2-5 梟の止まり木
俺は生まれ変わったー
思わず固まって頭の中で先ほどの機械音を反復していた。
鑑定された。
しかし幸いなことに俺の持つ隠蔽スキルのおかげでステータスの漏洩は防げたらしい。思わぬ効果だ。
鑑定スキルを持っている人間は少ないと思っていたが、そうでもないのだろうか。
とりあえず、とウィンを開いてヘルプからオートを呼び出す。
オートは所謂ログのような機能がある。さっき頭の中で音声として聞こえた声が文字として見れるのだ。
他にもオートは別の機能がある。まあそれは追々。
改めて見ても特に思いつくことはない。できれば使用者が知りたかったが、高望みがすぎるだろう。
「ん?どうかしたか?」
「ああ、いや、何でもない」
「そうか。ふむ、レオンは飯に対してどうだ?」
「どう、って?」
「多少金がかかっても旨いほうがいいか?」
ああ、そういうことかと納得する。
確かに飯は旨いに越したことはない。ないが…正直金は心もとないのでできれば節約したい。
不味くても食えればいいのだ。食えるだけましってな。
「じゃああそこで決定だな!ついてこい」
引っ張るシェンクに本当に気さくでいい奴だと思う。だからリリアナさんのあんな依頼にも答えたのだろう。
適当に他愛無い会話を広げるのも苦労する。愛想笑いは存外疲れるものだ。
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スキル:表情操作Lv.2を獲得しました
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そう思っていると面白いスキルを獲得した。しかもレベル2。
レベル1からしか獲得はできないと思っていたが、違ったらしい。新しい発見だ。
「ああ、あそこの宿屋だ!」
「中々綺麗だな」
「そうだろ?女将さんも結構美人なんだぜ!」
え、と足を止めると不思議そうにシェンクも足を止めて俺を見た。
女が店主なのか…?それは結構勘弁して欲しい。
「ん?ああ、残念だったな!女将さんは既婚者だ。可愛い娘もいるから望みは薄いぞ」
「ああ、そう、か。そうか」
変な勘違いをシェンクがしていることには気づいたが自分の弱点を伝えようとは思わない。
しかし、まあ、何とかなる、か。
以外にも外装は綺麗に整っていた。
白い外壁に木の看板。結構お洒落でセンスがあると思う。
「…梟の止まり木、ね」
「なんでも伝説の魔獣からとった名前らしいぜ」
ニッと笑うシェンクにそうか、と笑いかけて宿屋に入った。
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スキル:追跡を使用されました
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「……」
先ほど鑑定を使ってきたやつがつけてきていたらしい。往生際がわるい。
しかし今回は妨害に成功できるようなスキルを持っていなかったらしく易々と「追跡」されてしまった。
こういう時人目があるのでデルに話を振ることはできない。頭の中で会話とかできないものだろうか。
―――――
スキル:念話を獲得しました
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「ナイス」
「ん?あ、女将さん!」
着いて早々女を呼ぶシェンクの考えは理解出来ないな。
しかもこの女将さん結構若くないか…?俺の苦手な女にクリーンヒットなんだが。
「あら、シェンクさん!そちらの方は?」
「おう、新人連れてきてやったぜ!」
「よろしくお願いします。レオンと申します」
「(デル、聞こえるか?)」
試してみようとデルに話しかける。頭の中で思っただけのなので聞こえているか結構心配だ。
「あらあら、丁寧にどうも。私はこの宿屋で女将をやってるシラネって言うの!」
「(…念話?いつの間に)」
「こう見えてもこいつ俺を負かしたFランクなんだぜ」
どうやら問題なかったらしい。早速追跡のスキルに付いて聞いてみる。
追跡の効果はなんとなくわかるが、それに対抗できるスキルは分からないからな。
「こう見えても…?」
「あっ、ま、まあ見た目お前ひょろいし…?」
「(まあ、気にしないで。早速だけど追跡ってスキル知ってるか?)」
「ふふっ、それじゃあ推薦かしら?」
「(追跡…?知ってるけど…)」
「そう!まあ誰のか、なんて不躾な質問はしないでやってくれ」
「(今それを使われてるみたいなんだ。なんか対策みたいなスキル無いか?)」
「わかってるわよ!レオンくん、だっけ?1泊朝と夜付いて銀貨1枚だけど、何泊する?」
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スキル:並列思考を獲得しました
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何故かスキルを獲得した。しかも結構便利そうな。
使ってみようと意識すると自分が二人いるような、しかし思考は纏まっていて滅茶苦茶な感じがする。
「レオン?」
「あ、ああ。そうだな…」
並列思考に慣れつつデルと女将さんの相手をしているといい加減わかる。
つまり二つのことを同時に考えられるスキルか。
女将さんとシェンクは適当に流して一週間朝夜飯付きで金を払った。銀貨7枚ね、結構な出費だ。
そして追跡に関しては有用なスキルは知らない、と。
スキル使用者を殺せば大丈夫じゃない?となんとも物騒な助言を頂いた。
「じゃあ部屋はここね。ごゆっくり!」
「じゃあ俺も帰るぜ。困ったことがあったら連絡してくれ」
そう言って二人はそれぞれ離れていった。
ほう、と息を付いてベッドに倒れこむ。
流石に日本のベッドよりも質が悪く肌触りもクッション性も薄いが、ベッドだ。
「久しぶりのベッドー」
「ずっとテントだったもんね」
じいさんの家からこのクラント王国まではテント暮らしだった。それでも3日ぐらいだったので、まあ近い方だったのだろう。
しかし久しぶりということもあってゆっくりと瞼が落ちてくる。
「ん、眠いなあ…」
「結局どうするの?」
「あー、どうしよ」
ごそごそとウィンを開いてマップにしてみる。地図の役割にしか使って無かったが、そういえば周りの人や動物も表示できる。
まあ、案の定人が多すぎて誰がスキル使用者なのかはわからなかったが。
「ん、キイならわかるかな」
「…さあ」
「あ」
「?」
マップをサラッと見て、固まる。
ぐるりと周りを見回すが、人影は見当たらない。
もう一度マップに目線を動かすと、この部屋には確かに3つの点があった。




