1-4 ヘルプの一端
騒がしく鳴く鳥の声に俺の深い眠りは終わりを告げた。
というか聞いたことない声だったぞ…。なんだグラララアアアアアって…。
いそいそとベッドから這い出して寝ぼけたままの目をこすりながら窓の外を見る。
「…まぶし、あ…昼?」
外は異様にまぶしく太陽も頂上近く上っている。じいさんと取り立てて約束の時間を決めた訳ではないがさすがにまずいだろう。慌てて最初に着ていたあのモブ服を着て外に出る。
「あの、すみません、寝過ごしました!」
部屋ではじいさんが飯の準備をしていたようでちょうどそこにいた。このじいさんなら怒ることは無いだろうけどやっぱり罪悪感が募る。
…明日からは早起き頑張ろう。
「ほっほっほ、いいんじゃよ。長旅と昨日の騒ぎで疲れたんじゃろう。さ、ご飯もできとるから座りなさい」
「あ、ありがとうございます」
確かにじいさんの言う通り俺は思っていた異常に疲れていたようだ。いつもは6時には自然と目が覚めるのになあ…。
まあ、森で歩き回っておまけに魔物との戦闘(笑)だろ?疲れないほうがおかしいよな…。
じいさんに促されて椅子に座って朝ご飯を飛ばして昼ご飯だ。
白いスープのようなものなのでシチューと似た味がした。いい匂いで結構美味しかったです。
じいさん料理うまいのかな。
食事がてら近くの国について色々聞いてみた。旅人の設定なので最近ここに来て次は決めかねてるって感じだ。
「んん?近くの国、か。そうじゃなあ…ここから西に行くとクラント王国の領地じゃな。範囲は狭いがまあ、栄えていたはずじゃ。治安もよかったし戦争も積極的じゃなかったからの」
どうやらじいさんは最近外に出ていないらしく、世情に疎いそうだ。まあとりあえず大体わかればいいので十分だろう。
クヌール森林から西、おそらく現国王はバルーナ・リオ・クラントだそうだ。国王の名前なんて知っていてもなんの役にも立たなそうだがな。
前までは中立国で通っていたらしいが最近は騒がしいらしい。クラント王国には巨大な図書館があるので行ってみては、と進められた。ぜひ行ってみたいな。
次に東側のステナー帝国。ここは迷宮の周りにできた国で、冒険者だとか商人が多く住んでいるらしい。帝国と言うだけあって戦争、と言うか国とのいざこざは多いらしい。
「…それ何年前の話ですか?」
十分とは言ったが戦争とか冒険者、迷宮ときたらもっと知りたくなるだろう?じいさんが60年引きこもってたとしても相当だぞ。
「んん?そうじゃなあ…忘れたわ。はっはっは」
愉快そうに笑うじいさんと一緒に笑う俺。勿論愛想笑いだ。
というかそんなに歳を言いたくないのか?忘れたとか絶対嘘だろ。
聞くな、と暗にそう言われた気がして気まずい雰囲気の中食事は終えた。
まあ、どっちに行くかと考えたら…クラント王国だよなあ。
―――――
スキル:詐術をLv.2を獲得しました
―――――
大丈夫だ。問題無い。むしろ好都合だと、そう思っていよう。
人間嘘をつかないで生きるなんて無理な話なのだ。
☆
「さて、準備して魔法の練習しようかの。3時位でいいじゃろ?」
そう言ってじいさんがどこかへ行く準備をする。文句はないし大歓迎だが遠出するのだろうか?
というか今何時だよ。さっきの飯が昼が12時だとしたら…20分くらいか?…全然わかんねー。
「いいですけど…今何時ですかね?」
「ん?今は…1時前ってところじゃの」
全然違った。聞いててよかったな。
時計ほしいなあ…こう、腕時計もいいけど懐中時計って憧れるよな。かっこいい。…この世界も1日24時間だよな?
「あの、地域が違うと時間の流れも違うって聞いたことがあるんですがここって…1日24時間ですよね?」
「は?そうなのか?聞いたことないが…まあ、そうじゃよ。1日は24時間じゃ。さ、わしは準備しとるから部屋で待っていてくれ」
「あ、はい」
聞いたことが無いってことはこの大陸がそこまで広くないってことか…?じいさんが知らないだけってのもあるが…。まあ、ここは24時間らしいしいいか。
じいさんはさっさと出て行ってしまったので手持無沙汰になる。待ってるって言ってもなあ…3時まで2時間もあるのか…。
何をしようかうんうん考えていると、そう言えばウインドウのヘルプはまだ見てないことに気づいた。うん、暇だしヘルプの確認しとこう。
ヘルプ
―――――
・グランフォース
・種族
・神
・スキル
・魔族
・オート
―――――
とりあえず順番通りにグランフォースからいくか。
―――――
・グランフォース
今、レオン様がいる世界の通称であり、この星の名前でもあります。主に使うときはこの星の名前の意で使われます。わかりやすく言うと「地球」と同じものです。日常会話で使うことはあまり無いでしょう。
―――――
「…え、し、喋った…?」
確かに今、何時ものスキルを獲得した時とは違う、意志を持った声が聞こえた気がした。レオン様、とか地球とか言うし…。
驚きつつ確認のため呼びかけてみるがなにも返事はない。俺が何時もの無機質な声を聞き間違っただけ…とか。
声のせいで内容が全く入ってこなかった。えーっと、星の名前がグランフォースか。なんかかっこいいなあ。
何時までも何もしないわけにはいかないので種族をタップしてみる。
―――――
・種族
グランフォースには主に5つの種族がいます。人族、魔族、神海族、天翼族、獣族です。他にも死霊族、竜族、精霊族などとても様々な種族が住んでいます。その中でも特に文明を築き、力を手に入れていった種族は先の5種族になります。
「人族」「魔族」「神海族」「天翼族」「獣族」
―――――
ファンタジー宜しくな種族が勢揃いか。意外と沢山いるんだなあ。
馴染み深いのは魔族と獣族か。その主な5種族はさらにタップする場所があるんだが…。
「まあ、これは後ででいいか」
しばらくは人族領にいるつもりだし、人族ってつまり普通の人間だろう。見なくても大丈夫だとおもう。
「しかし話しかけるみたいに喋るなあ…」
グランフォースの時同様声はどこか感情が入っておりどうしても機会的には聞こえない。
まあ、害はなさそうだしそこまで気にする必要もないんだろうけどさ。
一人で納得してさあ、次の項目に、と言うところでドアがあいた。さすがに2時間経ったとは思えないが…。
「あれ、どうしたんですか?早いですね?」
「ああ、ちゃんと準備はしたから安心してくれ。もういいかの?」
「え?あ、はい」
特に切羽詰まった用事もないし早く始められる分には文句なんてあるわけない。
俺は出しっぱなしだったウインドウを閉じてじいさんの後をおった。
「…あれ?じいさんにウインドウは見えてないのか…?」
最後までお読みいただきありがとうございます。