。例えば水と火なら熱湯なんかが作れる。これを応用したのが生活魔法じゃ。体の汚れを落としたりできるから便利なんじゃが…まあ最低火・水・風は欲しいからの…使い手は殆どおらん」


 え、じゃあ水属性持っててもお湯は作れないのか?それって凄く不便だと思うんだが。


「さ、説明はこれくらいじゃ。わかったか?」


「はい、大体は」


「うむ、それでは次の審査じゃな。この紙にさっきと同様に魔力を通すんじゃ」


 そういってじいさんはまたもやどこからか紙を出して俺に渡した。


「え、魔力紙ですか?」


「いや、それは属性紙と言ってな、一番得意な属性の色を示すんじゃ」


 魔力紙と見た目で判断がつかない…。あ、鑑定すればいいのか。


 ―――――

 名:属性紙

 品質:A

 説明:魔法使いの特異な属性を見分ける紙。それなりに高級品。色はそれぞれの精霊の好きな色を示している。

 赤は火、青は水、緑は風、茶は土、白は光、黒は闇、氷は水色、雷は黄、時間は藍、空間は紫、召喚は橙、幻惑は桃になる。

 ―――――


「ほれ、早く魔力を込めるんじゃ」


「え、あ、はい」


 高級品をたやすく俺に使わせるじいさん…。いいのか俺、家に泊めてもらった上にこんなにしてもらって…!しかし言えない、魔力紙も属性紙も知らない俺が何故高級品なのは知っるんだよ…。

 仕方なく聞くのは諦め素直に魔力を込める。すると魔力紙と同じ様にじわじわと色が変わっていった。


「えっと、黄色、ですね」


「うむ、これは雷じゃな」


 結構レアじゃないだろうか。しかし雷って使いにくそうだなあ。

 このあと鑑定内容と同じ事をじいさんが説明してくれました。


「…へえ」


 それ以外になんて答えればよかったんだろうか。

 俺の気のないような返事にもじいさんは動じず話はそのまま進んでいく。まあ、正直ありがたい。


「フム、まあ今日は遅いし精霊との契約は明日にしよう。今日は魔法の基礎でも教えようか」


「あ、ありがとうございます」


 確かに3時から始めて随分時間が経っている。そういう重要で難しそうなのは明日に回したほうがいいのかもしれない。

 素人の俺にはわからないこともあるだろうし素直に従っておく。


「まあ、魔法と言うのは見た目派手で簡単に見えるがそこまで使い勝手は良くない」


「あれ?そうなんですか?」


「ああ、まあ使える者は少ないし便利ではあるがの。その理由として高位の精霊と契約できんことじゃ」


「精霊に高位…?」


「うむ、下から下級、中級、上級、天級、神級となっておる。当然上に行けば行くほど強く、数が少ない。そして精霊は基本見えんからのお…契約を同意無しでするのは下級精霊が精々なんじゃよ」


「なるほど、人族は弱い魔法しか使えないと」


「そうじゃ、稀に上級や天級の精霊と契約する者もいるが極稀じゃ。しかも精霊魔法は先に言ったように術者と精霊の意志疎通ができていないので精霊の使える魔法、使いたい魔法を知れない」


「知れないとどんな不都合が?」


「例えば戦闘で危機的状況に陥った時精霊と意志疎通、つまり信頼関係なんか築いていると精霊が術者の魔力を使って助けてくれる。しかし意志疎通が出来ていないとそのままお陀仏じゃ。実際精霊は術者を嫌っている場合が多いらしい。また、精霊は独自で開発した魔法を持っておったりするからの、意志疎通できないままじゃとどうしても自分のイメージを精霊に伝えて魔法を使って貰う必要がある」


「…俺に見えますかね?」


「うーん、まあ、見えるかどうかはスキル次第じゃからの…運じゃ」


 精霊が見えるにはスキルが必要なのか…?じゃあ俺の固有スキルで手に入るかもしれない。

 明日契約する前に試しておこう。


「そして人間がイメージする現象には限界がある。どうしても決まりきった魔法ばかりできるのじゃよ」


「決まりきった…」


「それをランクごとに分けたものがあってな。明日精霊と契約出来たらその初級魔法から試してみよう」


「おお!例えばどんな魔法ですか?」


 じいさんの説明も一段落つき面白い話になってきた。じいさんは説明というか喋るのが好きなのだろうか。喜々として話していたような気が…。


「雷魔法の初級魔法は…たしか10ボルトじゃな」


「…は?」


 今、地球の学校なんかで良く聞く記号の名前が聞こえた。

 一瞬頭が固まるがすぐにじいさんに怪しまれないよう取り繕う。しかし幸運なことに説明好きなじいさんは俺に気づかずそのまま喋っていた。



「中級はサンダーらへんか、上級は雷槍なんかの形状を変える魔法じゃな。初級はこの辺りが一般的じゃ」


「…沢山あるんですね。ところでその10ボルトって少し独特な名前じゃないですか?」


 不自然にならないよう、さっき気づいた風を装ってさりげなく聞いた…つもりだ。

 じいさんはそういうのに疎いのかそのまま俺の質問に答えてくれた。


「ん?ああ、確か初代の勇者様が氷と雷の精霊を見つけて…それで魔法を作り出したとか…そんな話じゃったな」


 勇者と言う単語に驚きを隠せず小さく目を見開く。しかしそれも些細な変化で余程俺を見ていないと気付かないようなものだ。

 昔、俺が小さい頃義姉に言われたことがある。

「表情が変わらないって…凄いと言うか不気味というか…。いえ、変わってはいるけど自分の意志でしか変わらないのかしら?」

 昔の短所が今現在生かされている、ということだ。無表情、万歳。


 しかし勇者がすでにいたことはまだしも、初代って言うことは何代か続いてるということだ。しかもその初代勇者様は地球、もしくは地球に似た世界の人物、ということになる。

 異世界人は他にもいる可能性がある…。


「あの、今の勇者様は何代目でしたっけ」


 とりあえず勇者は今もいる、ということで話を進めていこう。居るか居ないかを聞くと流石に可笑しいが何代目かならまだ大丈夫だろう。


「あー、たしか…50は切っておったと思うが…すまん。わからん」


「あっ、いえ。十分ですよ!ありがとうございました」


 つまり今勇者はいる。そして俺は勇者の選択肢がある。…どういうことだ?勇者は一人じゃないのか?


「すみません、魔王は…今いますか?」


 魔王も何代目か、と聞こうとしたが自分のイメージの中で魔王は一人、そして一度きりのイメージなのでやめた。


「魔王…?いや、いないんじゃがいるな。…というかいることになっておる」


「?いないのに、いる?」


 訳のわからない事を言うじいさんに聞き返すとじいさんははぐらかすように立ち上がり、ズボンの砂を叩いた。


「うむ…まあ、知らぬのが普通じゃからな。さ、もうここら辺にしとこうかの」


 じいさんは俺の返事も聞かないままさっさと準備を終えてしまった。

 流石にそのまま座っている訳にも、ましてやさらに聞くなんてことは出来ないので慌てて自分も立ち上がり待っていてくれたじいさんに近づいた。


 たしかに森は随分暗くなっていたし、かすかに魔物の唸り声も聞こえるが、なんとも納得のいかない終わり方だった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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