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ボクたちのてのひら【旧版】  作者: 雨露りんご
第28話 責任
159/196

28‐5

 魔法都市マルメリア。


 そこでは入国のための検査も特殊で、衛兵が1人1人に順番に杖をかざしていくのだ。

 すると光の輪が対象の足元から頭まで上っていき、頭上で光が消えると検査は終わり。


「あれは何を?」


 ローヴがこっそりとオルディナに尋ねる。


「その人が不審物を所有していないか、マナの流れを用いてチェックしているんです」

「へえ……でも不審物かどうかなんてどうやって判断するの?」

「あの杖は事前に通しても問題ない物を情報登録してあって、登録外の物が検出されると輪が赤く光る仕組みなんです」


 魔法都市ならではの独特の仕組みにローヴが感心していると、全員の検査が完了した。


「ご協力感謝します。ようこそ、魔法都市マルメリアへ」


 衛兵がそう言うと、壁の一部がふっと消え、都市へ入るための道が開ける。


「すごい! これも魔法?」

「はい、都市を守るバリアです」


 驚くローヴに説明すると、オルディナは衛兵に歩み寄った。


「すみません。ウーテン様にお会いしたいのですが、どちらにいらっしゃいますか?」

「え? ウーテン様に?」


 唐突な質問に驚く衛兵だったが、彼女の顔を見て何事かを思い出したようだ。


「おや、よく見ると君は……」


 オルディナがぺこりとお辞儀するのを見て、一行は不思議そうに顔を見合わせた。

 衛兵は納得した様子でうなずくと、彼女の問いに答える。


「ウーテン様ならいつも通り魔術ラボにいらっしゃいます。場所は分かりますか?」

「はい、大丈夫です。ありがとうございます」


 オルディナは礼を言うと、一行の元へと戻ってきた。


「ウーテンというのは?」

「ここで一番お偉い方です。魔具のことならその方に聞くのが一番早いと思います」


 ノーウィンの問いに答えると、オルディナはその人物がいる場所までの案内を買って出る。


 さっそく都市内部へと入ると、背後のバリアが閉じ、再び壁となった。


 石で固められた地面に石造りの家々。一見すると普通の町と変わりない。

 あちこちに張り巡らされているパイプをのぞいて。


「あのパイプは都市全体にマナを巡らせるためのものですよ」


 首を傾げてパイプを見つめるローヴに、キュレオが説明した。


「都市には魔術を利用するための装置があちこちに配置されていて――あ、魔術って分かりますか?」

「うん。人工的に魔法を使う方法だよね」


 ローヴの回答にキュレオがうなずく。


「それらの装置を作動させるためにあるんです。屋内でも魔術が使えるよう、家の中にもつながってるんですよ」

「へー! 他にも魔法都市らしいものってありますか?」

「それなら魔法学校があるな」


 魔法に携わる者として感激するローヴにノーウィンが笑いかけた。


「魔法学校!」

「けど今回は行く暇ねえかもなあ。目的はそっちじゃねえし」


 テンションが上がっていくローヴにアクティーがそう言うと、彼女は残念そうにため息をついた。


「さて」


 一行のやり取りを楽しそうに見ていたキュレオが声を上げる。


「僕はそろそろ行きますね」

「そうか、寂しくなるな」


 ノーウィンが手を差し出すと、出発時と同じように、彼は握手をした。

 一行の間に普通に溶け込んでいたので、皆が寂しそうな表情を浮かべる。


 続いてキュレオはラウダの側へと歩み寄った。


「ラウダさん、さっきの話ですけど」


 ラウダから提案した旅への誘いの件に対して、彼は申し訳なさそうにうつむいた。


「僕にはやるべきことがあって、そして大切な人も待っている――だから、ごめんなさい。一緒には行けません」


 ラウダは小さく笑むと、首を横に振った。


「いいよ、気にしないで」


 そこで不意にラウダが小さくあっと声を上げる。


「そうだ、1つお願いがあるんだけど」

「お願い、ですか?」


 首を傾げるキュレオに、ラウダは頬をかいた。


「その、敬語は止めてほしいな」


 意外な“お願い”に、彼は目をぱちくりさせるが、すぐにふふっと笑う。


「分かったよ、ラウダ」

「ありがとう」


 短いやり取りを終えると、キュレオは今度こそ立ち去るため、一行の前に立った。


「それでは皆さん、良い旅になることを祈っています」

「また会いましょうね」


 オルディナが手を振ると、彼も手を振り返す。


「ええ、必ず」


 そうして彼はその場を後にした。


 その背が見えなくなるまで、ラウダはじっとそちらを見つめていた。

第28話読んでいただきありがとうございます!

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