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アルテミスの祈り・抜粋  作者: 葵しん
序章、千五百光年の彼方から
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     1

 ()()()こそは、国の()()()()

 千年の時を超え、アルテミスの思いが、日の本の生い立ちを解き明かす!


 長編小説の序章と中間部分第五章を御紹介致します。


   序章、 千五百光年の彼方から



     一


 果てしない暗黒の広がりをひたすら進むポセイドン号、母星ミノスを旅立ってから気の遠くなるような年月が過ぎている。次第に明るさを失う太陽に別れを告げて、三百年前に始まった大脱出であった。数十億の人々を全て脱出させることは不可能だが、選ばれた精鋭に未来を託すしか生き残る道はない。

 生き残れるのはほんの僅かな人々だ。それゆえにパニックにならないように、(ひそ)かに進めた計画だった。あくまでも未来の事のみ考えて、コンピューターで人選し、数年に一隻、三百人が飛び立っていく。ミノス人十億年の歴史を簡単に絶やす訳にはいかない。

 それは今でも続いている。

 ポセイドン号はその先陣を切った船である。光速の六割の速度で走り続けるポセイドン号、限界速度である。

 現在の地球上でおとめ座銀河団と呼ばれている星雲の一つ、M八七銀河の中心にある星がミノス人のいう太陽ゼダである。わが太陽系の太陽の数十倍の質量をもつ巨大な太陽ゼダは、周りに無数の惑星を抱え込んでいた。巨大過ぎるがゆえに、燃え尽きる速度も速い。

 われわれの住む地球や火星、木星など太陽の周りを回る星のことを惑星という。なぜ惑星は太陽の周りを回るかといえば、それは太陽の重力によって引き寄せられているからである。回転することによって太陽から離れようとする遠心力と、太陽に近づこうとする引力とが釣り合いを保って一定の距離を保ったまま周回運動をしているのである。その太陽との位置関係は太陽が誕生した時から数十億年という長い年月を経て今日に至っている。

 …本書でいう年数や距離は、あくまでも地球上の単位に置き換えて記載している。

 光速とは秒速三十万キロメートル、世の中で一番速い速度で、一秒間に地球を七周半する速度に相当する。何ものもこの速度を超えることは出来ない。光速を超えることは、時間の壁を超えることと同じである。…

 星の死とは太陽(恒星)の死、すなわち恒星が燃え尽きてしまうことを意味する。惑星の運命は恒星に左右される。中には恒星の死から逃れて迷子星になる事も稀にあるが、殆んどの惑星が恒星の死に巻き込まれる。迷子星とは恒星が爆発したり巨大化したりして死を迎える際に、吹き飛ばされてその恒星の引力圏を外れてしまったケースである。

 恒星の寿命はその大きさ(重さ、質量)に反比例するという。というよりも、小さいほど爆発を繰り返して進化していった結果であり、より安定した形なのである。星の死の形は恒星の大きさから四つのグループに分けられる。

 わが太陽系の太陽は最も軽い第一グループに属する。軽いほど寿命が永い。

 第二グループ以上は全て超新星爆発という星雲系(たとえば太陽系など)の破壊を伴う。質量の大きさによって最後に残る中心の形が異なる。

 いずれのタイプも残った中心には、重力で押し潰された塊が出来る。そしてその周りを破壊された塵が渦を作って回り始める。やがてはその塵の中から星の卵が出来て、新たな星雲が生まれたりする。そのことからこの爆発は星の死であり、同時に誕生であることで、超新星爆発と呼ばれた。

 第一グループだけはこの爆発が無く、燃え尽きて赤く膨れて冷えていく(せき)(しょく)(わい)(せい)が残るだけである。

 迷子星であったミノス星は、数千年前に恒星ゼダの引力圏に拾われた惑星である。

 そういう意味ではミノス人は極めて運のいい人類であったと言わねばならない。かつて存在した星雲系で恒星の死から解放され、迷子星となって宇宙を彷徨いながらも、人類を生存し続けることが出来たのである。

