2.2 概念魔術(魔界魔術)
この魔術の成り立ちは、実に魔界らしいと言える。
太古の時代、未だ龍が存在した時代。
妖精族以外の連合に攻め込まれた妖精族が土地の代わりにと自らの知る魔術の知識を捧げた。
現在一般に用いられる、属性を持ったほとんどの魔術がこの妖精族に渡されたものである。(火妖精、水妖精などの魔術が割合として多い、木人は強く抵抗したためほとんどが知られていない)。
だが、狡猾なことにこの時、交換条件として他の種族から少しずつ各種族の魔術を手に入れた。
これはおそらく、自種族が無くなったときの魔術知識の喪失を盾に取ったと思われる。また、各種族毎にあなただけにと交渉したとも、負担を各種族にすることで内部での諍いや、納得を得たのだとも言われる。また、妖精族には美男美女が多い事にも留意されたし。
よって、各国の軍事力が拡大されたが、その実もっとも大きくなったのは妖精族である。
これは、鬼族などが典型的なように、魔族は自種族以外の技能や魔術を下にみるところがたぶんにあり、逆に妖精族は身体が虚弱なところもあり、どんなものでも貪欲に取り込むという種族的特徴がある。この二つの要素により、格差が大きくなったと考えられる。
余談だが、妖精族はこの後、同じく研究家気質な所があった幽鬼族を始め、多くの種族と友好を持つことになるが、直接的な力を重んじる鬼族とは仲が悪い。
そんな概念魔術ではあるが、詠唱魔術に比べ術への没入には術の名や香り、果てはただのイメージですら魔術を放つことができる。ゆえに、接近戦など対応の早さが求められる戦いでは概念魔術の方が勝る。
が、概念という名前通り、概念が無い場では十分に効果を発揮できない、そもそも発動しない、魔力の消費が大きいなどという欠点を持つ(逆を言えば、概念さえ間近にあれば魔力消費を少なく、強力な魔術を行使できる)。
簡単に言えば、煙が立たないところでは火は起きぬ、ということである。
例を挙げるなら、水がいっさい無い砂漠などで水の魔術を行使しようとすると、普段の十倍以上の消費魔力で、普段の十分の一以下の威力の魔術となる。
これは、空の水気を利用できる水属性だから行使できるだけで、魔界では雷属性はかなりの悪天候の時以外ほとんど利用することができない(その代わり、条件さえ整えば雷の魔術は何よりも恐ろしい)、ニッチな属性となっている。
そのため、魔界でもっとも利用されるのはほとんどの状況で行使可能な風の魔術である(余談だが、次点は携帯性などにより、水属性である)。
光(闇)属性こそ、あらゆる場において使えるが、そもそも概念自体が分かりづらいために、難度が高く人気が無い。
余談だが、一部に斬撃や刺突などの概念を利用する、戦闘術があるが、これについては別の項において解説する。