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選ばれたのは魔王でした。  作者: 草原
第一章 クヌール森林とおじいさん
1/27

1-1 異世界

前に書いていたもののリメイク版となります。

内容は変わっていませんが細かいところが少し変わりました。


前のほうが良かった、という方も是非楽しんでいただけたらと思います。

 目が覚めたら森だった。


 …おかしい。俺は昨日しっかり家の布団に入った覚えがあるし、そもそもこの都会にこんな森がある訳がない。しかし、掌に感じる草の感触は人口芝生等の物ではなく、ここが自然の森だということを教えてくれる。


 起きてまず、見知らぬ場所にいたら誘拐等の可能性を考える。…しかし拘束もされていないし、わざわざ森に放っておく訳が分からない。そもそも金のない学生――しかも孤児を誘拐する理由はないだろう。


 俺、群青ぐんじょう 怜生れおは今年で19歳になる。一応金銭的な問題で大学には行っていないので就職先を探して上京している最中。つまり就活中だった訳だ。


 周りを見渡そうと立とうとすると体に違和感が走った。何時も寝る前に来ているジャージではなく、肌に直接感じるもっとざらざらとした――。


「ん…?なんだこの服」


 俺の体には昔話のモブが着るような薄茶のシャツに長ズボンといういかにも村人のような服があった。腰にはご丁寧にナイフが吊るされている。


「着替えさせられた…のか?」


 一番に考える可能性ではあるが、不自然な点が沢山ある。しかし他に考えられる可能性が無いのでおそらく誰かに着替えさせられたのだろう。


「…なんのために?」


 元の俺の恰好ではなにか不都合があるのだろうか。

 考えても分からないので立ち上がり辺りを見渡した。


「…見事に何もない森だな」


 いや、正確に言うと何もないのではなく何の変哲も無い、となる訳だが見た目が普通の森ということはわかるだろう。

 そこらへんの木々には実がなっておおり、気温は少し肌寒いものの耐えられなくはない。

 木の実は食べられるのか分からないが、あって困ることも無いだろうと取りあえず目についた近場のものを採っていった。


 見つけたものを全て採っていると手に抱えきれなくなったので岩の上に載せて何度か採りに戻った。

 しかしあまり種類は無く同じものが大量に手に入ることとなった。


 これが全て食用じゃなかったら全部無駄だな、と思いながら集めること数時間、日が暮れるとあぶないのでそろそろやめにしよう。


「っと、これくらいでいいかな…採ったなあ」


 離れすぎると道に迷ったり危険なので集めた木の実を置いた岩からは離れないよう動いていたので森にそこまで影響はないだろう。


 目を引く木の実…というか果物は蜜柑のようなのと林檎のようなものだろう。全体的にオレンジをしているため見つけやすく、一番数が多い。蜜柑と違うところは赤い斑点があることくらいだろう。

 林檎(仮)は色ではなく形が似ている。色は青というなんとも食欲のわかない色だが青りんごらしいと言えば、らしい。リアル青りんご。

 あとは黄色の楕円形のものだ。全体に突起があり、その先端は赤黒くなんとも派手な見た目だ、


 他の木の実は胡桃みたいなものや、ドングリのようなものが多かった。はっきり言ってどれがどれだか分からない程には採れた。


 試しに一番見た目に馴染みのあるオレンジ(仮)を手に取り腰についていたナイフで切る。大きさもオレンジと同じ位なので縦にナイフを入れた。

 するとオレンジ(仮)から大量の液体が零れだし俺の手を汚した。


「え、ええ!?…うわあ、べとべと…」


 完全に果肉だと思っていた内部にはオレンジ色の液体が入っており見事に不意を突かれた。

 べたつく手を振って手に残る液体を恐る恐る舐めてみる。


 その瞬間目の前に半透明のウインドウが現れた。


 ―――――

 名:オレーシィ

 品質:B

 説明:食用

 HP3回復

 ―――――

 スキル:鑑定を獲得しました

 ―――――


 目の前に不可思議な物が現れ思考停止に陥ったが触れてみると通り抜けることなく触れた。

 動かすとスマホのようにスクロールできたのでしてみる。


「オレーシィ…?この果物の名前か?」


 どう考えてもオレンジのパクリだと分かる名前に少し気が楽になり、食用ということでさらに安心する。

 これで俺の努力は無駄にならずにすんだ訳だ。


「えーっと、HP?って、そりゃまさかゲームなんかに出てくる体力ゲージの尊称じゃないよな…?」


 一瞬頭によぎった可能性を否定しつつよく見るとスキルなんて言葉も見つかる。


「スキル、で鑑定?はっ、ゲームじゃあるまいし、なあ?」


 言いわけが難しくなってきたがウインドウが出てきた時点で察しはついていた。


「夢、か異世界、ということか」



 ☆



 あまりの非現実的現象によって導き出された結論を言おう。

 ここは異世界のパターンであると。


 異世界トリップの話とか異国の勇者が異世界を救うとかよく聞く話だな。俺は絶対に勇者なんてならないが。


 状況の整理をした結果ここまで意識がはっきりしていながら俺自身が夢の可能性を考えたことから夢の可能性はかなり低くなった。さらに言うと俺はここ5年ほど夢を見ていない。

 残るは世界の線だが信じる、というか信じざるを得なくなった。


 先ほどのウインドウだがいくつか項目がありタップできた。

 それぞれステータス、マジカルバッグ、マップ、ヘルプの順だ。


 そう、ステータス。状況から考えてこのステータスは俺の、ということだろう。期待を込めてタップする。


 ―――――

 レオン・グンジヨート 人族 ***

 Lv.1

 HP:60/60 MP:1319/1319

 攻撃力:40 防御力:30

 魔法威力:60 魔法防御力:40 素早さ:40

 ―――――


 違う。大事なところが違う。

 ステータスはいい、ゲームとほぼ同じだしLvが1なのも異世界に来たからと考えればまだ理解できる。しかしだ、何故名前が変わる!?


「おかしいだろ!いや…カタカナになるのはまだしも、改名されるなんてさすがにおかしいだろう…?」


 しかもかなり安直だ。れおだからレオン、群青だからグンジヨートってことだろう?

 なんだか軍事用途みたいで不愉快だ。


 ハア、といっきに脱力し誰に文句を言えばいいのかもどうやって変えるのかもわからないので許容するしかない、と諦める。

 しかし自己紹介なんかはどちらを名乗るか考え物だな…。一応ここでの本名ということでレオンの方を名乗ろうか…。


 ステータスの数値は比較対象がいないので高いのか低いのか分からないが、MPが高いことだけは分かる。

 他のが何十だとかなのにMPだけ1000超えだからな。


「というかやっぱり魔法はある訳だ」


 HPだけでなくMPもとなるともう異世界と考えてもいいだろう。ここで生きる覚悟をしなければいけない。


「ん?まだ下になんかあるな…」


 気付きウインドウをさらにスクロールする。


 獲得スキル

 ―――――

[固有]スキル獲得確率上昇Lv.1

 短剣 Lv:3

 言語 Lv:5(Max)

 社交 Lv:2

 算術 Lv:5(Max)

 料理 Lv:2

 詐術 Lv:1

 錬金術 Lv:4

 読解 Lv:3

 散策 Lv:1(new)

 鑑定 Lv:1(new)

 ―――――

 称号

 ―――――

 異世界人

 女嫌い

 勇者or魔王

 ―――――


 もうこれで異世界っていうかゲームの世界にトリップしたってことで良いと思った。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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