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選ばれたのは魔王でした。  作者: 草原
第二章 クラント王国とティア
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2-12 見つけた闇

見上げるといつも通り白い壁が一面に広がっていた。

住宅が全て真っ白なのは少し違和感があるが、この建物は白が一番しっくりくる気がした。


「ここか」


「んー、綺麗だな」


他とは群を抜いて大きく、綺麗。

ステンドグラスは無いがそれっぽいものはあった。

十字架は無いが、目立つモニュメントはある。

マリア様の像は無いが、荘厳な像はある。


つまりは教会。

この国では神様は主神ただ一人らしく、全国民がその主神を信仰しているらしい。


―――主神ハリアンを。


とりあえず、後日に回した厄介事を片付けようと重い腰をあげる。

暗殺者をよこしてきた「ハリアン教」の教会、というか本拠を探すためにとギルドに向かう。

宿のシラネに自分から聞くなんてできないし、出来ればリリアナさんに会うことになるのも勘弁してほしかったが、ここなら他の選択肢もある。


「ハリアン教の教会?ああ、それなら――」


自慢げに話すシェンクに礼を言って教会に向かおうとする。

すると俺の名前を叫びながらリリアナさんが走り寄ってきた。人目が大量にある中わざわざ俺を名指しで来る当り確信犯だと思う。自意識過剰?まさか。


「レオンさん!今から教会に行くんですかっ?その…丁度いい依頼があって…!」


曰く、欲しいのは労働力でランクは無制限。しかも報酬は銀貨五枚。


なぜ俺を選んだのかも気になるし、今のハリアン教に良い印象は無い。

断ろうと口を開いた瞬間キイが口をはさんだ。


「おいおい、断るのはやめとけって」


「(ん、なんで?)」


「教会に行く理由をあっちに説明できるし、金も貰える。一石二鳥じゃねえか」


言われてみれば、と思い直し少し思案する。断りそうな勢いだった俺にさらに近づいてきたリリアナさんから距離をとるように逃げて、コクリと頷いた。


「…受けましょう」


「わあ!宜しくお願いします!」


そう言いながら手を出してくるリリアナさんにん?と止まって、考える。ああ、キーホルダーの事だと分かりほっと肩をなでおろしてそっと渡した。

待っている間、シェンクになんで依頼俺じゃねえんだ?と愚痴られたが知った事ではない。リリアナさんに言え。


そう言う訳で、労働力と引き換えに俺は教会に入る理由を持ったわけだ。


「あ、こんにちはー。何?お祈りー?」


「…いえ。今日はギルドから依頼を受けてきました」


門を開けて少し歩くと掃除をしている女がいた。服装からしてシスターかなにかだろう。

彼女はんー?と首をひねって頭を振る。


「そんな依頼だしたっけー?」


どうやら心当たりがないらしく、ちょっと待っててねー、と気が抜けるような言葉とともに中に去っていった。

すぐに戻ってきた彼女は、後ろにもう一人連れていた。今度は男だったので神父とかだと思われる。生憎全く宗教事には疎い。


「ああ、君がギルドからの。ごめんね、こいつが話を聞いていないばかりに戸惑わせてしまったね」


きちんと依頼は出されていたらしく、そんな依頼は知らないという彼女は話をよく聞いていなかっただけらしい。

彼女はもっと仕事に対して真面目になるべきだと思う。仮にも聖職者なんだし。


「こっちにおいで。労働力というか、ちょっと荷物を運んでもらうだけなんだ」


「はあ、荷物」


そんな雑用のような事を冒険者に頼むのか、と疑問に思ったが実際依頼されている以上仕事だ。

簡単そうだしやろうじゃないか。


ここだ、と連れられたのは教会の端にる物置のような場所でじめじめとした如何にもな雰囲気がでていた。


「この袋の全部別の部屋に移して欲しいんだ」


そう言って示されたのは段ボール程の大きさの木箱が5つ。


「くれぐれも中身は見ないでね。神聖なる神のための道具だ」


「勿論。それで、どこに?」


「ああ、こっちだ」


離れの物置のような場所から離れた、地下室のような部屋。

全くの正反対の場所で、さすがにこれを馬鹿正直に持つと疲れそうだと一人ごちる。


「…わかりました」


「うん。終わったら入り口に居た彼女に伝えて。確認させる」


「はい」


ヒラヒラと手を振って出て行った男を見送って、荷物に向き直る。


「さて」


袖を上げて、ぐっと力を入れる。

箱の周りをぐるりと見た限りでは鍵がかかっている訳でもない。


釘で、しっかり止められているが。

開けたらバレるなぁ、と悩んでいるとふと気が付く。

そう言えば、この部屋に入ってからキイの声を聴いていない。着いてきては居たはずなのだが。


「―――キイ?」


周りを見渡すが、いない。


「あ、あれ?」


焦ってきょろきょろを部屋を探すが、欠片も光を感じ取れない。

思わず声に力を込めて、召喚を行う。


「キイ!」


「…っ、あ」


召喚されない、なんてことはなくしっかり目の前に現れたキイにほっと安心する。

しかしどうにも様子が変で、呆然と目を見開いて固まっている。


「おい、どうした?」


「…ぁ」


「キイ?」


「ん、あ…いや、ランを呼んでくれ」


