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選ばれたのは魔王でした。  作者: 草原
第二章 クラント王国とティア
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2-4 試験とFランク冒険者

スランプってなんだろう(錯乱)

 戦闘開始!


 その合図で俺とシェンクはほぼ同時に駆け出した。

 剣と剣がぶつかる金属音が綺麗に響く。

 じいさんから貰った剣は練習にずっと使っていたものだ。そのせいか自然と自分の手になじんて来る。

 少し重いと思わなくはないが片手で扱うには十分だった。


 剣の重さと俺の力も合わさって押し勝つがそのまま踏み込みはせず一旦後ろに引く。


 急に力の行き場所をなくしたシェンクの隙を見逃さず、後ろに回り込んで足払いをする。

 シェンクも負けじと倒れながら後ろに剣を振る、がその剣をを素手で叩き落とす。


 カラン、と寂しげに鳴く剣にシェンクもそのまま手をあげた。

 剣を首筋に当てて、シェンクは降参を認めた。


「…強いな」


「なんだ、最初とずいぶん違いますね?」


 負けを認めた途端柔らかく笑うシェンクに首をかしげる。

 さっきまではあんなに勝気でうざったい印象だったのに何故か好青年に鳴っている。


 金欠でなきゃこんな仕事は受けないらしいんだが。


「まあ、そういう依頼だったしなあ」


 どういうことか、とリリアナさんに目線を向けると申し訳なさそうに説明をされた。

 まあ説明というか弁明というか…難しいところだな。


「―――ということです。お決まりみたいなものなんです。推薦で来た人にはちょっと痛い目見てもらおうって」


「はあ…」


 つまりシェンクは本当は優しいお兄さんだった、と。

 やりたいことは理解できるし理由もなんとなくわかるが、いい気持ちはしないな。

 というかそれ相手に勝たれたら今みたいに意味なくならないか?


「ほ、ほら!でもシェンクさんは本当にFランク冒険者なのでちゃんと次のランクに昇格ですよ!」


「悪かったな。まあ、素の俺はこんなだし、仲良くしてくれ」


「あー、よろしくお願いします。」


「おう」


 にこやかにシェンクは手を挙げて去っていった。

 第一印象は良くないが第二印象はいい人だった。適当に仲良くやれるといいと思う。


「じゃあ次はEランクの人を呼んできますね」


「お願いします」


 ネタバレしたんだし今度からは真面な人がくるだろう。


 軽い気持ちでFランクは余裕だったのでEまではなんとかなるだろう。

 ランクが高いしさっきよりも時間がかかるかと思ったがリリアナさんはものの数分で帰ってきた。


「みつけてきました」


「早いですね」


「今度は役割とかの説明の必要もないですしね」


 なんとも反応し辛い答えが返ってきた。

 遅かったのは演技の説明と練習、報酬の話で時間を食ったからか。


「大丈夫です。今回は普通の人ですよ」


 そういってリリアナさんが前に押して紹介したのは女剣士だった。


 ―――女剣士だった。


「まじか」


「どうしました?」


「勝てる気がしない」


「そうんなに悲観することないです…と言いたいところですが、確かにFとEの差は大きいです。でもランク内のレベル差でいえば一番小さいんですよ?」


 違うんだ。別にステータスでは勝ってると思うんだけど、性別的に無理。

 自分から触りに行くなんて不可能。


 今でさえリリアナさんと1メートルから2メートルは離れて喋っているのに…。


「あ、えっと、本当になんか勝てる気がしないので…ここで試験やめていいですか」


「えっ、一度くらい試しましょう?勝てなくてもランクが下がるわけじゃないですし…」


 こっちの心情を露ほども知らないリリアナさんはぐいぐいと押してくる。そして迫ってくる。

 イヤ本当に無理なんで…。


「だってせっかく呼んできたんです。ほら、やりましょ!」


 リリアナさんが肩を押して急かしてくるまでに近づいた。

 逃げるように訓練場に入ってしまい、女剣士も立ち位置に立ってしまう。


「よろしく頼む」


「…よろしくお願いします」


 丁寧に挨拶をしてくる女剣士酸をとりあえず実力差だけでも見ておこうと鑑定する。


 ―――――

 アリー 人族 冒険者Gランク 剣士/初心者魔導士

 Lv.72

 HP:540/548 MP:314/314

 攻撃力:621 防御力:744

 魔法攻撃力:380(+20) 魔法防御力:450 素早さ:110

 ―――――

 踏み込みLv.1 長剣Lv.2

<魔法Lv.1>

 ―――――


 レベルおかしくねえ?