 再び同じことが起ころうとしている、そして今回は逃れられないことが分かっている。

 ゼダはあまりにも巨大なのである。

 母星ミノスの恒星ゼダは、質量の大きさから第三グループに属し、やがては超新星爆発を起こすことが分かっている。ゼダの質量、組成、温度変化など、あらゆるデータを基にシミュレーションした結果、残骸が光速を維持して飛んで行く最大到達距離は半径五百光年と計算された。その後は急速に速度を遅くして、ゆっくり広がってゆく。夜空に輝く美しいリング状の星雲は、こうした経過を経て出来あがる。

 しかしそれが現実に自分達のすぐそばで起きたとしたら、考えるだに恐ろしい。

 このリングに触れたが最後、全てが原子や分子のレベルに分解され、宇宙の塵となってしまうことであろう。

 爆発前の(せき)(しょく)(わい)(せい)段階は数百年かけてゆっくり膨張すると考えられていて、その後の爆発で五百光年の距離まで達するには、膨張開始時点から八百年は掛かると計算された。

 ここに計算とは異なる現象が(しゅっ)(たい)した。

 まだ数百年は太陽ゼダが膨張を始めないだろうと計算されていたのである。

 しかし、ついにゼダはポセイドン号の南の地平線上に赤い点となって現れた。事態は今まさに変わらんとしている。

 恒星ゼダが、推定よりも始動が早く、日を追うごとに赤く膨れる。今や肉眼でも識別出来るほどになってきた。爆発の時が迫っている。

 ポセイドン号は既に二百光年の距離まで進んでいる、あと三百光年だ、急げ、進め! 


 ポセイドン号のほぼ中央に建つ巨大なマンション、ここが全住民の居住地である。横長で三階建て、重力コントロールのために地下はなく、五百世帯、二千五百人分の部屋がある。一、二階までが居住区で、三階は天井がガラス張りで、五メートル四方ほどの広さの観測ルームが並ぶ。転落防止のため、一階以外は窓が全て開かない作りになっている。

 とかく宇宙船内は退屈をする。それを防ぐためにこのマンションを中心にして、あちこちに住民のための設備が施されている。

 この宇宙船上で生まれ、人生の全てを天体の観測に費やしているスラ一世が、

「マザー、どうなっているのだ、予定より早くはないか?」

 と、誰も居ない空間に話しかけた。ポーンと、心地の良い音がする。

「御報告致します、恒星ゼダは十年後に超新星爆発を引き起こします」

 ポセイドン号のコンピューター、マザーが無感情に応じた。

「何だと、十年後だって、計算と違うではないか?」

 とんでもないことを無感情に言われ、一瞬茫然と考え込むスラ。

 ポセイドン号の前後に付いている宇宙望遠鏡が、全宇宙の様子を捉えて映像を蓄積していく。住民は誰でも自由にこの観測データを見ることが出来る。遠い過去の姿からリアルタイムの姿まで、果てしなく蓄積されていくのである。その膨大なデータを処理し、蓄積する技術もこのポセイドン号のコンピューター、マザーは備えていた。

「爆発すれば、その波動は光の速さでこの船を追いかけてくるのだぞ。ポセイドン号が圏外の五百光年先まで辿り着くには、あと五百年かかる、爆風は五百年後にわれらに追いつく計算だったな、すれすれではないか。いったいどうして早くなったのだ?」

「はい、太陽の精密な計測によりますと、予想される爆発の規模は、第四グループ、ハイパーノバのクラスであると判明致しました」

「ハ、ハイパーノバだって、第三グループではなかったのか? 太陽の質量の計算ミスなのか? まさかそんな初歩的なミスを犯すとは思えんが・・」

「その通りで御座います、理論上は計算通りで御座いました」

「では、どうしてだ?」と、スラは苛々して答えをせっつく。

「ダークマターの濃度がわが星雲系のバランスを変えていたので御座います。銀河どうしが重なりつつある、隣りの銀河(おとめ座銀河)の中心に、パルサーが存在します。そのパルサーが発するジェットの影響で、わが銀河のダークマターがエネルギーを得て星々の重力が強く働き、見掛けよりはるかに重い星雲系となっていたようで御座います」

