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ボクたちのてのひら【旧版】  作者: 雨露りんご
第23話 勇者の消失
132/196

23‐6

「その台に右手を乗せるの。簡単でしょう?」


 ティルアに導かれるまま、ラウダは祭壇へと上がっていた。


 祭壇の階下から彼女が指差したのは白石の台。四角いくぼみの周りにはいくつもの線が彫られており、いずれも台の下まで伸びていた。


 だがラウダはそんなことを考えることもせず、言われたとおりにその台へ右手を乗せた。


 ピッ


「確認中」


 突如、どこからか女性の声が響く。


 ピッピピッ


「タイプエス、認証しました。アンチモードで起動します」


 白石の台はブオンと音を立てると、手が置かれた場所から白い輝きを放ち始めた。


「オペレーションチェック開始。10、20、30……」


 台から発される音が徐々に大きくなっていく。何かの駆動音のようだ。

 その間にも無機質な声は淡々と続ける。


「100……システム、オールグリーン」


 その言葉と同時に、敵の集団が皆動きを止めた。

 激戦で疲弊した一行が戸惑っていると、今度は地面が揺れ始める。


「な、なんだい!?」


 何が起きているのかさっぱり分からず、オルディナを支えるガレシアが声を上げた。


「ラウダそこから離れて! ラウダ!」


 徐々に大きさを増していく地震と疲れで皆がその場から動けずにいる間も、ローヴは炎の壁の前から必死に叫び続ける。


「クリスタルジェネレーター起動します」


 天井から複数の水晶体がゆっくりと降りてきた。

 それはしばらくラウダの周りを浮遊していたが、一瞬まばゆい光を発すると、祭壇ごと彼を包み込んだ。


 これから何が起こるか分からない。にもかかわらず、ラウダの心はこれ以上ないくらいに高ぶっていた。

 そっと目を閉じ、その時が来るのを静かに待つ。


「ステータスオールクリア。準備完了しました」

「何を始める気だ!?」


 ノーウィンが困惑した声を上げるも、無機質な声は答えない。

 唯一理解しているであろうティルアは、ただ一言こう言った。


「始めて」


 台から発される音がより強力なものに変わる。


 不意にそれぞれの証が強力な光を放ち始めた。だが、光はすぐさま暗色に変わる。

 それはラウダも同じだった。煌々と輝いていた証の光が鈍色に変色する。


 全員の耳にビシビシと何かにひびが入るような音が聞こえた。


 パリン


 まるでガラスが砕かれたような音が響き、まばゆい光が目をくらませる。


「ログを出力します」


 例の声が聞こえて恐る恐る目を開けると、光と同時に人形たちの姿も炎の壁も消え失せていた。

 音と振動も徐々に静まっていく。


「……ラウダ?」


 ローヴが見つめる先、祭壇の上ではラウダが倒れていた。

 その光景を見てローヴの顔からさっと血の気が引く。


「死んでないわ。残念だけど」


 祭壇の下でつまらなさそうに言ってのけるティルア。

 そちらを見やると、彼女はいつの間にか青い板のようなものを手にしていた。


「まあ、これから苦しむことになるだろうし、それを見るのも面白いかもね」

「何を言って……」

「全工程が終了しました。シャットダウンします」


 ローヴが問おうとしたとき、再度無機質な声が響いた。


「さてと。本当はもっと遊びたかったけど、ダメって言われてるから帰るね」


 ティルアの背後の空間が歪み、暗い穴が開いた。


「待って!」


 彼女にはまだ聞きたいことがたくさんある。

 だがローヴの制止に応じることはなく、少女はバイバイと手を振ると歪みの中へと消えていった。


 そして、ボロボロになった一行と静寂が残される。


 目の前で何が起こったのか。彼女はラウダを殺すためにここへ来たわけではなかったのか。

 未だに状況が把握できない一行だったが、それを考えるよりも先にまずは落ち着ける場所が必要だった。


 何とか一所に集まった皆にオルディナが治療を施していると、アクティーがあることを提案した。


「ここから南にカノッサって町がある。そこへ行こう」


 カノッサ。その言葉を聞いたガレシアの顔色がさっと変わった。


「そこは……アタシは……」

「お前にも来てもらう。色々考える必要があるからな」

「…………」


 アクティーのまっすぐな視線を受けて、彼女は諦めたように小さくうなずいた。


 いつもならそのやり取りの意味を追究しそうなローヴだが、今はただただ横たわっているラウダを暗い表情で見つめるばかりだった。

第23話読んでいただきありがとうございます!


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