「え?あ、ああ」


いつもは軽口を言うキイの様子が初めて見る程緊迫していて、理由を聞くよりも先にランを呼ぶ。


「あら…。――どうしました?」


いつもはニコニコとした笑顔で現れる彼女には珍しく、顔をしかめて辺りを見渡す。

俺にそう聞くランにさあ、と首を振ってキイに視線をやる。


どうにも言いづらそうに口を開閉して、ようやっと意を決したらしい。


「少し、気になることが。さっきの部屋に連れて行ってもらえないか」


「さっきの部屋?」


「荷物を運ぶとか言ってたとこだ」


「ああ、いいけど…。気になること?」


「…割と、嫌なことだけどなぁ。嫌な魔力が、溢れてる」


嫌な魔力、と呟いて。俺もその魔力を感知しようと気にしてみるが、どうにもここは魔力の流れが悪い。

地中からぐるぐると、黒い靄が覆っているようだ。


「ふうん。いこうか」


箱を4つ、マジックバッグに入れ、一番軽い箱を持ち上げる。

仕事はしっかりしなきゃね。






重い扉を開けて、部屋に入る。

案内された時と中の様子は変わっておらず、特に変なところも無い。


「ここ?っと」


荷物を隅に置きながらキイに尋ねる。


「ああ…やっぱり、」


「お兄様、これは…」


「なに?」


俺をそっちのけで始まる密談に顔を出して、首を傾げる。

仲間外れ感がすごいのでそういうことはやめてほしい。


「いえ、綺麗に片付けられているのでわかりにくいですね。嫌な魔力が、微かに残っています」


「嫌な魔力って」


「言葉の通りですよ。精霊はこれを、扱いませんから」


「…精霊じゃないなら、人?」


その言葉に、押し黙るラン。

どうやらこの部屋にはその「嫌な魔力」が残っているらしいが、生憎俺の魔力感知スキルレベルは1だ。上げておけばよかったか。


「…今回は、違うみたいです」


「今回は?」


「それより、ちょっと魔力かしてくんね?」


「…いいけど、何するんだよ」


「ちょっと、過去を見よう」


「…は、ぁ?」


「見るだけだ。それも一瞬」


「……いくら?」


「あー…」


キイが手を見ながら考える。過去を見ることができることも驚きだが、キイとランがこのことに積極的なのも気になる。そんなにも大事なのだろうか。


「そう、だな。若干無理しても5000はいる」


「…まあ、いいか。どうぞ」


「ありがとう」


そういって、キイは申し訳なさそうに笑った。


すうっと自分から魔力が抜けていく感覚が襲う。一気に魔力を失うとどうにも自律神経らへんがやられるらしい。頭痛を奥歯で逃しつつ、変わっていく部屋の様子を見守る。


過去を見ると言っていたが、その過去の目星はついているのだろうか。


ぼんやりと見ていると、パッと部屋が光り、その光景を映し出した。


暗い部屋に、魔法で出したような明かりを漂わせて。

魔法陣、だろうか。円の中に一人の子供がいる。黒い子供はぐったりと床に蹲っており、それを天井からの鎖に阻まれるように上半身を起こしている。

子供は、人ではなかった。到底持つものがいないであろう大きさの黒翼を持ち、それは――

悪態をつきたくなるほどの、気分の悪い光景だった。


瞬間、部屋は何もなかったかのように切り替わる。頭痛が少し、痛みを増した気がした。


「へぇ…」


冷たい声が、聞こえて目を覚ます。


「あれは…」


「天翼族だな。俺も久しぶりにみた」


「下の方で見ることはほぼ無いですからね」


「それで?どうするの?」


「どうって…」


確かに、胸糞悪い光景ではあったが、それで俺は何をすればいいのだろうか。

今回俺がここに来たのは俺を狙う理由を探すためだ。あの少年を助けるためではない。


「あー、」


きょろ、とキイがランに視線をやって俺に戻す。


別に、助けるまではいい。問題はその後だ。

少年をこの教会から持ち出して、その後は?面倒を見るなんて、無理だ。ただでさえ金もないし、何より隠れながら生きることになる。


助け出すことは現実的ではない。


「そもそもキイはなんでその、嫌な魔力を気にするんだ」


「いや、そんなに気にした覚えはない、んだが」


「ふうん」


どう見ても過剰反応していたように思うが、言いたくないらしい。

俺の機嫌を感じ取ったのだろう。キイが苦笑して、頬をかく。


「ああ、いや。本当に。たださ、精霊には毒なんだ」


「毒?」


「嫌な魔力は、精霊を侵す。そのせいか、ここら辺は極端に精霊が少ないし、もう堕ちてるやつもいる」


「え、」


「その原因があの子なら、まあ、取り除きたくなるのも分かるだろ?」


「…はあ、おーけー。俺の負けだ。助けてやろうじゃん」


「、レオン」


「レオン様!」


「いいんだ、別に。善行は積むべきだよ。後味がいいからね」


誰かの受け売りな、そのセリフを呟いて笑う。

後処理は、後の自分にまかせよう。最悪少年を殺しても、まあたぶん解決する。


「そうだな、今日はもう帰った方がいい。夜中、こっそりまた来よう」


「ああ、そうだな」


「レオン様、本当にありがとうございます!」


本当にうれしそうに笑う二人に頷く。

宿屋で、ちょっとこの面倒事を整理しよう。



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