 え、だってFランクで20レべだったのにいきなり70超えってどういうことだ。

 確かにリリアナさんも差は大きいといっていたが、これは開きすぎじゃないか?しかもこれで小さいほう…。


 というか俺のステータスの優位性無くなってないか?


「普通に勝てない気がする」


「…魔法使う?」


「いや、使わないけど」


 デルが自分の杖を掲げて自慢げに言うが、当然却下だ。

 ここで自分の力を見せるのはやめておきたい。


「じゃあ始めます。準備はいいですか」


 リリアナさんの確認に二人で頷いて先ほどと同じように戦闘開始の合図が鳴る。





 ☆




「それじゃあレオンさんのランクはFから始まります。これからよろしくお願いしますね」


「はい…」


 結局試合開始の合図が鳴った瞬間「降参です」と手を挙げた。

 ポカーンと口を開けるリリアナさんとアリ―さん、笑うギルマスに若干イラっとしたがまあ仕方ない。


 若干むくれるリリアナさんだが仕事はきっちりこなしてくれる。

 アリーさんには申し訳ないことをしたとは思うがもうどうでもいいかな、と開き直ってもいる。


「一応説明しておきます。ランクを上げるには試験を合格してもらうか何らかの功績をあげるかが条件です。こちらがレオンさんのギルド証明書になります」


 そう言って渡されたのは真っ白なキーホルダーだった。


「…証明書?」


「はい、確かにただの飾りに見えます。しかしその中にはレオンさんの情報がぎっしり詰まっています。くれぐれもなくさないでくださいね?」


 ギルマスに向けたような笑みで返され、曖昧な笑顔で返してしまう。


「まあ、なくしても再発行はできます。できますが、金貨1枚をいただきます。」


 意外と高いんだな、と少し驚いた。

 大体金の価値は金貨1枚1万だ。

 青銅貨10円、銅貨100円、銀貨1000円、金貨10000円という具合に上がっていく。


 その上にも白金貨だとか聖ヴィジオーネ金貨なんかもある、らしい。あまり世間には出回らないらしいが。


「…さて、この証明書に最後の仕上げです」


 もったいぶって言うが、そんなに大した事でもない。

 このキーホルダー、真ん中に丸い金属の飾りがありその真ん中からカラフルなリボンがついていた。


 そしてその真ん中の金属部分は半分に割れるらしい。そしてその中に所有者の血を一滴と。


「…針はあります?」


 準備万端らしく笑顔で差し出された。


「さて、これでこの中の情報はギルドにしかない道具でしか見れなくなりました!レオンさん自身は見たい、と思えば自由に観覧できます。…ですが他人にも見えるのでくれぐれも注意してください」


「冒険者の主な仕事は周辺の魔物討伐、滞在国の防衛、素材の収集、国民の要望になります。最初は素材収集をおススメしますよ」


「これで手続きは終わりですね。お疲れ様でした」


 やっと終わる、そう思う安心からか大きなため息が出た。

 なぜ受け付けは女しかいないのだろうか。全くもって不本意だが他の冒険者からの目線が痛い。

 リリアナさんは有名らしく所々から陰口が聞こえてくる。


 ―――――

 スキル:聴覚強化を獲得しました

 ―――――

 スキル:威圧耐性を獲得しました

 ―――――


 ギルドを出ようとしたところで、肩を叩かれる。

 驚いて振り返るとシェンクだった。


「…なんだ、驚かせないでください」


「おお、なんかすまんな。いや、この国に来たばかりなんだろ?宿屋でも紹介しようかと思ってな」


 なんとも有り難い申し出だ。

 にもなくお礼を言ってギルドを二人で出た。


 ―――――

 スキル:鑑定を使用されました

 ―――――

 スキル:隠蔽による鑑定妨害に成功しました

 ―――――


「!?」



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