 パルサーとは超新星爆発後に中心に残った星の残骸である中性子星のことで、振り子のように揺れながら光を放つ。放っている光はγ(ガンマー)線のジェットである。ちなみにパルサーは周期が極めて規則的なために宇宙の時計とも呼ばれている。

「ダ、ダークマターか」と、スラは頭を抱えた。

「遥か遠くのパルサーの影響がここまで及ぶだなんて、わが星域のダークマターが濃密になっているということか。濃くなればその領域では物質を遠ざけるから、わが太陽も小さく圧縮される力が働く、本当はもっと重いクラスの星だったということか。ああ、何ということだ、人類はこれで終わってしまうのか?」

「まだ生存の可能性は御座います。爆発後に発生する波動と中心のジェットとは九十度の角度がありますが、その中間の四十五度の方向に船は進む予定になっております。絶えず微調整をしながら進めば、数隻ぐらいは生き残れるものと思われます」

「簡単に言ってくれるな、ははは。既に数百隻という宇宙船が飛び立っているというのに、そのうち生き残れるのが数隻とは・・数十億の同胞のうち、生き残れるのが僅か千人足らずか、とほほ・・・」

 爆発後の残骸が飛び散る波動と中心から噴き出すγ線のジェットは、共に破壊の津波である。これに触れれば何ものであろうと分子レベルに分解される。

 その近隣においても、磁気嵐などに吹き荒される可能性が高い。

 ダークマターとは現在の科学でも存在することは理論上分かっているが、未だに確認されていない物質である。宇宙はおろか、この地球上、われわれの周りや体内にさえダークマターが存在しているといわれる。

 最近の研究では物の質量を形作る未知の微粒子ヒッグス粒子の事ではないかとも考えられている。電子やニュートリノよりも発見しにくい特異な物質である。

 余談だが最新のダークマター理論を簡潔に紹介しよう。

 あらゆる物は超対称性理論に拘束される。物とは空気でも真空の空間でも、人間や石ころ、一個の分子や惑星であってもよい。物がAという位置からBに移動した時、確実に質量の移動を伴う。この自然界ではその変化の均衡を保つべく逆の力が働く。すなわちAを基準点として、Bと点対称の位置Cに、移動した質量と同じだけの質量が発生する。

 こうすることで三次元空間は対称形となり安定する。この位置Cに発生した質量こそが超対称性粒子ダークマター(ヒッグス粒子)であるという。あるいは粒子ではなく、密度の違いをもたらす何らかの空間エネルギーなのかもしれない。

 犬が尻尾を上にあげれば元の位置から上に質量の移動が起きるから、反対の下側に質量が発生して安定するという訳である。

 仮に、物が移動したにも拘らず対称の位置にダークマターが発生せずに()()()()した場合、その三次元空間にはどのような変化が起きるのだろうか? 次元に歪みが出来て穴が空き、別の次元が発生するのかもしれない。

 無重力空間の中で星が安定に存在出来るのは、ダークマターが何らかの働きをしているからであると言われている。

 ニュートンの万有引力の法則が正しい事は、今や誰一人として疑わない。

 しかし、重力という力がどうやって発生するのか、その答えを地球上の人類はいまだに解明出来ていない。超対称性理論こそが鍵となることは確実らしい。


 ポセイドン号の住民は五百人余に増えていた。船は長さ十キロメートル、横幅と高さが共に六キロメートルにも及ぶ卵型の巨大な船である。ダークマターエナジーを利用して船の推進力と重力を得ている。これによって惑星ミノス上と同じ環境を実現しているのである。巨大な船であるために、船の進行方向である北側から南の外れを見ると地平線が見える。南の地平線上には赤く膨らむ太陽ゼダの姿が、いつも映っている。

