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選ばれたのは魔王でした。  作者: 草原
第一章 クヌール森林とおじいさん
10/27

1-10 新しい仲間

一か月に一話が最低ライン…ガンバリマス。

「…まあね。じゃあ僕は彼を推そう」


 そう言ってデルが連れてきたのは数多くの精霊の中、一際大きく輝く黒い光の球だった。


 明らかに他とは一線を引くその輝きに一瞬反応するのが遅れる。

 黒く光る精霊は名前をキイと言った。


「よ、俺はキイだ。こっちはラン。よろしくな」


「レオン様、私たちレオン様に契約して頂きたいのです。きっとお力になります!」


 気さくに話しかけた黒い精霊―――キイとは違い、後ろに控えていた白く光る精霊は敬語を使うばかりか名前にとんだ敬称までつけてきた。


「あ、ああ。よろしく。俺と契約していいのか?」


「おう、ランがかなりアンタに惚れ込んでるみたいだからな。ああ、勿論俺もアンタは他とは違って面白そうだと思ってるさ」


「面白そう…」


 キイはランと仲がいいのだろう。精霊同士の関係は分からないが、友人以上のものに見える。

 しかし面白そうっていうのはほめ言葉なんだろうかと少々複雑な気持ちになる。


「まったく!お兄様はもう少し言葉遣いに気を付けてください!失礼しました。私光の精霊なんです。契約をしてまずはそのお怪我を直してもらいたいのですが…」


 親密とは思ったがまさかの親族だった。精霊の兄弟…ちょっと想像がつかない。なんて精霊の出生に興味を惹かれつつもランの申し出はありがたいと受け取る。俺は今回復魔法が使えないし、この怪我を放っておくのは心配だ。しかし、契約の仕方が分からない。


「ああ、ありがとう。でも俺契約の仕方をしらないんだよな。じいさんなら知ってるはずだから一回家に戻ろうか」


 森でもマップのお陰で言えの方向を間違えることはない。道は表示されないが、方向だけなら完璧だ。


 契約を快く引き受けてくれた二人を案内しようと身を乗り出すと、キイとランが静止をかけてきた。


「まてまて、その怪我で歩き回るのは関心しねーよ」


「私も同感です。…契約の仕方が分からないなら私たちがしてもよろしいですか?」


「え?あー、上級精霊なんだ…?じゃあ、お願いしようかな」


 あっさりと見つかる上級精霊が珍しいという情報は嘘なんじゃないかと思えてくる。デルが推したのはそういう理由だったのか、とデルの慧眼に感心する。

 デルとはこれから長い付き合いになりそうだ。


「はい!よろしくお願いします!」


 そう嬉しそうに俺の手にすり寄ってきたのでデルの時同様手に何かするのだろうとしやすいように手を前に出す。

 小さくありがとうございます、と聞こえたと同時にランが大きく光る。


 ああ、やっぱりこの光が契約の合図なんだな、と思いながらデルの時には感じなかった僅かな自身の中の魔力の流れを感じる。

 自分の中に別のものが入ってくる感覚。不快ではなく、寧ろ心地よい気さえする。


「終わりました!私、レオン様のお役に立てるよう精進しますね!」


「あ、ああ」


 何だか無条件に慕ってくれる姿を見ると、小さな子供を見ているようで少し、懐かしく感じた。


「じゃあ次は俺の番だな。よろしくな、ゴシュジンサマ」


「は?」


 思わぬ呼び方に戸惑っていると、眩しい位に黒く光ったキイがどこか嬉しそうに笑っているのを感じた。


 デルよりも大きく、ランよりも明るく光ったキイ。俺は自分の中の魔力本流に大きな力が入ってくるのを感じて、意識を閉じた。




 ☆




 目が覚めると目の前には大きな赤が広がっていた。

 ああ、夕日か。そう言えばこんなにゆっくり空を見たのは初めてかもしれない。。


 しばらく空を見上げていると、自分の状況に冷や汗が出てくる。


 ランとキイと契約して…それで…?

