2-13 侵入計画
女に報告し、ギルドで金を受け取って宿屋に戻る。
デルにも話を相談しようと召喚して、4人で円をつくるようになる。
三人寄れば文殊の知恵って言うし、人数は大事だろうと考えたからだ。
「…別に、助けなくてもいいと思うけどね」
「は、ぁ?なんでだよ。同胞だろ?」
「…まあ。でも、レオンより大事じゃない」
「…それは、」
口論が苦手そうなデルだったが、どうにも。強かったらしい。
「いいよ。いくって決めたし。そんな拗ねないで案だして」
「……キイが時間止めて、連れ出せば?」
「…魔力持つかなぁ」
確かに一番安全で、確実な方法な気がする。
一番の懸念点は俺の魔力だが、あの日レベル上げをした俺のステータスは飛躍的に上がっているので可能そうではある。
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レオン・グンジヨート 人族 ***
Lv35
HP:430/430 MP:8120/8120(+1400)
攻撃力:212 防御力:330
魔法攻撃力:1044(+299) 魔法防御力:730(+130) 素早さ:298
契約者:デル、ラン、キイ
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【固有】スキル獲得確率上昇Lv.1
錬金術Lv.4 畑仕事Lv.3
言語Lv.5(Max) 読解Lv.3
社交Lv.2 散策Lv.4
算術Lv.5(Max) 鑑定Lv.3
料理Lv.2 痛覚耐性Lv.2
詐術Lv.2 探知Lv.2
魔力感知Lv.1 剣術Lv.2
魔力操作Lv.1 精霊目視Lv.2
隠密Lv.3 隠蔽Lv.3
聴覚強化Lv.1 威圧耐性Lv.1
表情操作Lv.2 念話Lv.2
並列思考Lv.2 気配察知Lv.1
HP回復速度上昇Lv.1
MP回復速度上昇Lv.1
<召喚Lv.2> <精霊魔法Lv.4>
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異世界人 女嫌い
旅人 勇者or魔王
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自分では割と成長を感じているが、どうにもスキルレベルは運みたいなところがあるから…。
若干曖昧な計算ではあるが、キイの魔法で時間を止めたことはある。
あの2回程度だが、5分程止めてMPが約2000持っていかれることを考えると、1秒で6~10MP吸い取られる。多分。今はMPが約8000あるので、見つからずに順当に行くと仮定すると…。
「まあ、13分弱…?」
「見つかることは無いだろうが…魔力が切れると後が怖いな」
「13分で探して、見つけて、持ち出して…?」
「難しい、ですかね…?」
ちょっと難しい、かもしれない。だって、あの協会は結構な大きさだった。
場所は今日のあの部屋かもしれないが、違ったら目も当てられない。一から探す時間はないだろう。
「…あ、ランの魔法は?」
「私の?」
「認識疎外の結界が張れるなら俺の周りにだけそれを張って…」
「ええっと、常にレオン様の周囲に結界を張る形ですか?」
「無理?」
頷いてそう聞くと、難しそうな顔をしてランが唸る。
割といい案だと思ったのだけど。
「その、結界はなんていうか。場所、に張るものなんです。対象が人じゃなくて…」
「あー…へぇ…。いや、わかった」
無理らしい。
いよいよ困ったなあ、と頭を抱える。
「…仕方ない。俺が一肌脱ごう!」
「んん?」
ぱちん、と指を鳴らしてそう宣言したキイは、少し待っていてくれ!と言い残して姿を消した。
「…なんだ?」
「さあ?」
「ま、まあ。悪い結果にはなりませんよ!」
「そりゃまあ、気にしてないけど…」
多分、30分とか。結構待った。
ベッドの上で2人としりとりをしながら魔力感知を育てる。常に気を張っていれば、まあ育つかなって。
もう今日は帰らないかもな、と早々に諦めようとした瞬間。
俺の魔力感知が大きな魔力を感知した、気がした。
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スキル:魔力感知Lv.2を獲得しました