 ポセイドン号の居住域である上半分は、天井は高い所で三キロメートル、全面特殊なガラス張りである。ここでは昼と夜を区別するために照明を交互に時間をおいて点けているが、天井の船壁は暗いままなので星空はいつでも見える。地下も三キロメートルあり、土で覆われていて、この船のエンジン部や倉庫群などの構造物で占められている。

 全てはマザーコンピューターによって管理運営保守され、人間は時々指令を与えるだけである。もちろんマザーには住民を守るという任務が優先され、人間が間違った事を指令しても、正しい答えを選択して行動する仕組みになっている。

 大気や地下の土は完全に循環され、リサイクルされている。すなわち大気や土から食べ物や水、その他必要なものが作られる仕組みになっている。構造物や料理などは自動的に作れるが、生きた細胞は、未だ作れない。

 太陽ゼダは今や南の果てで人の頭ぐらいの大きさに成長した。数年前は影も形もなかったのだ。突然現れた母なる太陽を、初めは皆も神を見る如く手を組んで見つめていた。

 日を追うごとに大きくなる太陽は、百年後にはポセイドン号の南半球の四半分まで広がっていた。数千倍にも膨れ上がり、既に母星ミノスは飲み込まれている事だろう。考えたくもない恐ろしい出来事だ。数十億の人命と、数限りのない動植物の生命、山や川、海までもが瞬時に失われたのである。

 爆発はいつ起きても不思議でない間近に迫っている。この頃からポセイドン号の住民は爆発に備え、建物の内外を問わず特殊なゴーグルを付けることになった。目を保護するためである。爆発の光をまともに見てしまえば一瞬で失明することであろう。

 天体観測もすべてマザーコンピューターが行ない、住民は望遠鏡を覗くことを禁止された。もちろん宇宙船全体にも通常よりも強力な磁場によるスクリーンを張り巡らせている。

 住民達は毎日路上で(ひざまず)き南の空に向かって、手を組んで哀願する。そしてこの歴史的な出来事をしっかり見ようと集まってくる。犬を抱きしめてしくしく泣く子供、酔っぱらって木の根に寄り掛かっている赤い顔の男。皆一様に、目は南の空を覆う()()()を見つめている。決められた仕事などする者はいない。

 このことは住民の教育による弊害でもあった。睡眠学習によって、あらゆる知識を身に付けていく住民は、今ある宇宙の姿の異常さに、すぐに気が付いた。パニックをおこし、とてものことに平静を保っていられなくなる者が続出した。別の映像を見せて誤魔化すことも出来たが、却って危険だし、住民の反対にあい果たせなかった。


 運命の時は唐突にやって来た。空は奇妙な静けさ。赤くぼんやり巨大なクラゲのように膨らんだ太陽が、一瞬縮んだかと思えた途端に、凄まじい勢いで大爆発を起こした。

 瞬間に宇宙全体が真っ白となり、その明るさで何一つ見えなくなった。船の中では周り中から絶叫にも似た悲鳴が聞こえる。

 数時間に及んで無の世界が続いたあと、南の空の赤色矮星が消え、青白い光の玉が浮かび上がった。巨大な青い光の玉に変わったのである。

 青い玉は数百年に亘って大きくなり、広がり続けた。住民にとって迫りくるこの青い光の玉ほど怖いことはない。ポセイドン号に覆い被さるように広がってくるのである。

 つまりポセイドン号の進む方向と青い光の進む方向が同じに感じる。同じであれば万事休すである、船はいずれ飲み込まれてしまう。

 二百五十年ほど経ったある時、リングの形状が見えてきて、当時の住民達は少なからずほっとした。同時に南の天空に勢いよく噴き出すジェットも見えてきた。

 ポセイドン号はとうとう太陽ゼダから爆風の最大到達距離五百光年の彼方に達した。

 しかし、当初の計算とは違い、光速圏での青い光の拡散はまだ終了していないため、危険度はさらに大きくなっている。

 青白い光の輪の道程は雲海のような光景と思っていたが違っていた。星達の残骸を吸収しながら、天体ほどの大きさで高密度の分子団があちこちで泡粒のように固まり沸騰し、激しく運動してぶつかり合っている。ぶつかるたびに目が潰れそうな煌めきを放っている。