 痛む頭に顔をしかめながら記憶を辿るが生憎なにも思い出せない。


「そうだ、デル…」


「ん、起きた?よかった」


 横からの声に思わずビクリと肩を震わせる。まったく、驚かさないでほしい…。


「キイと契約して気絶したんだ。僕らじゃ運べないしね」


「気絶…そうか。いっつ…あー、キイ達は?」


「こちらです。…申し訳ありません、まさかレオン様が倒れるなんて…」


「よせよ、俺が悪い。…そうだな、ランの後一日開けるべきだった」


 勝手に二人で話を進めて俺が置いてけぼりなのでデルに視線を向けると、それに気づいたデルが小さく笑って言った。


「あー、二人とも謝罪と説明は後。ここにいると危ないし」


 確かに状況は気になったがこのままレッドウルフに再会なんてのは笑えない。契約は出来たんだし急いでじいさんの家に帰ろう。


「あ、腕…治ってる」


「それも後ね」


「お、おう」


 どこか急いでいるデルに文句を言うでもなく、おとなしく俺は四人でじいさんの家へ向かった。


 ☆


 じいさんの家へはなんの問題も無くついた。デルが何に警戒していたのかは終ぞ分からなかったが、まあ何もなかったんだしいいじゃん、と二人とそうそうに去ってしまった。

 呼べば直ぐに、文字通り飛んでくるのだろうけど流石にそれだけで呼ぶ程馬鹿じゃない。


 帰ったらじいさんは心配しているかと思ったら、まさかの悠長に夕食の準備をしていた。曰く――


「上級精霊がいて、魔法も上級まで使う奴にかなう奴がこの森にいるとは思えんからなあ…。なにはともあれおかえり。ほれ、もうすぐ夕食が出来るぞ」


 実際は怪我もおったし、九死に一生、とは言わないがそれなりの状況だったと思うが口にはしない。こういうのは蛇足って言うんだ。


「…まあ、精霊は見つけてきましたよ」


「ほお!まさか本当に見つけるとは…」


「んん!?からかってたんですか!?」


「ほっほっほ?いや、今日一日じゃ無理じゃろうとは思っておったが一週間もあればお主なら…、と。いやあ、流石にたった数時間で見つけてくるとは」


「…」


 なんだそれ、と眉をしかめる。しかめるが、じいさんに文句は言わない。これこそ蛇足。人間関係に置いてこれほどいらないものもない。

 結局は数日得をした、と考えておこう。そのほうが色々といい。


「まあ、いいです。こちらの早とちりも…なかったとは言いませんし」


「う、うむ。あー、それで?精霊は…」


「はい。キイ、ラン来てくれ」


 瞬間どこから北のか俺のそばには二つの光球があった。一つは眩しい位に光る白、もう一つは暗く静かに光る黒。ランとキイだ。


「ん?え?まさか…もう契約しておるのか…?」


 じいさんの驚きぶりを見て、ああ、上級だったなこの二人、と改めて凄いのだと再認識する。


「はい、上級らしく契約してくれました」


「は、はは…もうわしは驚かん…そう、じゃな。うむ。お主じゃもんなぁ…」


 なんとも納得しがたい理由で納得された。俺だからってなんだよ。

 すっかり意気消沈したじいさんはハア、とため息をついてさっさと台所へ行ってしまった。


「飯にしようか…明日は…新しい魔法の修行にするか?」


「あ、はい。手伝います。あー、明日からは剣の修行をお願いしたいんですけど…」


「ん?剣?」


 勿論あわよくば剣術スキルなんてものが手に入るかも、という欲がないわけではないが…今日魔物と対峙して思った。

 俺はデルがいないと何もできないし、魔法すら戦闘になると使えない。俺は、死にたくない。


「はい、魔法だけっていうのも心もとないかと思って」


「ふむ…欲張りな奴じゃのー…。まあ、お主に才能があるかはわからんが…いいじゃろう。しかし期待はせんことじゃな、魔法使いに剣の才能があるやつは中々おらん」


「はい!よろしくお願いします!」


 まあ、楽してスキルが手に入るのならそのほうがいい、なんてな。

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