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「よっ」
「キイ?」
キイが目の前に現れ、その魔力の塊に驚く。
更に意識してみると、精霊は膨大な魔力の塊のようだった。
「ん、役に立ちそうな奴を連れてきたぜ!」
「役に立ちそうな…奴…?」
その言葉にきょろ、を辺りを見渡して、見つけた。
キイの後ろに隠れるようにして、いる。
「きみ?」
「ぇ、ぁ、は、はい!その、はい!」
「ええっと?新しい精霊?」
「おう、上級だし割と使えるって!」
「え、あ。ふうん…」
上級って確か200人しかいないんじゃなかったっけ?と頭を捻りつつ、あれは過去のデータだったのかもしれないと思考を霧散させる。そんなレアな精霊がぽろぽろ出てきて堪るか。
「…それで、君名前は?」
「えっ!見える??見えるんですか!!??ぼ、僕見える人初めて見ました!」
「どんだけ外でないんだお前。そりゃ珍しいけど初めてってなあ?」
「あれ?**君?久しぶり~!」
キイとランの知人らしく、部屋が和やかな雰囲気に包まれる。
ランに至っては、キャラが全く違ってびっくりだ。
「―――なんて?」
「あ、すみませんっ。精霊の名前は本人の許可がないと聞き取れないんです」
「えっ、そうなんだ?」
つい、と視線をおどおどしている精霊に向ける。
ビク、と肩を揺らしてキイの後ろからこちらを除く彼は、随分と後輩気質らしかった。
「キイ、それで?」
「こいつ、上級の空間精霊なんだよ」
「くうかん…」
その精霊ってこんな気軽にみつけていいものなんですか…?
「そ。んで、あの協会のあの部屋に転移、俺の魔法で時間停止!このコンボで解決だろ?」
「ま、まあ…そうっぽい?かな」
「ほら、**」
「そ、そんなこと言われてもぉ…!キイ様急に連れてきたじゃないですかぁ!」
「ごめんごめん。ほら、いいじゃん。こいつなら俺のお墨付きだし、いけるいける」
「ぇえ、そんな、えっ」
「あー、嫌ならいいよ。そんな強要するもんじゃないしな」
「あ、いや…そんな…」
「な?**ほら、契約しろって」
ぐい、と自分の後ろからキイか精霊を引っ張り出す。俺の前に押し出された精霊に、憐みの目を向ける。
キイの方が上司っぽい。
ばっと後ろを振り向いて、キイの顔を確認したのだろうか。そのままそろそろとこちらに目を向ける。
「じ、じゃあ…」
ぐっと、被っていたフードを深く引っ張って近づく彼に、安心して手を伸ばす。
精霊が手に触れて、その瞬間まばゆい光が部屋にあふれる。
薄く目を閉じて、なんとなく彼とつながった気がした。魔力の道、のようなものが。
「エッと、ぁ…」
「ありがと。名前、教えてくれる?」
「…サキ、です」
「よろしく、サキ」
恥ずかしそうに笑うサキに、嫌がっていないようで安心する。キイが無理強いした感じなら申し訳ないにもほどがある。契約するけど。
「んー、じゃあ夜中サキとキイ呼ぶから」
「おー」
「ぁ、はい」
ばいばい、と手を振って精霊を全員帰す。
少し素っ気ない気もしたが、そんなもんだろ。
ごろ、とベッドに転がる。
天翼族と聞いて、思い浮かぶのはあの襲撃者だった。この世界に来て出逢った天翼族は彼だけだ。
「ウィン、この前の天翼族のステータスだして」
目の前に浮かんだそれを見て、確信する。
クプルティアというらしい彼は、結構な実力者だった。天翼族という珍しい種族もあるが、一番に目が行くのは奴隷状態の文字。おそらく、そういうことだけど。
完全な物理アタッカーらしく、攻撃力と素早さは目を見張るものがある。
「…持って帰ってどうするか、なんだよなぁ」
金は、稼がないとまずい。いくらじいさんに貰ったといってもその程度だ。
この国に来て碌に稼いだ記憶もない。
「まあ、宿屋においてランに結界張ってもらうとか…」
見つからなそう。この世界の事情は知らんが、上級精霊の結界だ。そう破られるものでもないだろう。
暫くは、それで乗り切るか。痕跡さえ残さなければいい。
ある程度金をためて、自由が利くようになったら国をでよう。
「ん、なんとかなるかなぁ」
目を擦りながら、つぶやく。
「そういえば、」
襲撃して来た時の少年に―――翼はあっただろうか。