 リングは全宇宙に自分の存在を示すが如く、その通り過ぎた空間のあらゆる音を消し去り、飲み込みながら進んでくる。

 天空の真上に見えていた大きな星が音もなく爆発することもなく、(しょく)のように南側からゆっくり、青い光の中に溶けて消えていくのが見えた。あまりにも幻想的な美しさではあるが、あたかも星全体が端から白アリの大群に食い荒らされて無くなっていくような光景なのである。

 久しく忘れていた恐怖が再び人々を襲う。毎日毎日人々の悲鳴やすすり泣きが、どこかで聞こえてくる。全ての終わりとはこの時のことなのか、人々はただ懸命に輪を見つめ、その時を受け入れようとしている。グロテスクに下弦の月と化した星を見つめて、抱き合っている若い男女。怖くて目を背けてしまう子を、叱りつける母親もいる。

 天井のガラスの船壁が波打って、あちこちからピシピシとガラスの軋みが聞こえてくるようだった。しかし音は飲み込まれてしまう。

 何かゴミのような埃があちこちから落ちてくる、船中にほこりが舞って薄暗くなってきた。普段は風など吹かない宇宙船の中でつむじが舞う、雷光が轟く。池の魚が飛び跳ね、水が激しく波打っている。やがて

 キーン・・・

 という耳障りな音がしてきた。段々音が大きくなり、人々は耳が痛くて(たま)らず、手で塞ぎながら目を瞑っている。

 γ線バーストの青白い輪が今まさに通り過ぎようとしている。

 ここに至って皆は何ものにも動じず、冷静に時の過ぎるのを待った。キーンという音しか聞こえない。船がブルブル震えている。

 音と船の揺れが最高潮になった時、急に潮が引くように、裏返ったような音に変わった。


 終わったのか、全てが・・・暗く虚しい静けさが続く。


 ポセイドン号は辛くも生き延びていた。生き残った住民にとっては、辛く苦しい長い時代が去った。ミノスを脱出した時期が早かったから助かったのである。

 青白い光のリングはポセイドン号の僅か上方を掠めて通過した。あとに続く船はあらかた青い破壊の津波に飲み込まれてしまった。いったい何隻残っていることか。

 しかし危機は去った訳ではない、第四グループということは、この宇宙の中で、最も危険な出来事が待ち受けている。選んだ軌道に誤りのない事を願うしかない。


 果てしなき時の流れ・・・


 惑星ミノスを飛び立ってから、千年の時が経った。ポセイドン号の南半球全域に、今でも母なる太陽ゼダの青い光が広がり、綺麗な猫の目のような星雲に変わっている。中心に白く輝く小さな塊があり、それを囲むように青い靄のようなリングが広がる。その輪に直角に中心から上下にジェットが噴き出している。皮肉なほどに美しい景色が広がっている。

 しかし、その姿が急激に変わってきた、縮んでいるのだ。周りの星や星雲を引き寄せながら、猛烈な速度で縮んでいる。

 白い塊が消え失せ、暗く何も見えない中心となり、その周りを激しい重力で押し潰された星々の残骸がリング状に回り始めた。中心から以前よりも激しくγ線のジェットが噴き出している。ポセイドン号から見える南半球は、今や超巨大なアリ地獄と化している。

 ブラックホールの誕生である。これに捕まってしまえば助かる術はない。

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