与謝野晶子で先生を誘惑しようとしたら、石川啄木で嘆かれてしまった単元
柔肌の 熱き血潮に触れもみで 悲しからずや道を説く君
「先生、私は五教科の成績とか安倍政権の行方とか世界の平和についてとかはどうでもいいの。先生、そんなことに夢中になっていないで、私を見て。私だけを見て。先生、私、先生のことを想うだけで、こんなに火照ってしまうの。先生、愛してるわ。だからお願い。私を愛して」
はたらけど
はたらけど猶わが生活楽にならざり
ぢっと手を見る
「私はこんなにもお嬢様に賢くなっていただきたいと頑張っているつもりなのに、さっぱり成果が出ない。お嬢様が学ぼうとせず、ひたすら色ぼけに走るのは、私の教え方が悪いからだろう。このままでは、ご主人様や奥様に顔向けできない。私には才能がないのだろうか。それともこの世の中が悪いのだろうか。
こんな暮らしでは、私はお嬢様どころか、ごくごく普通の娘さんすらもお嫁さんに迎えることができない」
俺は自分の掌を見つめながら、そう嘆息する。
「先生、色ぼけしてごめんなさい」
「いえいえ、わかっていただければいいのです」
「先生、どんな子が好きなの」
「私は賢い子が好きですよ」
「そっか、私、頑張るね」
といういつものお昼前の出来事。